読みもの
2021.01.25
林田直樹のミニ音楽雑記帳 No.37

メキシコ音楽の旋律美を発見! ヴァイオリニスト黒沼ユリ子「わが心のメキシコ」

林田直樹
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...

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中南米諸国のうちで最も先住民比率の高い国のひとつであるメキシコは、偉大な伝統をもつのみならず、美しい旋律の宝庫でもある。それは、ジャンルの枠を超えて、大きく「ラテン・ミュージック」の流れの中でとらえるべきものかもしれない。

その魅力を凝縮した1枚のCDがリリースされた。

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1980年にメキシコ市に小さな音楽院「アカデミア・ユリコ・クロヌマ」を開設し、メキシコの音楽界の発展に力を尽くし、日本とメキシコの文化の懸け橋として長年活躍してきたヴァイオリニスト黒沼ユリ子が、メキシコ音楽への思いを託して、選りすぐりの小品を集めたCD「わが心のメキシコ」である。

黒沼ユリ子
東京生まれ。8歳よりヴァイオリンを始め鷲見三郎門下に入る。1951年全日本学生音楽コンクール小学生の部で第1位及び文部大臣賞を受賞。その後1956年桐朋学園高校音楽部に入学。同年、日本音楽コンクール第1位及び特賞受賞。1957年W. ロイブナー指揮NHK交響楽団とデビュー。1958年18歳でチェコ政府招待留学生としてプラハ音楽芸術アカデミーへ入学。F.ダニエル教授からの薫陶を受けながらH.シェリングにも師事。在学中にチェコ現代音楽演奏コンクールで第1位受賞。1962年同アカデミーを栄誉賞つき首席で卒業。同年、国際音楽祭「プラハの春」でプラハ交響楽団と共演してヨーロッパ・デビュー。以来、国際的に独奏者として著名なオーケストラや指揮者との共演が活発になり、特に日本の代表的な作曲家たち(林光、三善晃、広瀬量平、間宮芳生、武満徹ほか)による作品の初演も含め、海外での紹介にも力を入れて高く評価される。

これが本当に素晴らしかった!

管弦楽曲「マヤの夜」で近年注目を浴びているシルヴェストレ・レヴエルタス(1899-1940)の傑作「3つの小品」。「エストレリータ(星)」のみ有名だが、ほかにも美しい曲を数限りなく書いているマヌエル・ポンセの詩情豊かな「青春」「ガヴォット」。メキシコの20世紀ヴァイオリン音楽の代表ともいえるマヌエル・エンリッケス(1926-94)の「組曲」。20世紀に活躍しながらも、ロマン派的な情感をたたえているアルフォンソ・デ・エリアス(1902-84)の「悲歌」、アルフレド・カラスコ(1875-1045)の「子守歌」、リカルド・カストロ(1865-1907)の「ロマンス」「メロディ」、ホセ・サブレ・マロキン(1909-95)の「郷愁」「ゆりかごの歌」。

未知の作曲家だからといって、敬遠するのはあまりにももったいない。

いずれも、曲が始まったとたんに「ああ、なんていいメロディだろう」と、誰しもが魅了されてしまうだろう。これらの曲に、日本語の歌詞をつけて歌ったら、昔懐かしいノスタルジックな歌として、意外としっくりくるのではないか。それくらい私たちにも親しみやすい曲ばかりなのだ。

今回のCDに、黒沼さんは「メキシコ人と音楽」と題した長大なエッセイを書かれている。紀元前3000年頃の古代の楽器、巨大なアステカ帝国の様子、スペイン人の侵略、ヨーロッパ文化とのダイナミックな交流、近現代の音楽事情など、幅広い文化史・政治史の観点も盛りこまれている(エッセイはこちらで閲覧可能)。

これをきっかけに、一人でも多くの人がメキシコ音楽に関心をもつ人が増え、コンサートのレパートリーで取り上げる人が増えていくことを、願わずにはいられない。

CD情報
黒沼ユリ子「わが心のメキシコ」

曲目:
シルヴェストレ・レヴエルタス: 3つの小品
マヌエル・ポンセ:「青春」「ガヴォット」
マヌエル・エンリケス: 組曲
アルフォンソ・デ・エリアス: 「悲歌」
アルフレド・カラスコ: 「子守りうた」
リカルド・カストロ: 「ロマンス」「メロディー」
ホセ・サブレ・マロキン: 「郷愁」「ゆりかごの歌」

演奏
黒沼ユリ子(ヴァイオリン)
ヨセフ・オレホフスキ(ピアノ)

録音
2003年9月、メキシコシティ

視聴・購入はこちらから(特設サイトからの購入者限定で黒沼ユリ子のサイン入り)

林田直樹
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...

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