読みもの
2020.03.28
林田直樹のミニ音楽雑記帳 No.2

クラシックの使用も絶妙な『翔んで埼玉』Amazon Primeで配信開始

林田直樹
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...

『翔んで埼玉』©️2019映画「翔んで埼玉」製作委員会

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43回日本アカデミー賞では最多12部門で優秀賞を受賞した2019年の大ヒット映画『翔んで埼玉』。この3月からAmazon Prime Video会員向けの独占配信が始まっている。

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『テルマエ・ロマエ』や『のだめカンタービレ』などで、クラシック音楽の使い方に定評のある武内英樹監督作品だけあって、これはサウンドの面白さという点でも、興味深い。

たとえば、埼玉県人かどうかを試すために、踏み絵として草加せんべいを踏ませようとするシーンでは、バックにグレゴリオ聖歌風の音楽が流れる芸の細かさがある。

魔夜峰央の原作漫画を元にした、この壮大で真剣な茶番劇には、チャイコフスキー、ヘンデル、バッハ、マスカーニなど、隠し味的なBGMから、ここぞという泣かせどころに至るまで、実に効果的にクラシックが使われている。

そして何よりも——これは、単に埼玉をディスるだけのコメディではない。日本社会の深層に巣食う差別意識や格差、そして東京一極主義を、さわやかに笑いのめすという点で、真に革命的な作品なのだ。東京への通行手形撤廃をめぐって埼玉と千葉が争い、ついには数万人の軍勢どうしが流山で決戦するシーンは、日本映画史に残る名場面と言えるだろう。

私も長いあいだ、埼玉県出身であることを、心のどこかで恥じて生きてきたような気がするが、『翔んで埼玉』を観て、もっと誇りを持とうと思いなおした。いっそ「クラシック音楽埼玉県人会」でも作ろうかと思うほどである。

国を挙げて家に引きこもることが推奨されている昨今、ネットで視聴して元気を取り戻すにはぴったりの作品である。

2019年劇場公開時のポスター(筆者撮影)。
林田直樹
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...

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