読みもの
2020.05.25
林田直樹のミニ音楽雑記帳 No.13

規格外のチェリスト、ジョヴァンニ・ソッリマの壮大なスケールの新作

林田直樹
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...

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2019年に接したコンサートのなかで、もっとも強烈な印象を残したもののひとつが、8月に聴いたジョヴァンニ・ソッリマだった。

藤岡幸夫指揮東京シティ・フィルをバックに、奔放な演奏を聴かせたドヴォルザークの「チェロ協奏曲」。100人のチェリストを集めて、短期間のリハーサルののちに見事なパフォーマンスへと昇華させた「100チェロ」プロジェクト。

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そこで明確だったのが、ヴィヴァルディもモーツァルトもブラームスも、ピンク・フロイドもフランク・ザッパもデヴィッド・ボウイも、同列に扱うボーダーレスな精神である。

ソッリマは、筆者の取材に対して「いわゆる“壁”というものは、すべて人間の敵だ」と言っていた。トランプの壁だろうがベルリンの壁だろうが、人間を分断化するものは悪であるという強い信念。それはソッリマの音楽の根本姿勢でもある。

今回の新作アルバム『ナチュラル・ソングブック』は、それがさらに如実に反映されていて、ルネサンス、バロック音楽から、アイルランドからオーストラリアに至る多様な民族音楽、ベートーヴェン、サティ、さらには氷でできた「アイス・チェロ」なる創作楽器の演奏まで、時間的にも地理的にも、壮大なスケールを持った冒険的内容となっている。

このアルバムを聴いていると、ソッリマのライブでの様子がありありと脳裏によみがえってくる。詩的なメロディと深い瞑想、超絶技巧に支えられた装飾的即興。演奏しながら、足を踏み鳴らし、叫び、立ち上がり、こぶしを宙に突き出すほどの激しいエネルギー。そう、彼は、まるで美しい野獣のように自由だった。

あのコンサートを聴けなかった人にも、今回の新譜は大いに楽しめるに違いない。

林田直樹
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...

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