読みもの
2020.10.05
林田直樹のミニ音楽雑記帳 No.30

古代ギリシャから現代まで、壮大なスケールで振り返る『ヨーロッパ音楽の歴史』

林田直樹
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...

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いま、文化や文明のあらゆる領域において、「歴史を捉えなおす」ことが、とても大切な時代になってきている。バッハが「音楽の父」と言われた時代はとっくに過去のものになっているということを、『ヨーロッパ音楽の歴史』(金澤正剛著 音楽之友社)ほど簡潔明快に体現している最新の音楽史入門書はないだろう。

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本書では、音楽の始まりについて、中世・ルネサンスはおろか、古代ギリシャやメソポタミア文明にまで遡っている。著者(1934年生まれ、今年86歳)はキリスト教音楽が専門であるが、幅広い分野がここでは扱われており、現代の音楽状況も1980年代くらいまではカバーしている。バッハからショスタコーヴィチ、などという旧来の枠に押し込めるような切り取り方をせず、古代から現代までの「連続性」をもって、ダイナミックに歴史を記述しようとする壮大な意図。それが本書の魅力だろう。

特に興味を惹かれるのが、ある時代から次の時代に移り変わる「分水嶺」がどこにあるのか、ということに対するこだわりである。著者はたとえば、古代と中世の転換期は、シャルルマーニュ(カール大帝、742-814)が皇帝に任ぜられた西暦800年としている。それ以前は口伝によって音楽は伝えられていたが、それ以降は楽譜とポリフォニーの出現によって複雑な作曲技法が始まり、作品を作曲するという意識が生じてきたからだという。

各時代に対するページ数の割き方は、従来のように近代ばかり重視するのではなく、年数の長さに対して程よいバランスの分量をとろうとしているのもいい。そうすると、バロック音楽の終わりくらいで、ちょうどページ数の半分となる。

私たちが生きている現代は、あるいはこの100年、200年は、音楽史の流れからすると、実は非常に短い期間の出来事に過ぎない——。

そうした時間の流れを、俯瞰的に意識することの大切さを、本書は教えてくれる。

金澤正剛オンライン講座「ヨーロッパ音楽の歴史」

会期: 2020年11月5日(木)~2021年2月4日(木)
時間: 19:00~20:30 
受講料: 全10回通し受講 15,000円+税、各回 1,500円+税
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林田直樹
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...

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