『ゼルダ』の名曲をオーケストラの響きで楽しむ!
任天堂から発売されているアクション・アドベンチャーゲーム、『ゼルダの伝説』シリーズ。単なるBGMではなく、ストーリーの重要なキーアイテムにもなっている音楽を、東京フィルハーモニー交響楽団が熱演。ゲームファンの想い出が詰まった30周年記念コンサートのCDをご紹介します。プレイした人も、していない人も、冒険に旅立ちましょう!
ゲーム音楽の分野を中心に活動するフリーランスライター。ゲーム音楽作曲家へのインタビュー記事、ゲーム音楽演奏会のレポート記事などを多数執筆しています。好きなゲーム作品:...
任天堂から発売されているアクション・アドベンチャーゲーム、『ゼルダの伝説』(以下『ゼルダ』)シリーズ。主人公の青年・リンクが、悪の大魔王ガノンにさらわれた王女ゼルダを助けるために大冒険を繰り広げるこの作品は、1986年にファミリーコンピュータ・ディスクシステムで第1作が発売されて以来、30年以上の長きにわたって多くの続編が世に送り出され、世界中のファンに愛されています。
今回は、そんな『ゼルダ』の楽曲のオーケストラコンサートの模様を収録したCD、『ゼルダの伝説 30周年記念コンサート』(2017年2月、日本コロムビアより発売)をご紹介いたします。
歴代の『ゼルダ』楽曲をオーケストラで演奏
このCDは、『ゼルダ』シリーズの生誕30周年を記念して、2016年に国内4都市で開催されたオーケストラコンサートツアーの東京公演(2016年10月16日、東京芸術劇場コンサートホールにて開催)の演奏が収録されたものです。
本公演では、ゲーム音楽にも造詣の深い指揮者・竹本泰蔵氏のタクトのもと、東京フィルハーモニー交響楽団が演奏を披露。プログラムは歴代の『ゼルダ』シリーズ作品からほぼまんべんなくセレクトされており、30年にわたって愛され続けてきた『ゼルダ』音楽の魅力を、オーケストラの豊かな響きで存分に楽しめる内容になっています。
ゲーム中でも需要な役割を果たす「オカリナ」にフィーチャーした組曲
『ゼルダ』シリーズの大きな特徴として、「ゲーム中に楽器が登場する」ことが挙げられます。
歴代シリーズ作品のほとんどに、笛、オカリナ、ラッパ、コンガ、ギター、タクト(指揮棒)、ハープといった何らかの楽器が登場し、作品によってはプレイヤーがコントローラを使って直接演奏することもできます。楽器を奏でることで、何らかの特別な効果が発生し、それをゲーム中の謎解きに使うことも少なくありません。『ゼルダ』は、ゲームと音楽が密接に絡み合っているのです。
《組曲オカリナメロディ》は、1998年および2000年にニンテンドウ64で発売された『時のオカリナ』『ムジュラの仮面』の2作品でリンクがオカリナで吹く19のメロディを、オーケストラ編成にした作品。
コンサートでは、リンクの愛馬・エポナを呼べる《エポナの歌》や、昼夜の時間を逆転できる《太陽の歌》、嵐を呼べる《嵐の歌》などを演奏する合間に、ナレーターが楽器の紹介をしています。「観客へオーケストラの楽器を紹介する」という役割も兼ねているのです。
ちなみに、《組曲オカリナメロディ》は、5つの音階(レ・ファ・ラ・シ・レ)だけで作曲されています。当時のコントローラに搭載された限られた数のボタンで、すべてのメロディが演奏できるのです。音楽をもゲームの一部として取り入れている『ゼルダ』シリーズならではの作品ですね。
ドラマチックな「ゼルダの伝説30周年シンフォニー」
特に印象深いのは、30周年を記念して新たに編曲されたメドレー楽曲《ゼルダの伝説30周年シンフォニー》です。リンクの冒険の軌跡をたどっていくような、熱い旋律が次々と展開していきます。
このメドレーには、1993年にゲームボーイで発売された作品『ゼルダの伝説 夢をみる島』の楽曲が多くセレクトされており、舞台となっている島に住むマリンという少女から教えてもらえる《かぜのさかなのうた》がテーマとなっています。
メドレーはこの歌のモチーフから始まり、シリーズ作品の楽曲が展開したあと、終盤で再び切なさと美しさにあふれた《かぜのさかなのうた》が響きわたります。わずか9分ほどの間でストーリーを想起させてくれる、ドラマチックなメドレーになっています。
筆者はこのコンサートを生で聴いたのですが、島での出来事を含めたゲームプレイ当時の思い出が鮮烈に呼び起こされ、思わず目頭が熱くなったことを覚えています。理屈抜きで美しい旋律ですので、ゲームをプレイしたことのない方でも是非お聴きになってみて下さい。
“ゼルダの象徴”であるメインテーマ
さまざまな『ゼルダ』楽曲が演奏される本CDの最後を締めくくるのは、《ゼルダの伝説メインテーマ》です。1986年の初代作品から現在に至るまで、30年以上に渡って“ゼルダの象徴”となっている名曲です。
ゼルダ姫を救うため、襲いかかる敵に立ち向かいながら勇猛果敢に進んでいくリンクの姿を想起させる、勇壮な旋律が心を震わせます。ゲーム中、ダンジョンなどに仕掛けられた謎を解いた時に流れる《謎解きジングル》の音色がさりげなく入っているなど、遊び心が盛り込まれているのもポイントです。
演奏の中盤には、1991年にスーパーファミコンで発売されたシリーズ屈指の人気作『神々のトライフォース』のタイトル画面で流れる壮大なファンファーレが奏でられます。ここから演奏はより勇ましいオーケストラとコーラスで盛り上がり、クライマックスへ突入していくのですが、この部分は何度聴いても鳥肌が立ちます……! 筆者は、人生で落ち込むことがあれば、この《ゼルダの伝説メインテーマ》を聴きます。どんなに辛く苦しい時でも、この旋律を聴けば、勇気や元気をもらえます。いったい、これまでに何度助けてもらったことか数えきれません(笑)。ゲーム音楽を代表する名曲だと思います。
今回ご紹介した『ゼルダの伝説 30周年記念コンサート』は、非常にメロディアスかつ美しい『ゼルダ』の名曲群をオーケストラの響きで楽しめる、『ゼルダ』ミュージックの集大成のようなCDです。30年もの間、近藤浩治氏をはじめとした多くの作曲家が作り上げてきた『ゼルダ』の美しく豊かな響きは、素晴らしい、のひとことです。
この素敵な音楽を、ゲームファンだけで楽しむのはもったいない! もっと多くの方に知ってほしい!と心から思います。老若男女どなたでもお楽しみいただけると思いますので、是非お聴きになってみてください。そして、機会があれば原作ゲームのほうも遊んでみていただきたいです。ゲーム音楽は、ゲームを演出するために作られたものなのですから。
『ゼルダの伝説 30周年記念コンサート』
発売元:日本コロムビア
仕様:CD2枚組
価格:¥3,000+税
品番:COCX-39895~6
収録楽曲:
[DISC 1]
ハイラル城
ゼルダ姫のテーマ
風のタクトメドレー
組曲オカリナメロディー
ボス戦闘曲メドレー
神々のトライフォース2&3銃士メドレー
「スカイウォードソード」スタッフロール
[DISC 2]
ゼルダの伝説30周年シンフォニー
ゼルダの伝説小品組曲
ゲルドの谷
「時のオカリナ」ハイラル平原
大妖精のテーマ
トワイライトプリンセスメドレー
ゼルダの伝説メインテーマ
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