“新”横浜みなとみらいホール、ホールオルガニストの近藤岳がひらくオルガンの新時代
横浜みなとみらいホールには、“ルーシー”の愛称で親しまれる日本屈指の名パイプオルガンがあります。その輝くような音色を讃えた、「lux」(ラテン語で“光”)に因む愛称です。
2021年1月1日から1年10か月の大規模改修工事を経て、いよいよ2022年10月29日からリニューアルオープン記念コンサートが始まる横浜みなとみらいホール。その第2代ホールオルガニストに近藤岳さんが就任しました。
就任記念リサイタルや、今後続々と開かれるパイプオルガンのコンサート、またパイプオルガンをめぐる新たな試みについて、「オルガンを聴く日常を当たり前にしたい」と意気込む近藤さんにお話を伺いました。
武蔵野音楽大学音楽学学科卒業、同大大学院修了。現在、武蔵野音楽大学非常勤講師。『音楽芸術』、『ムジカノーヴァ』、NHK交響楽団『フィルハーモニー』の編集に携わる。『最...
就任記念コンサートは、ルーシーの輝くフランス・シンフォニック作品で
――「ホールオルガニスト就任記念」となる〈オルガン・リサイタル・シリーズ46〉は、まさに「フランス・シンフォニックの輝き」をコンセプトに選曲されています。
近藤 横浜みなとみらいホールのルーシーは、実際に音を出すパイプ数が4,632本、音色を選べるストップという装置を62種類も持ち、加えて、鉄琴のような美音の出る「チェレスタ」や鈴の音「ツィンベルシュテルン」、「ナイチンゲール」という鳥の鳴き声にも似た音色も備えた、ダイナミックかつ多彩な音色を立ち上らせる国内有数の大型オルガンです。
音色の多彩さが際立つルーシーは、フランス19世紀のオルガン製作家アリステッド・カヴァイエ=コルの理念を多分に反映しています。カヴァイエ=コルは、それまでフランスのオルガンでは重視されていなかった弦楽器系の音色を強化し、フルートやトランペットなどオーケストラに登場する楽器の音色を充実させました。
また、カヴァイエ=コルと親交の厚かったオルガニスト、ヴィドールやフランクなどに豊かなインスピレーションを与え、そのことが19世紀フランスで交響的なオルガン作品がつくられる原動力になりました。まさにそのような作品で、就任記念を飾りたいと思います。
日時:2022年11月25日(金)19:00開演
会場:横浜みなとみらいホール 大ホール
曲目:C.-M.ヴィドール:オルガン交響曲第6番、M.デュプレ:3つの前奏曲とフーガ 作品7、C.フランク:《3つのコラール》より〈コラール第1番 ホ長調〉
詳細はこちら
ホールの響きを体感できる「10代のためのパイプオルガン・レッスン」
――日本オルガニスト協会の理事でいらした時代には、次世代育成のための中長期計画にも尽力され、教則本の制作にも取り組まれました。横浜みなとみらいホールでも「10代のためのパイプオルガン・レッスン」に力を入れられるとのことですが。
近藤 就任にあたり大きな柱として必ず行ないたいと思っていたことで、具体化したのがこの企画です。
次世代育成はどの分野でも急務だと思いますが、オルガン界においてもたいへん重要な課題です。楽しんでくださる方の裾野が広がることもとても大事なことですが、同時に、専門性をもってこの楽器を演奏してみたいという子どもたちが増えて、将来逸材が生まれる土壌を培うことも、僕たちの世代に託された役割ではないかと思っています。
レッスンでは僕が「こう弾いてね」とばかり指導するのではなく、この響きはこのホールだとこういう音になるんだよと、みんなで体感し、楽器の特性を知りながら創造性も養い、色々な可能性を拓ける成長のお手伝いをできればと思います。
現在、少子化の影響もあり、オルガン科を閉じる大学が増えています。それでもオルガンを専門に勉強したいと思う子どもたちが、講座やスクールで学び、海外に留学し、国際コンクールに入賞して、再び日本に戻り活躍の場を得る、という循環も出始めています。最初は4か月のレッスンですが、ゆくゆくは長い期間できれば。
対象:横浜市在住・在学の、鍵盤楽器を現在習っている小学校4年生~高校3年生
募集人数:6名
講師:近藤岳
内容:2022年12月~2023年3月の間にレッスン8回、グループレッスン2回、個人練習9回、修了演奏会
受講料:40.000円
申込方法:所定の申込書により、郵送で申込み(締め切り:2022年10月28日必着)
問合せ:横浜みなとみらいホール 事業企画グループ オルガン担当
TEL: 045-682-2020/FAX: 045-682-2023/E-mail: mmh_organ@yaf.or.jp
「1ドル」&新設の「1アワー・コンサート」でオルガンを楽しむシリーズがますます充実
――第一線のオルガニストが登場する「オルガン・1ドルコンサート」(料金:1ドルまたは100円)は、人気シリーズの1つとして236回を数えています。それとともに「1アワー・コンサート」も新たにスタートし、オルガンを楽しむシリーズがますます充実しますね。
近藤 「1ドル」のお客様からいただいていた「もっと聴きたい」という声に応え、お話も盛り込み、たっぷり聴いていただくシリーズのスタートです。
オルガンを聴いたことがない方もまだまだいます。より気軽に足を運んでいただけるよう「1ドル」は30分にしましたが、聴いてみたらまたオルガンに会いたくなったという方に、今度は1時間じっくり堪能していただこうと思っているのが「1アワー」。2つで、日常的にオルガンに親しむシリーズになればと願っています。
12月21日には、2021~23年横浜みなとみらいホール プロデューサーを務めるカウンターテナー・藤木大地との「クリスマス・パイプオルガン・コンサート」が開催される。日本トップクラスの演奏家によるこのような企画も、横浜みなとみらいホールの強みだ。
国内のオルガンが連携して「オルガンのある日常」を
「1ドル・コンサート」には勝山雅世(2023年1月18日)や山口綾規(3月8日)等、スター・オルガニストたちが続々登場する。
近藤 日本のコンサートホールに初めてパイプオルガンが設置されたのが、1973年NHKホールのシュッケ社製。以来、神奈川県民ホールをはじめ、バブル期にはホール建設ラッシュと共に設置が進み、ヨーロッパのオルガニストたちが驚くほどタイプも様々なオルガンが日本には建造されてきました。
そして海外でも研鑽を積んだ日本のオルガニストの水準は高く、世界的な評価も著しい昨今です。オルガンのファンを増やし、日常的な楽器にしていくために、日本の多彩なオルガン群が連携していくべき時代を迎えていると思います。
横浜みなとみらいホールでは、神奈川県民ホールやミューザ川崎シンフォニーホールと3館での連携にも取り組み、特に、市内の県民ホールとは横浜みなとみらいホール主催のオルガン・フェスティヴァル「パイプオルガンと横浜の街」への公演参加というかたちで相互交流も行なっている。このフェスティヴァルは、パイプオルガン設置先進都市である横浜ならではの企画で、身近な場所に点在するオルガンを巡りながら横浜の街歩きを楽しむもの。
近藤岳との新時代が開く。
沼尻竜典指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
日時・会場:10月29日(土)15:00 大ホール
ヨコハマ・ポップス・オーケストラ2022
日時・会場:10月30日(日)17:00 大ホール
井上道義指揮 NHK交響楽団 藤木大地(カウンターテナー)近藤岳(オルガン)
日時・会場:11月3日(木・祝) 17:00 大ホール
反田恭平&Japan National Orchestra
日時・会場:11月6日(日) 15:00 大ホール ( ※完売)
アンドリス・ネルソンス指揮 ボストン交響楽団
日時・会場:11月9日(水) 19:00 大ホール
横浜市招待国際ピアノ演奏会 第40回 記念特別公演
マルタ・アルゲリッチ&海老彰子 デュオ・リサイタル
日時・会場:11月17日(木) 19:00 大ホール(※Pブロック追加発売 10/27)
第40回 横浜市招待国際ピアノ演奏会
日時・会場:11月19日(土) 15:00 小ホール(※完売)
オルガン・リサイタル・シリーズ46
近藤 岳 オルガン・リサイタル
日時・会場:11月25日(金) 19:00 大ホール
ミュージック・イン・ザ・ダーク®
日時・会場:11月1日(火) 15:00 小ホール
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