イベント
2021.03.18
日生劇場/特集「ホールよ、輝け!」

若い世代にも「感情を共有できる」場を〜演出家・芸術参与の粟國淳が語る日生劇場

「いい舞台作品を観ると、人は、大切に生きよう、人を大切にしようと思うようになる」とは、1963年の日生劇場の開場当時に日本生命社長・弘世現氏がいった言葉。その精神を引き継ぎ、2021年も子どもも大人も一緒に楽しめる公演を予定している。演出家で日生劇場の芸術参与である粟國淳さんにインタビュー!

取材・文
岸純信
取材・文
岸純信 オペラ研究家

足が短いので、長いものを好みます。俳句よりは短歌、ツイッターよりはブログ。ネットとは書かずインターネットと記します。

メイン写真:日生劇場ファミリーフェスティヴァル2019 物語付きクラシックコンサート「アラジンと魔法のヴァイオリン」 撮影:三枝近志

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行きたくなったらいつでも行ける「人間の心理を観る」場所

皇居や東京駅にも近い日比谷の日生劇場は、開場以来、「生のステージを、若い世代に体験してもらおう」と精力的に取り組んできた劇場である。そのため、オペラやバレエから演劇、ミュージカル、音楽劇など、舞台芸術のいろいろなジャンルを手掛けられるよう、1300席強という中型劇場として設計され——芝居のセリフが隅々まで響き渡るサイズ——毎年、初夏から秋にかけて、大人から子どもまで楽しめるラインナップが用意されている。

日生劇場。日比谷駅を地上に出てすぐの立地にある。

現在、この劇場の芸術参与として腕を振るうのは、オペラの演出家である粟國淳。子ども時代をイタリアで過ごした彼が、まずは劇場と人々の関わり合いについて、思い出を交えながら語ってくれた。

日生劇場の芸術参与で、演出家の粟國淳。
©️ヒダキトモコ

「父親もオペラの演出を手掛けていましたので、3歳からローマに住みました。小学生の頃からローマ歌劇場にも通い、いろんなオペラを観ましたが、一度びっくりしたのが、舞台の表現に不満な観客たちがだんだんヤジを飛ばし始めて、スポーツのスタジアムみたいな雰囲気になったときのことです。

いま思い返すと、そんなに奇抜なステージでもなかったのですが、ヤジは本当に凄かったですね。『上演中なのに、皆であんなに激しく意見を闘わせるんだ!』と驚きました」

確かに、日本では考えられないぐらい、ヨーロッパでは、客席が自由に——時には乱暴に ——反応することが多い。

「特に1970年代はそうでしたね。ひとつ思うのは、欧州だと、どの町にもまず教会があり、政治を行なう広場があり、そこに劇場もあって……それぞれが、重要な3つの場所として必ず存在します。現代では、そこにスタジアムも加わるのでしょう。

ホールや劇場は人が集う場ですが、中でもオペラやバレエ、芝居は、『人間の心理を観る』場所ですね。物語のヒーローやヒロインに、ご自分を重ねる人もいるでしょう。また、演出家としては、『舞台をよくわかっている人だけが行くところでもない』と思います。生のステージをご覧になって、1時間なり2時間なりの記憶を心に残していただければ、それが、ご自身の将来を変えるきっかけになるかもしれません。

舞台を無理に好きになっていただかなくても、行きたくなれば、いつでも行けるところであってほしい——日生劇場が、皆さまに、そのように感じていただける場であれば本当に嬉しいです」

©️ヒダキトモコ

日本語で歌われるオペラをはじめ、音楽劇やダンスなど幅広い演目を子どもたちにも!

日生劇場のラインナップは本当に多彩だ。その幅広さこそが、劇場の特徴なのだろう。

劇場は本来、スタジアムのように、感情を皆でワーッと共有できるところです。コロナ禍のいまは、さすがに声も出せないですが、しっかりと感染対策を行なったうえで、多くのお客さまに舞台を楽しんでいただきたいです。

今年はまず、6月にプッチーニのオペラ《ラ・ボエーム》を日本語の訳詞で上演します。オペラは初めてという方にも『歌に言葉がダイレクトにはまる瞬間』を体験していただければ。こればかりは、口でどんなに説明してもわからないことなので、まずは、じかに味わってもらいたいです。ドラマは、19世紀のパリの若者たちの日々を描きますが、例えば、『好きだよ!愛している!』というシンプルなひと言が、歌でどんなふうに表現されるのか、そこからまず、感じてみてください」

プッチーニのオペラ《ラ・ボエーム》2017年の公演より。演出は伊香修吾。今回は、新たな視点から再構築して上演

続いて、11月にもオペラが。

ベッリーニの《カプレーティとモンテッキ》です。有名なロメオとジュリエットのお話ですが、内容はシェイクスピアの戯曲と少し違います。このオペラでは、ロメオ役を女性が男装して演じるんですね。ベッリーニの音楽も本当に美しいですから、オペラは初めてとおっしゃる方にもお勧めですよ!」

また、家族連れでにぎわう連続公演、日生劇場ファミリーフェスティヴァルも、夏の大きな催しである。

「お子さま連れの方が多いですが、大人一枚でももちろん、チケットをお求めいただけます。今年は物語付きクラシックコンサート《アラジンと魔法の歌》から始まりますが、こちらは、アラビアンナイトのお話をベースに、クラシックのいろんな時代のさまざまな名曲を、一つの物語を通じて馴染んでいただけるよう、オーケストラの生演奏と共にお送りする舞台です。歌手や俳優が、歌ったり踊ったり楽器を鳴らしたりと、いろいろ活躍しますので、クラシックに触れてみたい大人のお客さまからも好評ですね」

2018年の物語付きクラシックコンサート『アラジンと魔法のランプ』ダイジェスト

続いては、ダンス&人形劇という異色の組み合わせ《ひなたと月の姫》、そして音楽劇《あらしのよるに》

《ひなたと月の姫》は、『新しいかぐや姫』として構想された作品で、パペット(人形)と俳優、ダンサーや能楽師など、舞台上で大勢が共演する斬新なステージです。《あらしのよるに》は、狼とヤギが偶然の出会いを経て、互いを思いやるという物語です。音楽とお芝居それにダンスがふんだんに楽しめることで、前回の上演でもとても好評でした」

文楽の技術を継承する人形劇とコンテンポラリーダンスを融合させた《ひなたと月の姫》(2020年撮影の特別企画動画)

そして、このファミリーフェスティヴァルのもう一つの目玉が、バレエ《白鳥の湖》日生劇場版である。

「チャイコフスキーの名作バレエを、小さなお子さんにも飽きずに楽しんでいただけるよう、全体で2時間ぐらいに纏めました。開演前に、ダンサーの方たちが幕前に出てきて、言葉や振りで解説をされますが、客席から子どもたちの笑い声も出たりして、楽しいんですよ。

いまの状況が早く改善されて、皆さまが安心してお出でいただけるよう、私たちも十分な対策を取りながら準備します。舞台をどうぞお楽しみに!」

日生劇場では、オペラやファミリーフェスティヴァルの演目に関連した出演者インタビューや観どころ解説のほか、バックステージツアーや過去の公演のダイジェストなど、多くの動画をYouTubeチャンネルに公開。劇場に足を運ぶ前に観て、楽しみ方を広げてみよう!

日生劇場

[運営] (公財)ニッセイ文化振興財団

[座席数] 1334席

[オープン]1963年

〒100-0006

東京都千代田区有楽町1-1-1

[問い合わせ]03-3503-3111

https://www.nissaytheatre.or.jp/

取材・文
岸純信
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岸純信 オペラ研究家

足が短いので、長いものを好みます。俳句よりは短歌、ツイッターよりはブログ。ネットとは書かずインターネットと記します。

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