パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌2024~修了生が凱旋! 34回の成果を感じるプログラム
1990年にレナード・バーンスタインが札幌で創設した国際教育音楽祭「パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌」通称「PMF」は、今年で34回目の開催となります。
2024年7月10日(水)~30日(火)の期間中、世界中の若者たちが一期一会で創り上げる「PMFオーケストラ」、室内楽、ワークショップなどさまざまな催しが札幌を中心に行なわれます。アカデミー修了生の中から「凱旋」する指揮者や演奏者もおり、ますます盛り上がる音楽祭をご紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
バーンスタインの意思を引き継ぎ、今年で34回目の開催
パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)は、1990年、《ウエストサイド・ストーリー》の作曲者として知られる世界的な指揮者、レナード・バーンスタインの提唱により、札幌で始まった国際教育音楽祭。
これまで世界78か国・地域に延べ約3,800人の優秀な音楽家を輩出し、未来のクラシック音楽シーンを担う人材の育成に貢献してきた。音楽を通じて平和を目指す、創設以来のバーンスタインの意思を引継ぎ、34回目を迎えた。今年参加が予定されている指揮者、教授陣、弦楽四重奏団には、これまでPMFで学んだアカデミー生が多く「凱旋」出演し、PMFの成果が引き継がれていることを感じられる布陣となった。
85名の若者たちによる「PMFオーケストラ」を導く名指揮者ホーネック
PMFの中心である「PMFオーケストラ」。今年は、厳しいオーディションにより25か国・地域から選ばれた、前年よりも11人多いアカデミー生、85名で編成される。ストラヴィンスキーやマーラーなど、フェスティバルの前・後半にわけて2つの大きなプログラムに挑む。
首席指揮者には、ピッツバーグ交響楽団の音楽監督を長年つとめ、2018年にはグラミー賞最優秀オーケストラ演奏賞を受賞、同年、国際クラシック音楽賞の「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」にも選出されたマンフレート・ホーネックが初登場。3つのコンサート(7/27,7/28,7/30)で指揮をする。
幅広いレパートリーへの卓越した解釈で知られるホーネックが、モーツァルト「ピアノ協奏曲第22番」と、マーラー「交響曲第5番」で急成長するオーケストラをけん引し、感動の高みへと導く。
モーツァルトのソリストには、同じオーストリア出身のティル・フェルナーが登場。マーラー「交響曲第5番」では、演奏の指導にあたるアメリカのメジャーオーケストラ首席奏者たちも加わる(東京公演以外)。
サントリーホールでの東京公演が、この一期一会のオーケストラの最終公演となる。
チェロ・指揮でPMFアカデミーを修了したグランディが客演指揮者として凱旋
PMFオーケストラ会期前半のプログラムを担当し、2つのコンサートで指揮をするのは、客演指揮者エリアス・グランディ(7/13,7/14)。彼は、2004年にチェロでアカデミー生として、2012年に指揮者コースに参加したPMF修了生だ。2015~23年にわたってドイツ・ハイデルベルクで歌劇場とフィルハーモニー管弦楽団の音楽監督をつとめ、来年2025年4月から札幌交響楽団の首席指揮者に就任が決まっている。
メインのストラヴィンスキー《火の鳥》、ソリストにクララ=ジュミ・カンを迎えたプロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第1番」、R. シュトラウス《ドン・ファン》、ドビュッシー《牧神の午後への前奏曲》といった、色とりどりのプログラムが楽しめる。
こちらのプログラムでは、弦楽器セクションにはウィーン・フィルのメンバー、管打楽器セクションにはベルリン・フィルのメンバーが指導にあたる。
教育音楽祭として子ども向けワークショップなども充実
教育音楽祭としての企画にも力をいれており、「PMFクラシックLABO♪」「PMFリンクアップコンサート」「PMFミナミナコンサート」「公開マスタークラス」「オープンリハーサル」などが開催される。
東京文化会館ミュージック・ワークショップのプロジェクトをPMFで開催する「PMFクラシックLABO♪」は、対象年齢を細かく分けて行なう参加型の教育ワークショップだ。
オープンエアのピクニックコンサートから名手たちの室内楽まで聴きどころ満載のプログラム
緑の森の中で開催する「ピクニックコンサート」(7/27)は、PMFの代名詞的な公演で、北海道の爽やかな夏を極上の音楽で楽しむことができる。第1部のパーカッション・アンサンブルから始まり、東京藝術大学同窓生により結成され、さまざまな音楽祭やホールに出演し注目を集めているルミエサクソフォンカルテットによる華やかな演奏や、小編成のオーケストラによるモーツァルトとハイドン。第2部は前述のマンフレート・ホーネック指揮PMFオーケストラのモーツァルトとマーラーが締めくくる。
活躍中のPMF修了生を迎えて昨年から始まった「PMFホームカミング・コンサート」(7/26)は、韓国在住の若手実力派の弦楽四重奏団リーザス・カルテットが登場。2018年から19年の修了生を中心に結成され、数々の受賞歴を誇るカルテットだ。「PMF GALAコンサート」の第1部にも登場予定。
またフェスティバル前半のプログラムでソリストとして参加するクララ=ジュミ・カンのヴァイオリン・リサイタル(7/15)も開催。名パートナーのピアニスト キム・ソヌクと演奏するのは、ベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ1番」、ショーソン《詩曲》、フランクの「ヴァイオリン・ソナタ」など、魅力的なプログラムとなっている。
教授陣のアンサンブルもPMFならではのコンサート。PMFウィーンの弦楽アンサンブル、PMFベルリンの管打楽器のアンサンブル、そしてPMFアメリカはメジャーオーケストラの名手たちが、PMFでしか聴けない共演でアンサンブルを奏でる。
バーンスタインの魂が宿る音楽祭、札幌の夏は今年も熱くなりそうだ。
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