「歌って、聴いて、踊って」誰もが音楽の主人公に。サラダ音楽祭2025、開幕へ
2018年にスタートした「サラダ(SaLaD)音楽祭」は、Sing(歌う)、Listen(聴く)、Dance(踊る)の頭文字を取って名付けられた音楽祭。音楽を「歌って、聴いて、踊って」楽しむというコンセプトのもと、年齢や障がいの有無を問わず誰もが参加できるインクルーシブな場を目指し、進化を続けてきた。
2025年も、9月14日(日)、15日(月・祝)に東京芸術劇場などの池袋エリアをメイン会場として、豪華かつ多様なプログラムが展開される。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
音と身体の融合。都響×Noismによるメインコンサート
2025年のサラダ音楽祭でもっとも注目されるのが、 9月15日(月・祝)に東京芸術劇場で開催されるメインコンサート《Boléro》だ。指揮は音楽祭スーパーバイザーの大野和士、演出・振付は金森穣が務め、東京都交響楽団とNoism Company Niigataが共演する。
演目には、荘厳なモーツァルト《戴冠式ミサ》や、感情の高まりを爆発的に描くラヴェル《ボレロ》が並び、合唱とダンスが一体となった重層的な舞台が繰り広げられる。また、静謐な響きが印象的なペルト《フラトレス》が、全体に静と動のコントラストを与えている。
都響とNoismの共演は、音楽と動きが響き合い、ひとつの作品の中で化学反応のように交わっていくのが魅力だ。その瞬間ごとに生まれる緊張感や高揚感は、観客にとっても特別な体験となるだろう。
物語と音楽で、親子の心を動かす新作たち
今年は、親子で楽しめる新企画がさらに充実している。なかでも注目したいのが、9月14日(日)・15日(月・祝)に上演される子どものためのオペラ《しろくまの王さま ヴァレモンの物語》だ。東京芸術劇場による新制作で、オーストラリアの作曲家エレナ・カッツ=チェルニンの音楽にのせて、小編成のオーケストラと歌手が魔法の世界を描き出す。子どもにとっては新たな物語との出会いとなり、大人にとっては童心に返るひとときを味わえる構成となっている。
また、 9月14日(日)、15日(月・祝)には、 Noismの研修生カンパニーNoism2が《火の鳥》を上演。ダンス公演とワークショップが一体化しており、参加者自身が身体を動かすことで、舞台の奥深さを体験できる構成となっている。
「子どもたちにとっては初めての舞台芸術体験となりうる、保護者にとっても忘れられない時間になるはずです。音楽と物語を“体感”することの喜びを、世代を超えて共有していただきたいです」と音楽祭担当者は語る。
小さなきっかけが、大きな音楽の扉に
9月14日(日)の「OK!オーケストラ」では、0歳から入場可能なファミリー向けコンサートを開催。コンドルズによるダンス、指揮体験、児童合唱団との共演など、ただ「観る」のではなく、観客自身が舞台の一部となって楽しめる参加型の構成が特徴だ。
「オーケストラは観るもの」という固定観念を超え、演奏者と観客がともに音楽をつくる場を提供したいという思いから、体験型のプログラムが数多く用意されている。
都響メンバーによる「サラダ音楽祭マスタークラス」や、ヤマハと連携した未来型の音楽体験、都響といっしょに「だれでもピアノ®」など、年齢や経験にかかわらず誰もが音楽の楽しさに触れられる仕組みが整っている。
街とつながる“全員参加型”音楽祭へ
サラダ音楽祭は、東京芸術劇場を拠点としながら、町田市、小金井市、狛江市など多摩・島しょ地域へも広がりを見せている。無料のプレミアムコンサートや小規模公演を通じて、クラシック音楽に触れる機会を地域の日常に届けてきた。
劇場やホールに足を運ぶことにハードルを感じる人も少なくないなか、「音楽って楽しい」と思えるきっかけを、街の中でつくり出すことがこの音楽祭の目指すかたちだ。音楽を通して人と人、街と文化をつなげていく。そんな“文化のハブ”としての役割も年々強まっている。
「誰もが楽しめて、誰もが参加できる」そんな思いを大切にしながら、サラダ音楽祭は少しずつ形を変え、広がってきた。クラシック音楽にあまり触れたことがない人も、ふと足を運んだ先で「楽しかった」「また来たい」と思える、そんな出会いを生み出す力を、音楽はきっと持っている。サラダ音楽祭は、その力を信じて、今年も多くの出会いを育んでいく。
■「音楽祭メインコンサート《Boléro》」
日時:9月15日(月・祝)15:00開演
会場:東京芸術劇場 コンサートホール
曲目:
モーツァルト:歌劇『魔笛』序曲K.620
モーツァルト:ミサ曲 ハ長調 K.317《戴冠式ミサ》*
ペルト:フラトレス~弦楽と打楽器のための**
ファリャ:バレエ音楽《三角帽子》第2組曲
ラヴェル:ボレロ**
出演:大野和士(指揮) 、独唱/砂田愛梨(ソプラノ)、松浦麗(アルト)、寺田宗永(テノール)、狩野賢一(バス)、新国立劇場合唱団*、Noism Company Niigata**(演出・振付/金森 穣)、東京都交響楽団
チケット(全席指定): S席6,000円、A席4,000円、B席3,000円、C席2,000円、車椅子席(S席)2,000円
※未就学児入場不可
■「OK!オーケストラ」
日時:9月14日(日)11:00 開演/15:00 開演 ※各回約 60分/休憩なし
会場:東京芸術劇場 コンサートホール
曲目:
グリンカ:歌劇『ルスランとリュドミラ』序曲
J.シュトラウス1世:ラデツキー行進曲 op.228♪指揮体験コーナー
アンダーソン:ワルツィング・キャット
チャイコフスキー:バレエ音楽《くるみ割り人形》 op.71より「ジゴーニュおばさんと道化師たち」♪コンドルズによるダンス
久石 譲(編曲/萩森英明):映画『となりのトトロ』より「さんぽ」☆♪みんなで一緒に歌おう!
平井夏美(編曲/萩森英明):瑠璃色の地球☆
ドリーブ:バレエ組曲《コッペリア》より「前奏曲とマズルカ」
出演:大野和士(指揮)、小林顕作(司会)、近藤良平(ダンス・振付)、コンドルズ(ダンス)、東京少年少女合唱隊☆、東京都交響楽団
チケット(全席指定):※2歳以下膝上無料、一般 2,000円、 3歳以上~高校生 500円
■子どものためのオペラ『しろくまの王さま ヴァレモンの物語』(日本初演・日本語上演)
日時:9月14日(日)、 9月15日(月・祝)14:00開演
会場:東京芸術劇場 シアターイースト
出演:種谷典子(ラグナ)、小野寺光(ヴァレモン)、神原愛可(ストーリーテラー)
福崎雄也(ヴァイオリン)、濱崎由紀(クラリネット)、東川暁洋(トロンボーン)、宮本あゆみ(ハープ)、永野雅晴(打楽器)
チケット(全席指定):一般 3,000円、小学生~高校生 1,500円
※未就学児入場不可
※その他の公演を含む詳細は、音楽祭ホームページをご確認ください。
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