イベント
2022.03.18
サントリーホール/春の特集「ホールの1年間」

3つの大規模なフェスティバルと多彩な“定番”企画が魅力!〜サントリーホール

1986年、東京・赤坂に開館した本格的なクラシック音楽専用ホール、サントリーホール。カラヤンのアドバイスを受けて設計され、国内外の一流アーティストが必ず登場するホールとして確固たる信頼を築いている。新シーズンについて、総支配人の折井雅子さんに聞いた。

聞き手・文
片桐卓也
聞き手・文
片桐卓也 音楽ライター

1956年福島県福島市生まれ。早稲田大学卒業。在学中からフリーランスの編集者&ライターとして仕事を始める。1990年頃からクラシック音楽の取材に関わり、以後「音楽の友...

サマーフェスティバル「オーケストラ・ポートレート」から、マティアス・ピンチャー指揮 東京交響楽団、チェロは岡本侑也(2021年8月27日)©️サントリーホール

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GWに大規模に開催!「こども音楽フェスティバル」

片桐 202223年のシーズンも楽しみな企画が多いのですが、3つの大きな“フェスティバル”が開催されます。まず、5月には初めての開催となる「こども音楽フェスティバル」。

折井 「こども」と言っても「0歳から19歳」という、かなり幅広い年齢を対象にしたフェスティバルとなります。ソニー音楽財団とサントリー芸術財団が協力して行ないますが、それぞれの財団が持っているノウハウがとてもたくさんあり、それがひとつになったときに、世界に例のない「こども」のためのフェスティバルになるのではないかと期待しています。

サントリーホールで毎月開催のオルガン無料コンサートを子ども向けに特別アレンジ。

片桐 参加するアーティストも豪華なので、ちょっとびっくりしました。オープニングは沼尻竜典さんが、クロージングは大友直人さんが指揮され、小山実稚恵、角野隼斗、中野翔太、萩原麻未、福間洸太朗、そして新垣隆さんという豪華なピアニストを揃えたコンサート「ピアノの祭典」もありますね。

折井 一つひとつのコンサートが、とても工夫されていると思います。指揮者のリッカルド・ムーティさんがおっしゃっていたように、音楽は「心の健康」に必要なものであり、特に子どもたちには豊かな音楽を体験してほしいです。

さらに、ピアニストの清塚信也さんに公式アンバサダーに就任していただき、このフェスティバルの魅力を全国に発信していただくことにしました。

YouTubeで無料配信も行なうのですが、配信の合間に清塚さんにいろいろと話をしていただき、フェスティバル全体の進行役のような役割をお願いしたいと思っています。開幕となる5月4日には、お笑いコンビのかまいたちさんもゲスト出演するので、会場に来られない子どもたちには、ぜひライブ配信を楽しんでいただきたいです。

アンバサダー就任記者会見にて、自身の子ども時代の体験や「こども音楽フェスティバル」への意気込みを語るピアニストの清塚信也。無料ライブ配信で総合パーソナリティを務めるだけでなく、オープニング・ガラ・コンサートでピアノでも出演する。©ソニー音楽財団/サントリーホール

入門者にも通にも! 6月の室内楽、8月の現代音楽のフェスティバル

片桐 「こども音楽フェスティバル」に続いては、12回目を迎える室内楽の祭典「チェンバーミュージック・ガーデン2022」、そして夏には歴史ある「サマーフェスティバル2022」が開催されます。歴史、そして継続性のある点も、サントリーホールにとって重要ですね。

折井 それぞれが異なるテーマと特色をもつフェスティバルで、そこにはクラシック音楽の多様性、豊かさが表現されていると思います。クラシック音楽のもつ包容力を、こうしたフェスティバルを通して感じていただけたらうれしいですし、サントリーホールはそうした包容力を持ち続けたいと思っています。

2021年にサントリーホールは35周年を迎えたのですが、その積み重ねの歴史をコロナ禍でも継承しながら、音楽文化がサステナブルであるように未来を開いていく、それがすべてに共通する想いです。

サントリーホール総支配人の折井雅子さん。©️ヒダキトモコ
毎年6月にブルーローズ(小ホール)で開催される室内楽のフェスティバル「チェンバーミュージック・ガーデン」。写真は2021年のフィナーレで、館長の堤剛(チェロ)と室内楽アカデミーメンバーが共演したステージ。©️サントリーホール

片桐 6月の「チェンバーミュージック・ガーデン(CMG)」には、本当に毎年いらっしゃる方も多く、人気企画である「ベートーヴェン・サイクル」(ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲を、ひとつの団体が演奏する)だけでなく、年ごとの工夫も、また冒険的な企画もあるという点が面白いです。特に今年は邦楽(三味線の本條秀慈郎など)の演奏家の方が参加されますね。

折井 午後の1時間のコンサート「プレシャス1pm」の中の企画ですけれど、「CMG」の中で邦楽を取り入れるのは初めてです。邦楽器と西洋楽器がどんなふうに会話するのかが楽しみですし、邦楽の「型」と洋楽の「スタイル」がぶつかりあって、新しい形の音楽が奏でられたら面白いですね。 

そして、「室内楽のしおり」というコンサートを企画しました。これは室内楽初心者の方にも、その音楽の魅力に触れてほしいという意図で企画したものですが、今年はピアノと弦楽器のアンサンブルを取り上げ、それをフォルテピアノのアンサンブルと現代のピアノのアンサンブルで聴き比べてみようというものです。

片桐 それは「音楽通」にも興味深そうなコンサートです。8月21日からの「サマーフェスティバル」には、ウィーンを代表する現代音楽集団である「クラングフォルム・ウィーン」が「ザ・プロデューサー・シリーズ」に参画し、テーマ作曲家にはイザベル・ムンドリーが登場します。

折井 こちらも歴史あるフェスティバルですが、常に最新の音楽に触れることができる刺激的なフェスティバルですね。

いつもサントリーホールには音楽がある! “定番”の魅力

片桐 秋の公演では、五嶋みどりさんの「スペシャルステージ2022」が話題となりそうですし、アンドリス・ネルソンス指揮のボストン交響楽団も注目です。

折井 みどりさんはちょうどデビュー40周年ということで、3回の「ソナタの夕べ」、そして「トリオの夕べ」「協奏曲の夕べ」と、充実のプログラムを披露してくださいます。ネルソンス&ボストン響は2017年以来の来日。5年振りですね。

片桐 ところで、最近思うのですが、サントリーホールの魅力は、一種の“定番”の魅力かなと。

サントリーホールのクリスマス」「ジルヴェスター・コンサート」「ニューイヤー・コンサート」、あるいは東京交響楽団との「こども定期演奏会」や日本フィルハーモニー交響楽団との「とっておき アフタヌーン」など、“いつもそこに行けば音楽がある”という安心感も大事な要素ですね。

インタビューをした音楽評論家の片桐卓也さん。©️ヒダキトモコ

折井 昨年の「サントリーホールのクリスマス」では、「鬼滅の刃」などの人気作品で活躍されている声優の森川智之さんに出演していただきましたが、本当に若いカップルがとても多かったのです。

そういう意味で、新しく音楽に関心を持ってくれそうな方、このコロナ禍でちょっとコンサートから離れてしまった方を常に意識していかなければならないし、特に若い世代の方々にはクリスマス、大晦日、新年といったオケージョナルなコンサートの魅力をより知っていただきたいと思っています。SNSなどでの発信も重要だなと再認識させられた機会でもありました。

片桐 1シーズンを通して、さまざまなタイミングでクラシック音楽に触れることができる、その存在感がサントリーホールにはありますね。

折井 デジタルサントリーホール(DSH)も昨年から開設しました。遠方で、コンサートにいらっしゃる機会の少ない方にも、サントリーホールの魅力を知っていただけたらと思います。

片桐 ありがとうございました。

サントリーホール

[運営](公財)サントリー芸術財団

[座席数] 大ホール2006席(車いす専用スペース6席)

ブルーローズ(小ホール)380~432席(可動式)

[オープン] 1986年

[住所] 〒107-8403 東京都港区赤坂1-13-1

[問い合わせ]Tel. 0570-55-0017

https: //www.suntory.co.jp/suntoryhall

聞き手・文
片桐卓也
聞き手・文
片桐卓也 音楽ライター

1956年福島県福島市生まれ。早稲田大学卒業。在学中からフリーランスの編集者&ライターとして仕事を始める。1990年頃からクラシック音楽の取材に関わり、以後「音楽の友...

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