イベント
2022.03.18
東京文化会館/春の特集「ホールの1年間」

音楽劇、ワークショップ…誰でも劇場デビューできる幅広さ!〜東京文化会館

東京文化会館は、1961年のオープン以来、国内外のオペラ、バレエ、オーケストラが名演を繰り広げ、音楽ファンの支持を得てきた。また、その一方で、東京都の文化施設として、主催事業では、幅広い年齢層の都民が音楽に親しむためのさまざまなプログラムを提供している。2022年度の主催事業について、杉山浩二東京文化会館副館長に聞いた。

聞き手・文
山田治生
聞き手・文
山田治生 音楽評論家

1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...

メイン写真:2021年12月に小ホールで上演された、平常×宮田大《Hamlet ハムレット》新演出。©️飯田耕治

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幅広い層が多様に楽しめるプログラムを

山田 2022年度の主催事業について、どのような意図で企画されましたか?

杉山 東京文化会館は、創造発信、教育普及、人材育成を3本柱に事業を展開しています。主催事業は、貸館での世界的なオペラやバレエとは棲み分けをして、都立の文化施設としていかに敷居を下げるかを考えて、幅広いプログラムを用意しています。

お話を伺った東京文化会館 副館長の杉山浩二さん。©️ヒダキトモコ

山田 都民のためのプログラムということですね。なかでもクラシック音楽初心者におススメの公演はどれでしょうか? 

杉山 私自身が10年ほど前に最初に見て楽しかったのが「オペラBOX」ですね。オーケストラではなく、小編成のアンサンブルですが、小ホールならではの、間近の歌手の声量、舞台との程よい近さの距離感、響きの良さ、照明などに、これが生の芸術かと感動しました。

2022年度はラヴェルの《子供と魔法》です。富岡明子、八木寿子、中江早希、小堀勇介をはじめとして、東京音楽コンクール声楽部門の入賞者が数多く出演します。

ワークショップの対象は、乳児から大人まで

杉山 《子供と魔法》と関連して、「オペラをつくろう!」というワークショップも実施します。

一つは、「オペラの登場人物になる」というもので、小学生から高校生を対象に、児童合唱のメンバーとしてリハーサルに参加し、本番にも出演します。

もう一つは、小学生対象の「オペラに登場するものづくり」。舞台のセットを工作します。そのほか、大学生、アートマネージメントを学んでいる人、舞台デザイナー、舞台制作者を目指している人を対象とした「舞台を学ぶ」というワークショップもあります。このオペラの演出家、舞台監督、美術や衣装のプロフェッショナルの方々が実際に指導します。

山田 実際のオペラの現場を体験できるとは、オペラの仕事に携わりたい人にとっては貴重な機会ですね。東京文化会館ではそのほかにどのようなワークショップがあるのでしょうか?

音楽評論家の山田治生さん。©️ヒダキトモコ

杉山 乳児から大人まで、細かく丁寧にターゲットを分けて、さまざまなワークショップを毎月ひらいています。子供たちが楽し気に体を動かしたり、音楽を聴いたりしています。

また、50歳以上の方を対象とした「Shall we シング?」という声を出して歌をうたうワークショップもあります。ワークショップ・リーダーの育成のための講座もあります。そして、集大成的な「ワークショップ・コンサート」も開催します。

「ワークショップ・コンサート 海の仲間の音楽会」

劇場デビューにおすすめの作品が多彩!

山田 劇場初心者には「シアター・デビュー・プログラム」というのもありますね。

杉山 来年2月の「平常×宮田大×大萩康司《ピノッキオ》」は小学生向け、12月のオペラ《ショパン》は中高生向けに作っていますが、大人も十分に楽しめます。《ピノッキオ》は、今年上演した《Hamlet ハムレット》の平常、宮田大のコンビにギターの大萩康司が加わる新作です。オペラ《ショパン》では、ショパンを山本康寛が、ステッラを佐藤美枝子が演じます。

障がいのある方や自閉症の方も含めて、いろいろな方に楽しんでいただけるコンサートとして、11月の「リラックス・パフォーマンス」があります。初めて家族でコンサートを楽しんだ、という声も寄せられました。手間もかかり、たいへんですが、来た方の満足度の高いコンサートです。

多様化の時代に、意味のある取り組みだと思っています。

「リラックス・パフォーマンス~世代・障害を越えて楽しめるオーケストラ・コンサート~」(2020年7月24日)

オペラ、そして音楽家のファンになる、熱い楽しみ方も

山田 コアな音楽ファンにおすすめの公演は何ですか?

杉山 6月のカウンターテナーの藤木大地による歌劇《400歳のカストラート》は、2020年に初演し、今回は再演になりますが、より磨きのかかった公演にしたいと思っています。

また来年2月に向けて、デヴィッド・ラングのオペラ《note to a friend》を、ニューヨークのジャパン・ソサエティと共同制作します。芥川龍之介の小説を原作として、テノール一人のモノオペラのような形になるようです。

山田 東京音楽コンクールは、夏の恒例のイベントとなっていますね。

杉山 東京音楽コンクールは、2022年で第20回を迎えます。今年は、声楽部門、ピアノ部門、金管部門が開催され、2023年1月に優勝者&最高位入賞者コンサートがあります。そのあとも入賞者にはいろいろな出演機会が与えられるのが東京音楽コンクールの特徴です。

上野de クラシック」では、東京音楽コンクール入賞者たちにコンサートの機会を提供しています。多くが、昼間(11時~12時)の1時間、手頃な料金(1100円ほか)ですのでお客様にも気軽に足を運んでいただいています。

東京音楽コンクールを通して、誰か特定の人のファンになって、入賞者がいろんなところで活躍しているのを応援しよう、追っかけようというのもいいと思います。

毎月のように小ホールで開催される「上野 de クラシック」。写真は2021年11月のVol.61 〜音楽で愛を語った作曲家たち〜。関朋岳、東條太河(以上ヴァイオリン)、田原綾子(ヴィオラ)、矢部優典(チェロ)、秋山紗穂(ピアノ)。

山田 「上野deクラシック」には、ピアノの谷昴登さんや、葵トリオのメンバーとしてミュンヘン国際音楽コンクールで優勝したヴァイオリンの小川響子さんら、既に大活躍中の入賞者も登場しますね。

杉山 我々は幅広いメニューを用意して、なるべく多くの方に楽しんでいただける場としてホールを運営しています。お手頃なお値段でこんな体験ができるのかというひと時に、ぜひ、足を運んでいただきたいと思っています。

東京音楽コンクール プロモーション映像(2018年)

東京文化会館

[運営] (公財)東京都歴史文化財団

[座席数] 大ホール2303席、小ホール649席

[オープン]1961年

[住所]〒110-8716 東京都台東区上野公園5-45

[問い合わせ]Tel.03-3828-2111(代表)

https://www.t-bunka.jp

聞き手・文
山田治生
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山田治生 音楽評論家

1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...

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