オンラインで世界と地域を繋ぐ「くものうえ⇅せかい演劇祭」開催
1984年生まれ、千葉県佐倉市出身。明治大学文学部卒業後、東進ハイスクールの校舎運営、朝日新聞夕刊の執筆・編集、ステージナタリー記者を経て現職へ。『ぴあ』、『ウートピ...
新型コロナウイルス感染症の拡大で、コンサートをはじめとする公演が次々と中止・延期といった窮地に立たされている。毎年4~5月のGWシーズンに街をあげて盛り上がる、SPAC(静岡県舞台芸術センター)と静岡県主催の「ふじのくに⇄せかい演劇祭」も、そんな憂き目に遭ったイベントのひとつだ。
「Shizuoka 春の芸術祭」と題して、2000年より世界各国の優れた舞台芸術を紹介してきたSPAC。活動15年目を迎えた2011年から現在の名称に改め、新たなスタートを切った。これに込められているのは、富士山を抱く“ふじのくに(静岡県)”と“せかい”は演劇を通じてつながっている──というメッセージ。最先端の演劇だけでなく、ダンス・映像・音楽・古典芸能なども海外から招聘し、世界中のアーティストが静岡の地で交流することを理念に掲げている。
しかし同感染症の世界的な流行によって出入国が大幅に制限され、海外アーティストの来日は叶わず。2007年よりSPACの芸術総監督を務める宮城聰は「演劇を必要とする人がいる以上、SPACの作品だけでも上演できたら」と考えたものの、感染リスクの観点から「俳優やスタッフのみならず、全国から来場する観客の身に危険がおよぶ可能性がある」と判断し、自身が演出する『アンティゴネ』『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』も含めて中止を決めた。
一方で、宮城は「これから《演劇を絶たれた状態で、どうやって生き延びるか》を皆さんとともに発明しようと思います」と前を向く。その一環として、同演劇祭が予定されていた4月25日(土)~5月6日(水・休)にオンライン上で繰り広げる「くものうえ⇅せかい演劇祭2020(World Theatre Festival on the Cloud)」を企画した。
映像配信プログラムには、「ふじのくに」で上演される予定だったオペレッタ『愛が勝つおはなし ~マレーヌ姫~』がラインナップ。グリム童話をベースにした筋運びは、子どもが観ても楽しめるだろう。音楽家でもある俳優の歌唱が、ノスタルジックなピアノやチェロの音色に乗るさまを堪能したい。また、世界的に名高いアヴィニョン演劇祭から招聘を受けて制作された、宮城の演出作であるSPAC『アンティゴネ』(2017年)の全編映像も公開される。
トーク企画として、宮城が「ふじのくに」に参加予定だった海外の演出家とインターネット上で語り合う「せかいとつながる くものうえトーク」企画もお目見え。映像配信もされるグリム童話をベースにした音楽劇『愛が勝つおはなし ~マレーヌ姫~』を手がけるはずだったフランスの劇作家・演出家のオリヴィエ・ピイら5人が登場し、胸中を語る。
またSPACの俳優とスタッフが考案した“ブロッサム企画”も展開。彼らとSPACにゆかりのあるゲストによるトーク番組が『くものうえ』YouTube公式チャンネルで生配信される。すでに行われた山田裕幸、ノゾエ征爾、原田一樹、小野寺修二、多田淳之介(いずれも演出家)についてはアーカイブ化され、いつでも視聴可能に。今後は文学座の今井朋彦、Noismの金森穣、俳優の古舘寛治がゲスト出演する。
現状をどのように捉え、“アフターコロナ”に向けて各自どんな取り組みを考えているのか、世界をまたぐ知恵に耳を傾けたい。
関連する記事
-
リーズ国際ピアノコンクール2024 出場者と配信リンクまとめ
-
「第18回難民映画祭」で指揮者グスターボ・ドゥダメルのドキュメンタリーが日本初上...
-
仏文学者・水林章~語学で「自由」へと向かう作家。その音楽を経由した言語表現とは ...
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly