イベント
2020.11.04
ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2020

来日したウィーン・フィル「未来への道筋」~記者会見で受け取った強いメッセージ

サントリーホール主催「ウィーン・フィルハーモニー ウィーク イン ジャパン 2020」のために来日したウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が、到着した福岡で記者会見を行なった。来日に至る説明のみならず、未来への強いメッセージを含んだその模様を、音楽ジャーナリストの林田直樹さんがレポートする。

取材・文
林田直樹
取材・文
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...

メイン写真:11月4日の記者会見のスクリーンショットより

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綿密な準備と強い決意で実現した来日

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ついに、ウィーン・フィルが来日した。

11月4日(水)17時より、到着地の福岡で、「ウィーン・フィルハーモニー ウィーン イン・ジャパン2020」の主催者サントリーホールによるオンライン記者会見がおこなわれ、ダニエル・フロシャウアー楽団長、ミヒャエル・ブラーデラー事務局長が出席し、今回の来日に至るまでの経緯、PCR検査の徹底と感染症対策の内容、そして来日公演に寄せる抱負が述べられた。

ロックダウン後の6月から演奏活動を再開したウィーン・フィルが、公演ごとに毎回検査をおこなってからステージに立っていること、夏のザルツブルク音楽祭では7万6千枚のチケットが販売され、楽団員は、のべ750回もの検査を実施し、すべてが陰性だったこと、今回の来日を控えた先週だけでも4回もの検査をおこなっていたこと、出発前日に判明した1名の無症状陽性者と接触者を除外し、全員が健康な状態を確認したうえで来日したことが、明かされた。

さらに来日中は外出禁止、人に会わないといった「2週間の隔離状態」を自らに課し、「厳しい行動様式のルール、慣れない条件を、自主団体である我々全員が納得して受け入れたことを、誇りに思っている」(ブラーデラー事務局長)と、滞在中の感染症対策にも強い覚悟を示した。

出発直前のウィーンでのテロに関しては、今回の来日公演のうちのコンサートのひとつを「犠牲者に捧げたい」とし、「今回のツアーが、世界にとって文化、そして音楽がどういう意味を持つのかということを示す、非常に重要なものだと考えています。そして、それが日本でできることは、私たちにとっても、この上ない喜びですし、強いメッセージにもなると思います。我々ウィーン・フィルが日本の聴衆、パートナーの皆さまと、これまで紡いできたつながりを、一層強化することができると確信しています」(フロシャウアー楽団長)と述べた。

通常の配置と編成でウィーン・フィルの響きを届ける

いま国内外のオーケストラが頭を悩ませているステージ上のソーシャル・ディスタンスをどうとるかという問題についての筆者の質問に対しては、こんな答えがあった。

「私たちは通常の配置で演奏するために、4月の末に独自のエアロゾル拡散テストをおこないました。その結果、弦楽器は通常の配置で演奏しても問題がないということがわかり、楽器によっては、たとえばフルートはエアロゾルが口の周りやサイドに拡散するということが、わかりました。

ですが私たちは定期的にPCR検査を受けております。登場するぎりぎりまでマスクをしております。そういう条件下であれば、通常の配置で問題はないというのが、私たちの至った結論です。

そしてもう一つ大事なこと、あるいはこれはもっとも大切なことかもしれませんが、ディスタンスをとった配置での演奏というのは、明らかにクオリティに影響します。

私たちはウィーン・フィルの響きに対する義務があります。それはウィーン・フィルの創立者たちの意志でもありました。我々は演奏するからには常に最高の音で演奏しなければなりません。お客さまも当然、これこそが愛するウィーン・フィルの響きだという確信をもって聴いてらっしゃるわけです。

ですから、私たちは通常の配置と編成で演奏します。そのためのあらゆる措置をとっております」(フロシャウアー楽団長)

音楽・文化の未来へ道筋を

記者会見を通して感じられたのは、どのような危機的状況においても、文化を、音楽を、決して途絶えさせてはならないという強い決意であり、あらゆる対策を施したうえでウィーン・フィルのクオリティを守るということに対する強い責任感である。

会見中に何度も、「未来への道筋」という言葉が聞かれたのも印象的であった。コロナ禍において、これから音楽界はどうするべきなのか、彼らが今後のことを常に考え続けていることがうかがわれた。

私たちにとって、音楽そして文化がどれほど大切か、ということを皆さまと一緒に共有したい、分かち合いたいと思っています。決して、私たちが演奏して皆さまが聴くだけ、ということではないのです。そうではなく、私たちは同じ感覚、同じ気持ちを共有し、音楽と共に生きる、経験するという時間を分かち合いたいのです」(フロシャウアー楽団長)。

1956年以来、長年重ねられてきたウィーン・フィルの来日公演の歴史においても、今回の来日は、極めて重要な意味を持つことになりそうだ。

8月に公開されたウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ダニエル・フロシャウアー楽団長からのメッセージ動画

取材・文
林田直樹
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林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...

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