イベント
2020.03.18
ヤマハホール/特集「人がホールをつくる」

アーティストの創造性を大切に、多彩な楽器を響かせるヤマハホール

2010年に現在のヤマハ銀座ビルが完成し、新しいヤマハホールが開館してから2月で10周年。日本が世界に誇る楽器メーカーのヤマハは、世界中のアーティストとの強いつながりや、333席の空間を生かし、どんな音楽を聴かせてくれるのだろうか。

ナビゲーター
片桐卓也
ナビゲーター
片桐卓也 音楽ライター

1956年福島県福島市生まれ。早稲田大学卒業。在学中からフリーランスの編集者&ライターとして仕事を始める。1990年頃からクラシック音楽の取材に関わり、以後「音楽の友...

メイン写真:エレガント・タイム・コンサート後のパーティの様子。

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アーティストの創造性を刺激するような企画を

クラシック音楽ファンなら、誰もが一度はその建物を目指したことがあるだろう。それが東京・銀座にあるヤマハ銀座ビルだ。

音楽ファンでなくても、ちょっと足を伸ばした銀座で、その特徴的なビルのデザイン、印象的なウィンドウ・ディスプレイにひかれて、建物の中に吸い込まれるように入ってしまったという方もいるかもしれない。オールド・ファンには懐かしい古いビルが建て替えられ、現在のヤマハ銀座ビルが完成したのが2010年。同時に新しいヤマハホールがオープンした。

客席数は333席。ホールの中は木材がふんだんに使われていて、森の中で音楽を聴いているような雰囲気さえする。

ヤマハの空間音響グループが音響設計したヤマハホール。楽器にも使われる数種の木材を、反響板や壁、椅子などの部分によって使い分けている。ピアノは最高峰のコンサートグランドピアノCFXとベーゼンドルファーのインペリアルなどを所有。

「楽器を作るのに使用される木材を使って、ヤマハの音響設計チームが作り出したコンサート空間です。今年で10周年を迎えますが、演奏家の方からも『音がまろやかになってきましたね』と言われることもあります」

と語ってくれたのは山田美輪子さん(マーケティング統括部・マーケティングプランニンググループ主事)。ヤマハホールで主にコンサートの企画を担当している。

「このキャパシティで、この響きだから、こんな作品を弾きたい。そう言ってくれるアーティストが多いですね。コンサートの企画を考えるときには、そうしたアーティストの創造性を刺激するような、ここでしかできないコンサートを目指しています」(山田さん)

ヤマハのマーケティング統括部・マーケティングプランニンググループ主事の山田美輪子さんは、「ラボのようなチャレンジングな場にしたい」と話す。

多彩な楽器、ジャンルが演奏される

ホールの10周年となる、今シーズンのコンサート・ラインナップも魅力的だ。

例えば、ピアノの小菅優、ヴァイオリンの佐藤俊介、ナチュラルホルンのトゥーニス・ファン・デァ・ズヴァールトという3人が集まるコンサートでは、小菅はベーゼンドルファーのピアノを使用して、ベートーヴェンのピアノ・ソロ曲も演奏する。そしてベートーヴェンの「ホルン・ソナタ」、ブラームスの「ホルン三重奏曲」といった珍しい作品も取り上げられる。新しいヤマハホールの響きとキャパシティだから可能になったコンサートでもある。

「もうひとつの特徴としては、ホールで演奏される楽器の多彩さがあると思います。

終わってしまったコンサートですが、1月には『アコースティックギターフェスティヴァル』を3日間、開催しました。ここにはクラシック、ジャズ、ボサノヴァといった違うジャンルで活躍するギタリストたちが集まってくれました。

これからのコンサートの中では、サクソフォンの田中靖人さん6月13日、クラリネットのマイケル・コリンズさん(6月25日予定)、フルートのマチュー・デュフォーさん7月31日など、管楽器の名手のコンサートもあります。

海外にも拠点を持つヤマハらしい、ネットワークと人脈を活かしたコンサート企画ができる点もこのホールの特徴となっています」

ロンドンを拠点に活躍するクラリネット奏者、マイケル・コリンズは「珠玉のリサイタル&室内楽」シリーズに出演(6月25日予定 ※写真は2018年8月出演時のもの)。

楽器を演奏する人だけでなく、幅広い層を迎えて10周年

ヤマハが昨年新たに制定し発表したブランドプロミスは、「Make Waves」だ。心を震わせる瞬間を意味する言葉で、ヤマハが提供する価値、製品は「個性、感性、創造性を発揮し、自ら一歩踏み出そうとするお客さまの勇気や情熱を後押しする存在でありたい」というところから採用されたという。

「その方向性を意識しながら、コンサートホールがアーティストの創造の場になって欲しいと思い、アーティストと共にコンサート企画を作り上げていくのが、私たちの仕事です」

ヤマハが2019年に発表したブランドプロミス「Make Waves」。

そして、楽器を演奏する人だけではなく、より幅広い層に来ていただくための企画として考えたのが「エレガント・タイム・コンサート」。平日午後のコンサートで、コンサートのあとに、アーティストと交流できる「アフタヌーンパーティー」も開催する。

「銀座の立地を活かして、資生堂パーラーさんなどにもご協力いただき、この企画を考えました。クラシック音楽には馴染みがないという方にも興味を持っていただき、その魅力をより多くの方に知っていただくのも、やはりコンサートホールを企画する側の大事な務めです」

世界的なアーティストの出演、そして多彩なラインナップ。銀座という好立地。2020年は、10周年を迎えるヤマハホールにとっても大事なシーズンになりそうだ。

エレガント・タイム・コンサートは、終演後に、宮田 大、ジュリアン・ジェルネと近くの資生堂パーラーでアフタヌーンパーティを楽しめる。40名限定の特別プラン。※完売

ナビゲーターがオススメする3つの企画

1. 伊藤亮太郎と名手たちによる弦楽アンサンブルの夕べ Vol.3

日時: 9月11日(金)19:00開演

NHK交響楽団のコンサートマスターである伊藤亮太郎が、「ぜひこのメンバーで」と選んだ名手たちと室内楽の名曲を披露する。ベートーヴェンの弦楽三重奏曲、ブラームスの弦楽六重奏曲など、本格的な室内楽プログラム。

2. Elegant Time Concert~上質な時間を貴方に~宮田 大 チェロ・コンサート〜ジュリアン・ジェルネとともに〜

日時: 6月4日(木)13:00開演

ランチタイムに開催されるゴージャスなコンサート。曲目もサン=サーンス「白鳥」、カッチーニ「アヴェ・マリア」など親しみやすい、一度は耳にしたことがある作品に、プーランク、サン=サーンスのソナタを加えている。

3. マチュー・デュフォー・フルートコンサート

日時: 7月31日(金)19:00開演

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、シカゴ交響楽団という世界2大ヴィルトゥオーゾ楽団のトップを制覇したフルーティスト、マチュー・デュフォーの演奏を、わずか333席の親密な音響空間で聴ける貴重な機会。

ヤマハホール

[運営]ヤマハ(株)

[座席数]333席

[オープン]1953年(2010年にリニューアル)

[住所]〒104-0061 東京都中央区銀座7-9-14

[問い合わせ]Tel.03-3572-3171

https://www.yamahaginza.com/hall/

ナビゲーター
片桐卓也
ナビゲーター
片桐卓也 音楽ライター

1956年福島県福島市生まれ。早稲田大学卒業。在学中からフリーランスの編集者&ライターとして仕事を始める。1990年頃からクラシック音楽の取材に関わり、以後「音楽の友...

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