イベント
2022.03.18
ヤマハホール/春の特集「ホールの1年間」

楽器メーカーならではのつながりやカフェとのコラボで多角的に企画!〜ヤマハホール

豊富な楽器や楽譜が集まり、音楽ファンの信頼が厚いヤマハ銀座店。そのビルの7階にあるのがヤマハホールだ。内装には楽器に使われている木材をふんだんに配し、音響の評価も高い。
世界に誇る楽器メーカーであるヤマハとアーティストのつながりを生かした公演や、銀座にふさわしい粋なカフェとの企画とは?

聞き手・文
山崎浩太郎
聞き手・文
山崎浩太郎 音楽ジャーナリスト

1963年東京生まれ。演奏家の活動とその録音を生涯や社会状況とあわせてとらえ、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。『音楽の友』『レコード芸術』『モーストリーク...

カフェとコラボした公演、サン=サーンス没後100th Anniversary カリスマ・バイオリニスト、石田泰尚×10人のヴィルトゥオーゾによるアンサンブル「動物の謝肉祭」(2021年11月)©ヤマハホール

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楽器メーカーならではのつながりから出演者が決まることも

山崎 ヤマハホールではクラシックだけでなく、ジャズなどさまざまなジャンルのコンサートがありますが、主催公演のシリーズを決めるうえで、重視されているポイントをお聞かせください。

山田 ヤマハホールとしては、アーティストと一緒につくりあげていく、アーティストの創造性を大事にするということをいつも意識しています。他でもやっているようなコンサートではなくて、このホールのためにアーティストたちにも一緒に考えていただいて、彼らにとっても新たな挑戦の場となるよう、オリジナリティを出していこうと考えています。

2022年度については、やはり海外の演奏家がお呼びできるかが不安定な状況なので、現時点で発表できるのは邦人の方が多い傾向がありますが、少しずつ海外の方も企画を入れる予定です。

ヤマハホールの企画を担当している、ヤマハ株式会社 マーケティング統括部主事、山田美輪子さん。©️ヒダキトモコ

山崎 コロナ禍の影響ですね。普通の年ですと、もっとバランスをとってということになりますか。

山田 はい。もっと海外の方を多くしています。

山崎 曲目などは、どのように決めるのですか。

山田 ヤマハの楽器を演奏したり、楽器開発の面でご協力くださったりしている演奏家ですと、銀座店に来ていただいたことがあり、ホールのこともご存じだったりもするので、333席のこのホールの響きに合う曲目を考えていただいたりします。特に管楽器のアーティストは日本に特定の招聘元がないことも多く、日頃のヤマハとの関係から、話が決まっていくこともあるんです。

山崎 ヤマハの管楽器を使っていることで、もともと縁ができているんですね。

山田 そうですね。管楽器だけでなく、ピアノ、弦楽器、打楽器などのアーティストもたくさんおられます。この銀座店の裏にあるアーティストリレーションのセクションへ楽器の調整などに来られるアーティストとは、私や技術者の社員との間でこんなものをやってみたいとか、こんなのどうですかという話が出てきて、それをもとに公演を細かく決めていくこともあります。

管楽器の出演者が多いのも、ヤマハホールならでは。写真は「須川展也&田中靖人 サクソフォンデュオ・コンサート〜ピアニスト小柳美奈子と共に〜」(2021年6月12日)©️ヤマハホール

ヤマハ銀座店のカフェで、関連イベントとしてトークショーも

山崎 日本を代表する、世界的な楽器メーカーがもつホールならではの強みがいかされているのですね。今年は5月26日に、バンドネオンの小松亮太さんを中心にしたピアソラの没後30周年記念コンサートがありますね。

山田 小松さんには今までまだご出演いただいたことがなく、初めてお願いしました。ピアソラに関連する音楽家の曲も含めた、小松さんならではの選曲です。また、このホールにあわせて、ピアソラもクラシックもできるアーティストとして、チェロの古川展生さん(東京都交響楽団の首席チェロ奏者)を小松さんにご紹介しました。

バンドネオンの小松亮太(左)とチェロの古川展生が、ピアソラで共演。そのほか、小松さんとの共演が多い近藤久美子(ヴァイオリン)、田中伸司(コントラバス)、熊田洋(ピアノ)が出演。

山崎 いろいろなアーティストが来られている楽器店のつながりが生む共演ですね。これは「Elegant Time Concert」シリーズとして、終演後にはパーティも企画されているとか。

山田 銀座店の1階と2階にカフェ「NOTES BY YAMAHA」ができまして、小松さんと古川さんのお二人のトークショーのような形で、お客さまの質問に答えていただいたり、コンサートの裏話を語っていただいたりする予定です。

またそのカフェでは、セット企画として、ピアソラにちなんだドリンクも販売しています。

山崎 この2種ですね。1階のカフェスタンドではピアソラの代表曲「リベルタンゴ」をイメージした、ノンアルコールのサングリア風ドリンク。

2階のカフェラウンジでは、同じくピアソラの「ブエノスアイレスの冬」をイメージし、アルゼンチン名物のチョコレートベースの「スブマリーノ」をアレンジして、ラズベリーのシャーベットなどを溶け込ませたドリンク。どちらも美味しそうです。

ヤマハ銀座店の1階にあるカフェスタンドのドリンクから、サングリア風の「リベルタンゴ」(左)。
同じく2階にあるカフェラウンジのメニューから、チョコレートベースの「ブエノスアイレスの冬」。©️ヤマハホール

山崎 ホール内のカウンターで、休憩時に演目にちなんだメニューを食べたり飲んだりできる会場もありますが、ホールとは別のカフェで自由に注文できるのは、可能性が広がりますね。

音楽ジャーナリストの山崎浩太郎さん。

山田 他にも、ドイツ・ボンのベートーヴェン・ハウスのワイナリーでつくったワインなど、ヤマハらしく音楽にちなんだメニューがあります。

カフェには以前より若い層のお客さまも増えていまして、ふだんクラシックのコンサートにはあまり馴染みのないお客さまにも、カフェでドリンクの説明を読んだり、写真を撮ってSNSにあげたりすることがきっかけで、 コンサートの存在を知ってもらえればと考えています。コンサートとドリンクをセットにしたチケットも販売しています。

山崎 ピアソラは、タンゴという枠を越えて幅広く聴かれている一方で、クラシックもきちんと学んだ音楽家でしたから、これからクラシックも聴いてみようという方にちょうどよいかもしれませんね。

山崎 他にも、クラシックをこれから聴いていきたい人におすすめのコンサートをあげていただけますか。

山田 8月31日には三浦文彰さん(ヴァイオリン)と清水和音さん(ピアノ)によるブラームスのヴァイオリン・ソナタの演奏会もあります。

同じく8月21日に、仲道郁代さん(ピアノ)がヴァイオリンの岡本誠司さん、チェロの伊藤悠貴さんと共演するベートーヴェンのピアノ三重奏曲もおすすめです。これから活躍する若い方と共演したいという、仲道さんの希望で実現した顔合わせです。2027年のベートーヴェン没後200年に向けて、ピアノ入り室内楽の作品を時代ごとに取り上げ、演奏する企画の初回で、公演の中で解説のトークなどを入れてわかりやすく楽しめる演出を考えています。

8月21日「珠玉のリサイタル&室内楽 仲道郁代 ベートーヴェン “ピアノ室内楽”全曲演奏会 Vol.1」で共演する、ヴァイオリンの岡本誠司(左)とチェロの伊藤悠貴。ベートーヴェン研究の第一人者、平野昭さんが監修。

山田 7月6日の小菅優さん(ピアノ)と佐藤俊介さん(ヴァイオリン)のデュオ・リサイタルは、「第一次世界大戦とクラシック音楽」というテーマなので、こういったテーマや歴史に興味がある方には、音楽以外の面からもより深く楽しんでいただけると思います。このコンサートでは、作曲家たちが戦争の中でも、希望を求めて音楽をつくっていたことを実感できると思います。

ヤマハホール

[運営]ヤマハ(株)

[座席数]333席

[オープン]1953年(2010年にリニューアル)

[住所]〒104-0061 東京都中央区銀座7-9-14

[問い合わせ]Tel. 03-3572-3171

https://www.yamahamusic.jp/shop/ginza/hall.html

聞き手・文
山崎浩太郎
聞き手・文
山崎浩太郎 音楽ジャーナリスト

1963年東京生まれ。演奏家の活動とその録音を生涯や社会状況とあわせてとらえ、歴史物語として説く「演奏史譚」を専門とする。『音楽の友』『レコード芸術』『モーストリーク...

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