インタビュー
2023.11.15
11月14~26日に4年ぶりの来日ツアー

ベルリン・フィル楽団員が語るキリル・ペトレンコ〜リハーサルに熱心、自由を与えてくれる、常に限界突破!

左からエリザベート・ヒルスドルフ(ベルリン・フィル広報部長)、大多亮(フジテレビジョン 専務取締役)、アンドレア・ツィーチュマン(財団法人ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 総裁)、フィリップ・ボーネン(ベルリン・フィル ヴァイオリン奏者、楽団メディア代表、財団役員)、シュテファン・ドール(ベルリン・フィル 首席ホルン奏者、楽団楽員代表、財団役員)

©︎ベルリン・フィル来日公演2023

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ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が4年ぶりに来日し、11月14日より日本ツアーを開始した。11月13日に開催された記者会見では、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団総裁のアンドレア・ツィーチュマン氏、首席ホルン奏者で楽団楽員代表、財団役員のシュテファン・ドール、ヴァイオリン奏者で楽団メディア代表、財団役員のフィリップ・ボーネン、広報部長のエリザベート・ヒルスドルフ氏、フジテレビジョン専務取締役の大多亮氏が登壇し、今回の来日公演について語った。

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今回は57年ぶりとなる高松公演や初開催となる姫路公演を含む6都市10公演、そしてドイツ以外で初開催となる国際コミュニティプロジェクト「Be PhilオーケストラJapan」の開催にも注目が集まる日本ツアー。また、2019年に首席指揮者・芸術監督に就任したキリル・ペトレンコと初の来日ということで、ペトレンコの人柄やベルリン・フィルとの関係についても語られた。

ドール この数年間、私たちはキリル・ペトレンコとともに、オーケストラにとっての核となるレパートリーである交響曲を集中して取り上げてきました。一方で、これまで核とされていなかったレパートリー、例えばスークの作品にも真剣に向き合ってきました。同時に、チャイコフスキーを熱心に取り上げてきまして、オペラを3作品、そして、交響曲2作品は録音もしています。この数年間で、互いに敬意に満ちた関係を築いてきました。

今回のプログラムであるブラームスの4番、そして《英雄の生涯》は、これまでにペトレンコとは複数回演奏してきました。しかし、例えばブラームスの4番に関しては、前回演奏したときには、まだコロナ禍でディスタンスを取った状態での演奏でしたので、そういう意味でも違いがあります。

リヒャルト・シュトラウスは、今年はオペラ《影のない女》も取り上げています。今、キリル・ペトレンコほど、シュトラウス作品を厳密に、丁寧に解釈し、リハーサルから取り組む指揮者は他にいないのではないかと思います。同じことが、《英雄の生涯》にも言えます。もちろん、この作品は私たちが何十年にわたって演奏してきた 作品ではありますが、それでも毎回新しい知見に満ちています。

ブラームスのプログラムの前半は、モーツァルトの交響曲とベルクの《管弦楽のための3つの小品》です。オーケストラにとって、モーツァルトはいつでも演奏したい作品です。難しい作品ではありますが、私たちに喜びをもたらしてくれる作品でもあります。ベルクに関しては、これは来年のシェーンベルク・イヤーに向けての準備と言える選曲です。来年は、《ヤコブの梯子》や室内交響曲を取り上げる予定になっていまして、重点的にシェーンベルクを取り上げる年となっています。

そして、2つ目のプログラムの前半に演奏するレーガーには縁があります。マイニンゲンという地名によって結び付いています。というのは、マイニンゲンの宮廷楽団 でレーガーが指揮者を務めていまして、その当時、この作品をその管弦楽団に献呈したからです。そして、ペトレンコもマイニンゲンで指揮者を務めていましたし、また、リヒャルト・シュトラウスもこのマイニンゲンの宮廷管弦楽団のカペルマイスターを務めていました。

この4年間のペトレンコと私たちオーケストラの共同関係の成果を皆様に日本で披露できることは、私たちにとって本当に大きな喜びです。日本の聴衆の皆様は、私たちが愛してやまない聴衆の皆様ですので、 ここに来られて、皆様に聴いていただけることが、私たちにとっても本当に大きな喜びです。

シュテファン・ドール
©︎ベルリン・フィル来日公演2023

ドール とにかくマエストロ・ペトレンコは、徹底してリハーサルを行なう方で、リハーサルをしながら、音楽の中から通常では聴かないようなことを聴き取る方です。そして、やりたいことがたくさんある方です。細部に至るまで、音楽の中から汲み取るというか、聴き取るというか、そういうところが特別だと思います。

そのリハーサルの結果、実際にコンサートで彼を見ていると、ずっと楽しんでるということが伝わってくるんですね。単に厳密に、精密に演奏するだけではなく、あらゆる可能性をオープンにして、私たちを自由にしてくれます。指揮者としては、指揮の可能性を全部持ったまま、私たちに自由を与えてくれます。

そして、常にあれだけ微笑みを浮かべながら楽しそうに指揮をする方というのはそうそういないと思うんですけれども、見ているだけでも喜びが伝わってきます。

ボーネン ドールさんがおっしゃった通りですが、私も、 ペトレンコさんの素晴らしさというのは、徹底したディテールに対する愛情と同時に自由にさせるという、その両者がいい形で組み合わさっていることだと思います。すべてに対してオープンで、オーケストラから出てくるものもきちんと汲み取り、それを絶妙な形でつなげる、結び合わせる。そういう卓越した技を持っていらっしゃる方です。

そして、私がすごくいつもワクワクするのは、ペトレンコさん自身が持っている、その個人的な響きのイメージというものが、ちゃんとオーケストラに浸透するということです。今後も彼と一緒に音楽を奏でていくことが本当に楽しみです。

フィリップ・ボーネン
©︎ベルリン・フィル来日公演2023

ツィーチュマン 今まで、リハーサルが予定時間よりも早く終わったことが1度もありません。 マエストロ・ペトレンコは、少しでもいいからリハーサルの時間を長く取りたいという気持ちであふれています。つい先日、ソウルでのリハーサルも1時間半たっぷり時間があったにもかかわらず、それでは足りず、結局5分くらい長引きました。私から見ても、常に限界を突破しようと試みているのだと伝わってきます。

ツアーが始まる前に、あらゆるダイナミクスのレンジを突破したい、極限までいきたい、あらゆる響きの色合いや音色を試したいとおっしゃっていました。そして、いい方向に向かっているとのことです。

また、音楽的に素晴らしいのは言うまでもありませんが、本当に人間性も素晴らしい方です。彼にとっては、スコアこそが、楽譜こそがバイブルなんです。とにかく作品に対して忠実で、スコアに書かれていることにどこまでも真摯に向き合う方です。皆さんにお見せするわけにはいかないのですが、彼のあのスコアを見ると、どれだけ厳密に準備をしているかということがわかると思います。

一方で、社会的なテーマに対してのひじょうに真剣に向き合い、大きく貢献をしているという点でも素晴らしい方です。その1つの例が、今回のBe Philコミュニティプロジェクトですが、他にもエデュケーション・プログラムにも熱心に取り組み、国連の難民支援などにも積極的に関わっていらっしゃいます。芸術家としての素晴らしい面に加え、社会貢献をする方であるという、2つの側面を合わせ持っている本当に素晴らしい方です。

ドール オーケストラの伝統というのは、フレージングや呼吸など、私たちが数十年かけて培ってきたものだと思います。その伝統は今後も変わらず残るでしょう。

そして、世代交代というのは、常にオーケストラに新しい刺激をもたらしてくれることだと思います。定年を迎える方がいれば、その代わりに新しく入ってくる方がいる。昨今、素晴らしい方ばっかり入ってくるんですけれども、そうした優秀な新しい世代の音楽家が入ってくるというのは、とてもフレッシュな刺激をもたらしてくれます。

そこに首席指揮者として素晴らしい指揮者がいるということは、全体にとっていい効果になっていると思います。マエストロ自身が自分の限界を突破したいと常に思っていらっしゃる方で、 今までよりももっと大きな音で、小さな音で、もっと長く、短く……常にその境界を超えていこうという意志を持っている。そのような方が首席指揮者として前に立っていることから生まれる新しいものは常にあると思います。

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