インタビュー
2024.08.10

橋本阿友子さん×町田樹さん特別対談 #4(最終回) 文化とAIの関係に未来はあるか

音楽著作権が専門の弁護士・橋本阿友子さんと、元フィギュアスケートオリンピック選手で國學院大學准教授の町田樹さんが、フィギュアスケートに欠かせない音楽と著作権の関係を中心に語り合う特別対談。最終回となる今回は、AI時代における著作権の意味について熱く語っていただきました。

取材・文
坂口香野
取材・文
坂口香野

ライター・編集者。東京都八王子市在住。早稲田大学第一文学部美術史専修卒、(株)ベネッセコーポレーションを経てフリーに。ダンス関係を中心に執筆。盆踊りからフラメンコまで...

写真:松谷靖之

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AIがつくった楽曲の著作権はどうなる?

町田 橋本先生は昨年までミュンヘンにあるマックス・プランク知財研究所に留学されています。著作権に関して、ヨーロッパでいちばんホットな議論は、AIに関することでしょうか?

橋本 そうですね。ヨーロッパで参加した学会では、そのほとんどがAIに関するテーマでした。私は昨年12月に、日本のJASRACのドイツ版であるGEMAという組織にインターンシップをしたのですが、AI楽曲の管理等については話題になっていましたね。

町田 テンポやキー、音楽のジャンルを指定するだけで、AIに作曲してもらえるサービスがすでにありますよね。現在、AIが生成したものに著作権はないとされているから、AIにつくらせた音楽を「自分の作品です」ということも可能ですし……。

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橋本 ええ。AI作品を自作だということも、商用利用も、著作権法違反とはされていません。また、JASRACのような管理側からみると、自作だと言って届け出られた楽曲が完全なるAI作品だと疑われる場合でも、創作にAIを使用したかどうかの証明もやっかいです。

AIによる作曲や映像制作のサービスの開発にあたって、大量に既存の音楽や映像作品を学習させている場合があります。AIがつくった楽曲や映像、音声に、現在活躍中のアーティストの作品が無断で使われていることがわかって問題となる、といったことも起きている。AIに自分の作品を学習されたくない、というアーティストも少なからずいるでしょう。

しかし、日本では情報解析目的であれば、原則として、合法的に、商用利用も含めて著作物を利用できます。ヨーロッパで参加した学会でも、この面で日本の著作権法の規定が紹介されることも多かったように思います。著作権の切れたパブリックドメインの作品しかAIに学習させないという方法もあり得ますが、実際に規制するのは、なかなか難しいのではと感じますね。

橋本阿友子(弁護士・骨董通り法律事務所)
京都大学法学部卒業、京都大学法科大学院修了。マックス・プランク知的財産研究所(Max-Planck-Institut für Innovation und Wettbewerb)客員研究員(2023年)。ベーカー&マッケンジー法律事務所を経て、2017年3月より骨董通り法律事務所に加入。東京藝術大学・神戸大学大学院非常勤講師。上野学園大学器楽コース(ピアノ専攻)に編入し、2022年3月に芸術学士を取得した後、ドイツ留学中に、エコールノルマル音楽院にて研鑽を積む。国内外のピアノコンクール受賞歴を持つ自身の音楽経験を活かし、音楽著作権を中心に、幅広いリーガルアドバイスを提供している。エンタテインメントに関する法律問題について、骨董通り法律事務所のウェブサイトにおいて、随時コラムを公開している。
https://www.kottolaw.com/attorneys.html

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