「固定観念を打ち砕く」名手シヴァン・マゲンにきく ハープを含む室内楽の音世界
毎年6月にサントリーホールのブルーローズ(小ホール)で展開される国内最大規模の室内楽の祭典「チェンバーミュージック・ガーデン」。その中でもひときわ異彩を放つのが、ハープの入った室内楽グループ、イスラエル・チェンバー・プロジェクトの初来日公演です。キーパーソンともいえるシヴァン・マゲンは、現代有数のハープの名手であり、この楽器の未知の可能性を切り拓くカリスマ。その氏に、今回の公演で体験できるハープの入った室内楽の新しい響きの世界について、じっくり伺いました。
ニューヨークのクラシック音楽エージェント、エンタテインメント会社勤務を経て、クラシック音楽を中心としたパフォーミング・アーツ全般について執筆、日本の戯曲の英訳も手掛け...
今年6月、イスラエルとニューヨークを拠点とする室内楽グループ、イスラエル・チェンバー・プロジェクト(ICP)が、サントリーホール主催の「チェンバーミュージック・ガーデン2025」に出演し、待望の初来日を果たす。弦楽器に加え、ハープ、クラリネット、ピアノを含む、伝統的な室内楽グループと一線を画するメンバー構成を持つICPは、各メンバーが独自の音楽活動を展開しながら、新作委嘱を含む多彩なレパートリーを追求し、2007年から活躍を続けている。
この3月、そんなICPコアメンバーの一人、ハーピストのシヴァン・マゲンにお話を伺うことができた。
ニューヨーク・タイムズ紙に「並外れた音域を持つハープ奏者」「その輝かしい音色と卓越した技術が、ハープに対するあらゆる固定観念を打ち砕く」と評されたシヴァン・マゲンは、イスラエル国際ハープ・コンテストで優勝した唯一のイスラエル人であり、プロ・ムジチス国際賞とボレッティ=ブイトーニ・トラスト賞も受賞している。2017年秋にはフィンランド放送交響楽団の首席ハープ奏者に任命され、2023年夏からはベルリンのハンス・アイスラー音楽大学でハープ科の教授を務めている。
シヴァン・マゲンは、リサイタルやオーケストラのソリストとして、アメリカ、南米、東アジア、ヨーロッパ、イスラエルの各地で、カーネギーホール、ウィグモアホール、シドニーオペラハウス、ウィーン・コンツェルトハウスなどに出演。また、イスラエル・フィル、タンペレ・フィル、ストラスブール・フィル、フィンランド放送響、セントポール室内管、ウィーン室内管、スコットランド室内管、シドニー響、エルサレム響、イスラエル響などのオーケストラと共演。
熱心な室内楽奏者でもあるマゲンは、マールボロ、アスペン、ローセンダール、クフモ、デルフト、エルサレム国際室内楽音楽祭に出演。受賞歴のあるイスラエル・チェンバー・プロジェクトと、マリーナ・ピッチニーニ(フルート)、キム・カシュカシャン(ヴィオラ)とのトリオ・トレ・ヴォーチの創設メンバーでもある。
リン・レコードから2枚のソロアルバムをリリースしているほか、アヴィー、アジカ、コッホ・インターナショナル、ECMへの録音や、マールボロ音楽祭の音楽家たちとの録音で高い評価を得ている。
オンディーヌからの最新録音は、フィンランド放送響からの委嘱作品であるロッタ・ヴェンナコスキのハープ協奏曲「Sigla」で、このアルバムは、2023年のグラモフォン賞「現代音楽」部門を受賞した。
©Maarit Kytöharju
ハープは他の楽器にはない特別な要素を音楽にもたらす
イスラエル国際ハープ・コンテストで優勝した唯一のイスラエル人であるマゲンは、ニューヨーク・タイムズ紙に「その輝かしい音色と卓越した技術が、ハープに対するあらゆる固定観念を打ち砕く」と評されるなど、繊細、優しい、心地よいといった紋切り型のハープのイメージを超えた、美しくもパワフルな演奏で知られる。
マゲン「幼い頃、なぜハープを弾きたいと思ったのか、よくわからないのですが、ハープには何か魔法のようなものを感じていました。(共にチェロを弾く)両親がハープについて何も知らず、口を出されることなく、私だけのものとして挑戦できたことも楽しかったのだと思います。でも年月を重ねるうちに、音のコントロール、色彩、響きの点で、他の楽器にはない特別な要素を音楽にもたらすハープ特有の魅力を、ますます深く理解するようになりました」
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