ショパンコンクール審査員ジョン・アリソン「同じ作曲家、同じ曲だからこそ、その演奏者らしさが見える」
第19回ショパン国際ピアノコンクールで審査員ジョン・アリソン氏にインタビュー! 国際的な音楽学者であり、オペラ専門誌『Opera』の編集長を務めるアリソン氏。長年にわたって数多くの国際コンクールで審査員を務めてきた視点から、ショパンコンクールならではの特徴やショパンの魅力、「ショパンらしい演奏」について語ります。
フランス文学科卒業後、大学院で19世紀フランスにおける音楽と文学の相関関係に着目して研究を進める。専門はベルリオーズ。幼い頃から楽器演奏(ヴァイオリン、ピアノ、パイプ...
ショパンコンクールが“モノグラフィック”であることの意義
——これまで多くの演奏家やコンクールを審査されてきましたが、ショパン・コンクールならではの特別な点はどこにあると思われますか。
アリソン もちろん私としては、ショパンコンクールは世界でもっとも偉大な音楽コンクールだと思っていますが、そのうえで、ほかのどのコンクールとも異なる点は、非常に焦点が絞られていること、つまりモノグラフィック(一人の作曲家に特化)であることです。もちろん幅広いレパートリーやスタイルにまたがって演奏を聴けることにも意義はありますが、ここでの集中性は、より精緻な判断を可能にする助けにもなります——もっとも、最終的にはあらゆることが主観的であることは重々承知していますが。
南アフリカ・ケープタウン生まれ。ピアノやオルガンを学び、ケープタウン大学で音楽学博士号を取得。『タイムズ』『サンデー・テレグラフ』の音楽批評を務め、『ニューヨーク・タイムズ』など世界各国の主要紙にも寄稿。現在はオペラ専門誌『Opera』編集長として活動し、オペラやピアノ音楽、中央・東欧の音楽を専門とする。
国際音楽コンクールの審査員を多数務め、2022年・2025年にはワルシャワのモニューシュコ国際声楽コンクール審査委員長を歴任。著書や学術誌への寄稿も多く、2013年には国際オペラ賞を共同創設した。
アリソン モノグラフィックであることには、大きく2つの意義があります。まず、ショパンを見事に演奏するためには、ピアニストとして非常に高い芸術性が求められること。さらに、ショパン自身がピアノのレパートリーにおいて、唯一無二の中心的存在であることです。彼の作品を本当に素晴らしく演奏できる人は、モーツァルトやスカルラッティ、バッハを弾くのに必要な明晰さを備えると同時に、ラフマニノフやプロコフィエフを弾くためのヴィルトゥオジティも持ち合わせているでしょう。
そしてショパン・コンクールの特長といえば、その比類なき歴史のことも思い浮かびます。歴代の受賞者やファイナリストを振り返ると、ほかのコンクールではなかなか感じられないほどの畏敬の念を抱かされます。
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