指揮者・山田和樹、ベルリン・フィルとの共演を振り返る「生命力のキャッチボール」
2025年6月12、13、14日、指揮者の山田和樹さんがベルリン‧フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会に登場しました。日本人指揮者としては、佐渡裕さん以来、14年ぶりの快挙。世界最高峰のオーケストラを前にしても、気負わずに音楽を作り、会場をスタンディング・オベーションで沸かせた山田さん。最終日の翌日、ベルリンのカフェで、この人生の節目となる3日間を振り返っていただきました。
1975年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、2000年よりベルリン在住。著書に『新装改訂版 ベルリンガイドブック 歩いて見つけるベルリンとポツダム...
2009年第51回ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝。ほどなくBBC響を指揮してヨーロッパ・デビュー。同年、ミシェル・プラッソンの代役でパリ管を指揮して以来、破竹の勢いで活躍の場を広げている。2012~18年スイス・ロマンド管の首席客演指揮者、2016/17シーズンからモンテカルロ・フィル芸術監督兼音楽監督、2023年4月からバーミンガム市響首席指揮者兼アーティスティックアドバイザーを務め、その後、2024年5月には同団音楽監督に就任。2026/2027シーズンより、ベルリン・ドイツ響首席指揮者兼芸術監督に就任予定。日本では、東京混声合唱団音楽監督兼理事長、学生時代に創設した横浜シンフォニエッタの音楽監督として活動、2026年4月1日より東京芸術劇場の芸術監督(音楽部門)に就任予定。
サンタ・チェチーリア国立アカデミー管、トゥールーズ・キャピトル国立管、フランス国立管への定期的な客演のほか、近年は、ベルリン・フィル、ミラノ・スカラ座フィル、スウェーデン放送響、クリーブランド管、ニューヨーク・フィル、サンフランシスコ響にデビュー。
教育活動にも熱心で、小澤征爾スイス国際アカデミーに毎年ゲスト・アーティストとして招かれている。また、バーミンガム市響のアウトリーチ・プログラムにも力を入れている。
東京藝術大学指揮科で松尾葉子・小林研一郎の両氏に師事。出光音楽賞、渡邉暁雄音楽基金音楽賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞、第56回サントリー音楽賞など受賞多数。2022年には、モナコ公国からシュバリエ文化功労勲章を受章。ベルリン在住
ずっと応援してくださった方々の存在を肌で感じていた
——3日間におよぶベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のデビュー公演が終わりました。リハーサルから昨晩の最終日まで、今回のいわば総括的なお話を伺えたらと思っています。
山田 これは書いていただいてもいただかなくてもいいのですが、公演初日(6月12日)の朝に、僕の祖母が亡くなりまして。先日ちょうど100歳になったばかりでした。昨日の最終日の公演後に、そのことをベルリンに来ていた母から知らされました。もうとっくに覚悟はしていて、大往生ではあるのですが。
——そうだったのですね。
山田 祖母は三味線の先生でした。僕はおばあちゃん子で、自分の音楽家としてのルーツもそこにあるのかもしれません。両親は音楽家ではないですから。初日の朝に亡くなったというのは運命的というか、リハーサルまでは見届けてもらえた。訃報を知ったのは公演が終わってからだったのですが、なんとなくそんな気もしていたんですよね。
この1週間は人生の節目にもなるような忘れられない時間で、祖母をはじめ、ずっと応援してくださった方々の存在を肌で感じていました。日本から応援団がたくさん来てくださいましたし、NHKやデジタル・コンサートホールの中継を観てくださった方、録画してくださった方もそう。僕の財産ですね。
(ライブ中継された)最終日は舞台に出て振り始める前に、いつにも増して応援してくれている人が多いのを感じました。オーケストラもこの日はひときわ気合が入っていました。もちろん、初日からすごかったのですけれど。
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