反田恭平のコンクールという“バトル”で勝利をおさめる秘訣とは?
特集「バトル」に欠かせないのは、コンクールの話。10月に行なわれた第18回ショパン国際ピアノコンクールで、大変なプレッシャーのなか第2位に入賞した反田恭平さんに、勝つためにどんなことをしてきたのか伺いました。
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
6年前にショパン国際ピアノコンクールへの挑戦を決めてから、コンクールでの成功にむけて、綿密な戦略を練ってきたという反田恭平さん。その努力が実り、今回、見事音楽を通じた「バトル」に勝ち、51年ぶりの日本人最高位である第2位入賞を果たしました。
そんな反田さんに、コンクールに勝つための秘訣はなにか、尋ねてみました。
反田恭平が立てたショパンコンクールの戦略とは?
反田 人それぞれだとは思いますが、僕の場合、この6年間コンクールから離れていて参加経験がなかったので、いろいろなリスクを背負って受けるという覚悟がありました。そこで、出るのであれば、計画、戦略をたてること、調べることが大事だと思いました。面倒でそういうことはできないという人もいるかと思いますが、僕はそういうことをするのが好きだし、実際やっていても楽しかったですからね。
プログラムに関しては、2010、2015年のコンクールでどんな曲が弾かれてどう評価されたのかを一つずつ数え、それを考慮に入れて組んでいきました。審査員の国別の割合も調べました。
また、審査員たちがどういう音源を残しているのかも、もちろん調べています。
例えば、クシシュトフ・ヤブウォンスキさんが《アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ》をどんなふうに演奏するのかも、聴いています。
もともとこの曲については、映画『戦場のピアニスト』のピアノを担当しているヤヌシュ・オレイニチャクさんの、映画のエンドロールで流れる演奏を聴いて、これをワルシャワ・フィルハーモニーホールで弾きたい! と思ったという経緯があります。お二人の演奏を聴き比べると、同じポーランド人でも差があるんですよね。
クシシュトフ・ヤブウォンスキさんのショパン《アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ》
ヤヌシュ・オレイニチャクさんのショパン《アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ》~映画『戦場のピアニスト』より
1985年のショパン国際ピアノコンクールで入賞。2004年から2017年にかけてはワルシャワのフレデリック・ショパン音楽大学の教授を務めた。第18回ショパン国際ピアノコンクール審査員。
18歳で第8回ショパン国際ピアノコンクールに入賞。演奏のほかにも、NHKとポーランド国営放送局が共同制作した番組でもショパン役を演じるなど、ショパンを語る上で欠かせない。©Bruno Fidrych
反田 あと、ヴォイチェフ・シヴィタワさんの演奏も、僕は大好きなんです。彼の《マズルカ風ロンド》を僕は大尊敬していて、演奏にあたっては彼からインスピレーションをたくさんもらいました。87人のコンテスタントの中で、《マズルカ風ロンド》を選んでいた人はただでさえ少ないと思いますが、そのなかでヴォイチェフさんが録音を残していることを知っている人はほとんどいないのではないかと思います。
コンクールの最後のレセプションのとき、ヴォイチェフさんに直接、「エキエル版の表紙がジャケットにのっているCDの中のあなたの《マズルカ風ロンド》が、世界で一番大好きです」と、やっと直接伝えることができました。そうしたらものすごく喜んでくださって、“君はもう、私よりうまいよ”って、さらっとかっこいいことをいってくれて。そんなことないです、あなたを越せるようにがんばります、と言ったんですけれど。
ヴォイチェフ・シヴィタワさんが弾くショパン《マズルカ風ロンド》
第12回ショパン国際ピアノコンクールでポロネーズ賞など受賞。ショパン研究所での録音ではBBCクラシックから最高の評価を受けている。2014年ショパン研究所のプログラム委員会に就任。©Slawomir_Berganski
反田 今回はショパンのみのコンクールだったので、ショパンの音源だけ見ていけば良いので調べやすかったですが、これがチャイコフスキーやエリザベートなど他のコンクールだったらまた少し違ってきますね。
コンクールごとに毛色が違います。その傾向は、ある程度勉強するほうがいいのではないでしょうか。僕は、綿密な計画をおすすめします。
ショパンコンクール 第2位 反田恭平〜6年間かけて練ってきた戦略、勝因とは?
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