インタビュー
2025.08.13
舞台人が語る「WE LOVE MUSICAL!!」第14回

岡宮来夢「ミュージカルの魅力は歌にある!」~『四月は君の噓』で憧れていたピアニスト役に

注目の舞台人が、ミュージカルの魅力を語る連載。第14回はクラシック音楽家をめざす高校生たち青春を描くミュージカル『四月は君の嘘』に主演する、岡宮来夢さんが登場。『ロミオ&ジュリエット』のロミオ役、『1789 -バスティーユの恋人たち-』のロナン役などで活躍する岡宮さんが、天才ピアニスト役への思いや好きなクラシック、ミュージカルの魅力について語ります。

取材・文
弓山なおみ
取材・文
弓山なおみ ライター/コラムニスト

フランス留学後、ファッション誌『エル・ジャポン』編集部に入社。その後『ハーパース バザー』を経て、『エル・ジャポン』に復帰。カルチャー・ディレクターとして、長年、映画...

写真:鬼丸隼人

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ミュージカル『四月は君の嘘』は、クラシック音楽をテーマにした青春ラブストーリー。「神童」と呼ばれた天才ピアニストの有馬公生(岡宮来夢・Wキャスト)は、指導者である母の死がきっかけで、自分のピアノの音が聞こえなくなる。だが、高校で個性的なヴァイオリニストの宮園かをりと出会い、心に変化が訪れて……。

原作は新川直司の大ヒット漫画。舞台版は2022年に日本発オリジナル・ミュージカルとして開幕し、ロンドン、韓国での海外公演を経て、3年ぶりの再演となる。音楽は『ジキル&ハイド』『ケイン&アベル』などで知られる作曲家フランク・ワイルドホーンが担当し、2025年8月23日から昭和女子大学人見記念講堂で上演される。

役作りのためにピアノも特訓中!

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——ミュージカル『四月は君の嘘』に出演が決まったときのお気持ちは?

岡宮 嬉しかったです。これまでは『進撃の巨人』や『ロミオ&ジュリエット』など、少し現実離れした世界観の作品が多かったのですが、今回は高校生役なので、より自分に近いキャラクターです。初めての学園ものというのも新鮮ですし、そのぶん、より丁寧に、繊細に役に向き合いたいと思っています。

——本作は海外でも高く評価された日本発ミュージカルの再演です。初演をご覧になった際の感想を教えていただけますか?

岡宮 初演を観たときは、胸が締め付けられるような切なさや儚さ、そして桜が一瞬で咲いて散るような美しさを感じました。原作やアニメ、映画を知らない状態で観劇したので、1幕のラストでは「これからどうなるんだろう?」と、休憩なしで2幕も続けて観たくなるほど引き込まれました。キャストの皆さんの演技も素晴らしくて、自分が観劇した回に出演していた小関裕太さんや、生田絵梨花さんらが苦しさを押し殺しながら明るく演じる姿に、心を打たれました。

岡宮来夢(おかみや・くるむ)
1998年4⽉23⽇、⻑野県出⾝。2015年、第28回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト準グランプリ。2019年、ミュージカル『刀剣乱舞』で注目を集め、現在はミュージカル俳優として活躍中。ミュージカルの代表作として、『SPY×FAMILY』『ロミオ&ジュリエット』『進撃の巨人 -the Musical-』『1789 -バスティーユの恋人たち-』など。

——『四月は君の嘘』のミュージカルとしての魅力をどこに感じていますか?

岡宮 ワイルドホーンさんの楽曲がとても心に響きました。初演舞台のCDは日本でいちばん聴いているんじゃないかと思うほど好きで、今回、自分が歌えることが本当に幸せです。とくに冒頭の「僕にピアノが聞こえないなら」は、観客を一気に作品世界に引き込む力があって。舞台セットはピアノ1台ととてもシンプルなのですが、生バンドとキャストの表現や熱量で、「これはすごい作品が始まるぞ」という高揚感がダイレクトに伝わってきます。切ないシーンで歌う「時間よ、止まれ」という曲も大好きなので、早く稽古がしたいです。

——天才ピアニスト・有馬公生役を演じるために、準備をしたことは?

岡宮 ピアノは経験がなかったんですけど、以前ファンクラブでBUMP OF CHICKENさんの『花の名』を独学で披露したことがあり、演奏する楽しさを感じました。有馬公生は天才ピアニスト役なので、普段からスタジオでピアノに触れたり、あと、Wキャストの東島君がとても上手なので、わからないことは聞きながら練習しています。

とにかく練習を重ねてプレッシャーに打ち勝つ

——厳しい指導者だった母を亡くして、ピアノを弾けなくなってしまった公生についてどう思いますか?

岡宮 公生も幼い頃は「お母さん、弾けたよ!」と素直に楽しんでいたと思うのですが、厳しい訓練やプレッシャーを受けて、追いつめられてしまったのかなって。僕自身も、歌については最初は楽しんでいたのですが、責任やプレッシャーで苦しくなったり、楽しめなくなったりする時期がありました。だから、公生の気持ちにはすごく共感できます。

——岡宮さんは、「歌」へのプレッシャーをどのように乗り越えたのですか?

岡宮 自分の場合は、とにかく「できるまで練習するしかない」と思ってやってきました。舞台に立つときは「ここまで自分は準備してきたんだ」という自信を支えに、それを信じるようにしています。ストイックに練習を重ねていますが、最近はその過程自体が楽しいと思えるようになってきています。

前回の公演『1789 -バスティーユの恋人たち-』はフレンチロックミュージカルで、ドーブ・アチアさんの楽曲を歌いこなすのはとても難しかったです。でも、楽譜を研究しながら役作りすることがすごく楽しかったですし、「人を感動させる曲は単にメロディラインが美しいだけではないんだ」という気づきもあり、音楽の奥深さを強く感じました。

——新たなキャストと迎える稽古場の雰囲気を教えていただけますか?

岡宮 今回は本当にフレッシュで若いメンバーが多いんです。演出の上田一豪さんとは『ファンタスティックス』以来ですが、本当に優しくて面白い方で、当時の稽古場もとても楽しい雰囲気だったんです。今回もそうなると思いますし、僕も座長としてみんなが楽しい現場作りができるように尽力したいです。

子どもの頃からリズム感には定評あり!

——次に、岡宮さんが思う「ミュージカルの舞台」の最大の魅力は?

岡宮 やっぱり歌があることです。作品ごとにまったく違う音楽性があって、観客も俳優も音楽に引っ張られて別の世界に連れていかれる体験ができます。たとえば『ロミオ&ジュリエット』だと、「世界の王」という曲で一気に盛り上がり、「僕は怖い」が始まると空気がガラりと変わる——その落差がすごく魅力的なんです。『四月は君の嘘』は、春のような爽やかさや青春のきらめき、疾走感を音楽から感じてもらえると思います。

——これまでの舞台人生の中で、ご自身の転機や大きな影響を受けた作品は?

岡宮 人生を変えたミュージカルはいくつかありますけど、一つは『ダンス オブ ヴァンパイア』です。初めて帝劇のグランドミュージカルを見たのがこの作品で、「いつか必ずあの舞台の真ん中に立ちたい」と思うきっかけになりました。

自分が演じるのが夢になった役は、『四月は君の嘘』の有馬公生、『キンキー・ブーツ』のローラ、『モーツァルト!』のヴォルフガングです。また、『ロミオ&ジュリエット』にはずっと出たかったので、夢が叶ったときは本当に嬉しかったです。

——クラシック音楽で好きな楽曲があれば教えてください。

岡宮 ヴィヴァルディの《春》は、聴くと明るい気持ちになるので大好きです。あと、シューベルトの「魔王」も、音楽の授業で習って惹かれました。小学校の担任の先生が音楽の先生だったので、音楽会では《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》やヘンデルの「ハレルヤ」を演奏しました。

「リズム感がある」と褒めてもらい、2年生のときはグロッケン、3年生ではスネアをオーディションで勝ち取り、5、6年生では木琴を担当。みんながあまり練習をしないのに、僕は音楽室でたくさん練習していたので、先生が選んでくれたのかもしれません(笑)。

——日頃よく聴く音楽やお気に入りのアーティストは?

岡宮 ビリー・ジョエルの「ピアノマン」やヨルシカさんの「花に亡霊」、久石譲さんの曲をよく聴いています。久石譲さんは大好きな作曲家で、夏になると「summer」が聴きたくなるし、『千と千尋の神隠し』で“ハクが空を飛ぶシーン”の「ふたたび」も好きです。「The Rain」のMVも部屋を暗くしてじっくり観たくなります。いつか久石さんの東京ドーム公演に行ってみたいですね。

久石譲「The Rain」

——今日はいろいろなお話をありがとうございます。最後に、ミュージカル『四月は君の嘘』を楽しみにしている観客の皆さんへ、メッセージをお願いします。

岡宮 この作品は僕にとって、いつか必ず演じてみたいと心から願っていた特別な作品であり、大切な役です。音楽に携わる方もそうでない方も、“好きなことが楽しくなくなってしまった”とか“挫折した体験”、“大切な人を失った悲しみ”など、きっと共感できる部分があると思います。ONTOMOの読者の方には、おなじみのクラシックの名曲をお楽しみいただけます。絶対に後悔させませんので、ぜひ劇場にお越しください!

公演情報
ミュージカル『四月は君の嘘』

【東京公演】
日程: 2025年8月23日(土)~9月5日(金)
会場: 昭和女子大学人見記念講堂

【愛知公演】
日程: 2025年9月12日(金)~9月14日(日)
会場: Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール

【大阪公演】
日程: 2025年9月19日(金)、20日(土)
会場: 梅田芸術劇場メインホール

【富山公演】
日程: 2025年10月4日(土)、5日(日)
会場: オーバード・ホール 大ホール

【神奈川公演】
日程: 2025年10月12日(日)、13日(月祝)
会場: 厚木市文化会館 大ホール

出演:
有馬公生 岡宮来夢、東島 京(Wキャスト)
宮園かをり 加藤梨里香、宮本佳林 (Wキャスト)
澤部 椿 希水しお、山本咲希(Wキャスト)
渡 亮太 吉原雅斗、島 太星(Wキャスト)
ほか

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取材・文
弓山なおみ
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弓山なおみ ライター/コラムニスト

フランス留学後、ファッション誌『エル・ジャポン』編集部に入社。その後『ハーパース バザー』を経て、『エル・ジャポン』に復帰。カルチャー・ディレクターとして、長年、映画...

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