日生劇場〜劇場はコミュニケーションの広場! 子どもから大人まで幅広い年代に贈る舞台の数々
赤い絨毯を通り、扉を開ければ、そこは別世界......オペラ、ミュージカルなどあらゆるジャンルの舞台を上演する日生劇場は、青少年の「最初の舞台体験」も応援してきました。さまざまな年代に向けた舞台を上演する「日生劇場ファミリーフェスティヴァル」やオペラを通じて、子どもたちに感じてほしいこととは? 演出家で日生劇場の芸術参与である粟國淳さんにインタビュー!
東京藝術大学大学院修士課程(音楽学)修了。東京医科歯科大学非常勤講師。オペラを中心に雑誌やWEB、書籍などで文筆活動を展開するほか、社会人講座やカルチャーセンターの講...
日生劇場は、1963年、日本生命保険相互会社が創業70周年を記念して建設した日本生命日比谷ビルの中につくられました。設計したのは20世紀を代表する建築家の村野藤吾。
一歩足を踏み入れると、その豪華な空間に目を奪われます。特に劇場に至る階段に敷かれた赤い絨毯は、「これから特別な時間が始まる」という期待を嫌が上にも膨らませてくれます。劇場の内部は壁も天井もすべて曲面で構成され、天井に貼られた2万枚ともいわれるアコヤ貝は実に幻想的。
そんな日生劇場では、小学生や中学・高校生対象の芸術鑑賞教室や、親子向けの「日生劇場ファミリーフェスティヴァル」を実施するなど、「青少年の豊かな情操の育成」を大きなテーマとして掲げています。小学校向けの「ニッセイ名作シリーズ」が最初の舞台体験で、中学・高校時代には「日生劇場オペラ教室」で初めてオペラを観た、という人も多いのではないでしょうか。
2017年から芸術参与に就任した粟國淳さんに、こうした親子向け、青少年向けの公演についてうかがいました。
幅広い年代・ステージに合わせた「日生劇場ファミリーフェスティヴァル」4つの舞台
———夏休みに開催される「日生劇場ファミリーフェスティヴァル」〈2024年は7月27日〜8月25日開催〉は、親子向けのイベントとしてすっかり定着していますね。かくいう私も、息子が小学生時代に連れていきました。
粟國 それはありがとうございます(笑)。時間の流れがどんどん早くなってきている時代の中で、家族が舞台体験を共有できる、ということはとても大切なことだと思います。ではどういうジャンル、どういう題材を選べばいいのか、というのが企画を考える側の課題ですね。できるだけ幅広い年代の方に来てほしい、という思いもあり、今年は4つのジャンルの作品を上演します。
まず、『アラジン・クエスト』〈7月27日(土)・28日(日)〉は物語付きクラシックコンサートという日生劇場が生んだジャンルです。単なるクラシック音楽のコンサートでは、特に小さいお子さんは飽きてしまうところ、もう少し音楽やそれを生んだ作曲家を身近に感じてほしいという思いから生まれました。
お芝居を観ながら生演奏を楽しむスタイルで、取り上げる曲もクラシックや、さまざまなジャンルの名曲で、ボーダーレスに音楽を楽しめるようになっています。
2018年の物語付きクラシックコンサート『アラジンと魔法のランプ』ダイジェスト動画
パペット・ファンタジー『ムーミン谷の夏まつり』〈8月3日(土)・4日(日)〉も、日生劇場の大切な財産といえる舞台です。日本では唯一のムーミンの人形劇で、今回で3回目の上演となります。回を重ねるごとにブラッシュアップしていますのでご期待ください。
バレエ《シンデレラ》〈8月16日(金)・17日(土)・18日(日)〉はスターダンサーズ・バレエ団による人気作品。子どもにも楽しんでいただけるような工夫はしていますが、バレエの本質はしっかりと伝わるつくりです。例えば、バレエを観たことがないというお父さんもお子さんと一緒に来やすい作品ではないかと思います。
日本中の子どもたちが大好きな絵本『あらしのよるに』を舞台にした音楽劇〈8月24日(土)・25日(日)〉は、歌やダンスがたっぷりの作品。友情や人と人との違いを描く物語は、シェイクスピアにも通じるようなところがあり、大人が観ても感動できるものです。ぜひご家族そろってお楽しみいただきたいです。
——『アラジン・クエスト』と『あらしのよるに』は全国巡回公演も行なわれるそうですね。
粟國 日生劇場に全国から子どもたちが来てほしいところですが、それはなかなか大変なので、劇場の方からいろいろな地方に赴く、というのが巡回公演です。いわば「劇場のアウトリーチ」ですね。今年はすべて小学生を対象とした芸術鑑賞教室公演にはなりますが、少しでも日生劇場の雰囲気を味わっていただければと思います。
オペラ・舞台が持つ「人間のエネルギー」を子どもたちの成長のきっかけに
——子ども向けの舞台をつくる時に、心がけていらっしゃることはありますか。
粟國 よくいわれますが、子どもは正直なので、大人が考えてもいなかったところで笑いが起きたり、こちらがおもしろいと思ったものがうけなかったりしますから、もう本当に体当たりの真剣勝負です。役者、スタッフ、クリエイターたちも、同じ日生劇場で普通のミュージカルを作っている時とはまた違った責任感を持って取り組んでいます。
——中高生向けの芸術鑑賞教室「日生劇場オペラ教室」公演では、今年はドニゼッティ作曲のオペラ《連隊の娘》が取り上げられるとうかがいました。
粟國 私は、子どもはひとりの「人」として見るべきだと考えています。特に中高生であれば、学校で勉強する内容にしてもかなり進んでいますし、世の中のニュースにも接している。昨年の《マクベス》は難しいのでは、と言われましたが、きちんと何かを感じてくれる子はいましたし、今回もドニゼッティが伝えたかったことを受け取ってくれると思っています。
——オペラという芸術を子どもたちに観てもらうことには、どのような意味があるとお考えですか。
粟國 舞台には人間のエネルギーがあります。それに接することで子どもたちの成長のきっかけになってくれたらいいですし、そういうものをつくっているんだ、というのが我々の誇りです。できれば子ども時代にミュージカルを観て、中高生時代にオペラを体験し、大人になったら劇場に通うようになる、となってくれたら嬉しいんですが(笑)。
劇場というのは、文化を通じてのコミュニケーションの広場のようなものなので、できるだけ早いうちからそういう場に慣れておくのはとても大切なことだと思います。
[運営] (公財)ニッセイ文化振興財団
[座席数] 1334席
[オープン]1963年
[住所]〒100-0006東京都千代田区有楽町1-1-1
[問い合わせ]03-3503-3111
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