インタビュー
2025.11.15
世界のオーケストラ楽屋通信 Vol.17 漆原友貴(サン・シンフォニー・オーケストラ・ハノイ トランペット奏者)

ベトナムでオーケストラの創立メンバーに! 東南アジア独特のダイナミックさを体感

世界各国のオーケストラで活躍する日本人奏者へのインタビュー連載。オーケストラの内側から、さまざまな国の文化をのぞいてみましょう!
第17回は、ベトナムのサン・シンフォニー・オーケストラ・ハノイでトランペット奏者を務める漆原友貴さん。国として急成長中のベトナムで、若者も多く勢いを感じるそう。オーケストラ活動や打ち上げについても教えてもらいました!

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

サンシンフォニー交響楽団の室内コンサートでメンデルスゾーンの「交響曲4番」を立奏で演奏した際の様子(2025年9月25日)

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創立メンバーとして2018年にベトナムへ

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——所属されているオーケストラについて教えてください。

漆原 僕のオーケストラは2018年にベトナムのハノイで結成したばかりのまだ若い、プライベートオーケストラです。メンバーは大体半分がベトナム人、半分は外国人の割合でしょうか、僕と同じ世代のメンバーがほとんどでよく気が合います。 僕は創立メンバーの一人です。

外国人メンバーには日本人のほか、シンガポール、インドネシア、タイのような東南アジア、韓国人、アメリカ、ベラルーシ、スペイン、ベネズエラなど国際色豊かです。そのため、基本リハーサルでは英語を使います。

定期演奏会が開催されるオペラハウス

漆原友貴(うるしはら・ゆうき)
東京都板橋区出身。東京都立新宿高校を卒業後に渡独。ロストック音楽演劇大学、同大学修士課程修了。 
トランペットを織田準一、杉木峯夫、ライナー・アウアーバッハ、ボー・二ルソン、ユリエ・ボンデ、クリスティアン・ステーンストロプ各氏に師事。
2016〜17年ロストック北ドイツフィルハーモニー研修生。2015、16、17年に香港でアジアユースオーケストラに参加。
2018年よりベトナム、ハノイへ渡り、サンシンフォニー交響楽団 トランペット奏者。2020年よりハノイのプロ、学生、アマチュアの金管奏者からなるハノイブラスコミュニティを立ち上げ、芸術監督を務める。
これまでにマレーシアフィル、シンガポール交響楽団、ベトナム国立交響楽団、ベトナムオペラバレエ国立交響楽団、ハノイフィルハーモニー、ベルリン国立歌劇場などドイツ、アジア各地にて客演。
2024年より指揮をフィンランド・ヘルシンキにてヨルマ・パヌラ氏に師事し、同氏の指導の下ハンガリー・ブダペスト交響楽団、 ケチュケメート交響楽団(ハンガリー)を指揮。
ベトナムではハノイブラスコミュニティブラスアンサンブル、サイゴンウインズ吹奏楽団を指揮。

打ち上げではローカルビールで盛り上がる

——なぜこのオーケストラに入ろうと思ったのですか?

漆原 僕はまだドイツ留学中の2015、16、17年に、香港のアジアユースオーケストラに参加して、アジアの仲間たちと演奏旅行をしました。そのときに一緒だった友人がオーディションを受けると聞いて、一緒に受けて二人で受かったのが始まりでした。 

2016年にはアジアユースオーケストラでハノイで演奏していましたし、父も母もハノイに演奏で来たことがあったため、あまり未知の国に来たという感じはしませんでした。でもハノイの交通にはびっくりしましたが……(笑)。

漆原さんの紹介動画

——今のオーケストラでいちばん思い出に残っている演奏会や曲目を教えてください。

漆原 いろいろなコンサートがありましたが、やはり2018年の創立後最初のコンサートです。5月だったと思います。メインがチャイコフスキーの「交響曲第5番」でした。それまではまだ全員初対面ということもあり、オーケストラが始まってから最初の2か月ほどはリハーサルのみでしたが、いよいよ初めてのコンサートということもあり、特別でした。終わったあとの打ち上げも一番すごかった思い出があります。

どんな感じかといいますと、ベトナム人は基本的にベトナムのローカルビールを好むのですが、このときは他に謎のアルコール度の高い梅酒のようなものを一気飲みして、みんなで1、2、3、乾杯(ヨー)! と叫んでいました。

ハノイ歌劇場の舞台上から

急成長中のベトナムで波に乗って

——お国柄を感じたエピソードや日本とは違うなぁと感じる点を教えてください。

漆原 先ほど交通について挙げましたが、やはり一番驚いたのは、バイクや原付の人口が多いところですね。オーケストラのメンバーがほぼ全員バイクで通勤するのは、多分ベトナムだけなのではと思います。

僕は自転車通勤ですが、バイクに乗らない人用にバイクタクシーもあり、使用しているメンバーもいます。

リハーサルのあとはよく仲の良いメンバーで一緒にお昼ご飯を食べ、カフェに行くのが日課です。ベトナムでは日常が日本よりゆっくり進む感じはよいなあと思います。

定期演奏会でドヴォルザークの「交響曲7番」を演奏(2025年8月17日)

——「この国に来てよかった!」と感じるのはどんなときですか?

漆原 いまベトナムは成長が著しく、1週間いなかっただけで街並みががらりと変わっていたりします。 ベトナム人も若い人が多く、いろいろな場面で勢いを感じ、一緒に波に乗れていることが嬉しいです。もともと東南アジアのそういうダイナミックなところが好きだったので、人生ご縁だなあと思います。

今もちょうどハノイで新しいオペラハウスを2027年に建てるという発表があり、どんなホールができるのか今から楽しみです。

2027年に完成予定のオペラハウス。 現在定期演奏会を開催しているオペラハウスも含めて、オーケストラの運営会社が計画している

——おすすめのローカルフードがあれば教えてください。

漆原 ベトナムはローカルフードが充実しているので、選ぶのが難しいですね。ベトナム風つけ麺のブンチャー、ベトナムおこわのソイも好きですが、やはりハノイに来て最初に食べたベトナム料理、フォーを推させていただきます。

ちなみに南のホーチミンではスープ麺のフーティウも美味しいです。それと僕のお気に入りはコムタム、炭火豚肉入り砕米ごはんです。

定番のフォー
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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