インタビュー
2024.01.31
シェーンベルクのファンも初心者も、4月6日東京藝術大学奏楽堂で未曽有の聴体験へダイヴ!

6時間のシェーンベルク弦楽四重奏曲全曲演奏に挑む ディオティマ弦楽四重奏団にきく

今年第20回を迎える国内最大級のクラシック音楽の祭典「東京・春・音楽祭2024」。その中でもひときわ異彩を放っているのが、4月6日に約6時間かけて開催される「シェーンベルク弦楽四重奏曲全曲演奏会」です。演奏は、同時代の作曲家と密接な関わりをもちながら全曲演奏のような大型企画にチャレンジを続け、近現代作品の演奏で高く評価されるディオティマ弦楽四重奏団。

後期ロマン派から無調を経て十二音音楽に至るまで、シェーンベルクの音楽の変遷を1日で旅する企画は、シェーンベルク・ファンはもちろんのこと、作曲家の生誕150年を機に聴いてみようと思う人にとっても、未曽有の聴体験となることでしょう。

この日に向けてアスリートのように準備するというディオティマ弦楽四重奏団の4人に、コンサートへの熱い思いを伺いました。

ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

ディオティマ弦楽四重奏団 ©Michel Nguyen
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重要なのは心を開いたままでいること。シェーンベルクはさまざまな魂の冒険を見せてくれる

――今回は、シェーンベルクの弦楽四重奏曲を全曲演奏する6時間にもおよぶコンサートです。この濃密な時間を経た後で、聴き手にはどのような風景が見えてくるのでしょうか?

ユンペン・ジャオ(vn) このコンサートはとても特別です。作品を通じシェーンベルクという作曲家が、人間的、芸術的に成長していくさまを、次元を超えて「見る」ことができるからです。重要なのは心を開いたままでいること、受け入れること、音楽と一緒に旅することです。きっと貴重な旅を体験いただけると思います!

――シェーンベルクに対してとっつきにくい、難しいと感じている人は少なくないと思います。生誕150年を機に聴いてみようと思っている人に向けて、シェーンベルクの音楽の魅力と、近づき方を教えてください。

レオ・マリリエ(vn) 「難解」というイメージは行き過ぎた知性化による結果にすぎません。シェーンベルク自身はそれにまったく同意していません。

シェーンベルクはさまざまな魂の冒険を見せてくれます。ときに暴力的であったり奇妙だったりもしますが、私からするとそれこそが万人を惹きつける特色なのです。

弦楽四重奏曲の「第3番」は真のモダニズム作品です。全曲を通じて特殊な語法で書かれていますが、きわめて深く、思い焦がれるような瞬間がしばしばあります。「第1番」は偉大なるロマン主義の音楽的冒険、「第2番」はシェーンベルク自身の、そして聴衆のたくさんの個人的な感情を具体化したものです。「第4番」は古典へのノスタルジーを失うことがありません。

ディオティマ弦楽四重奏団
1996年、パリ国立高等音楽院を卒業したメンバーで結成された、いま世界でひじょうに高い人気を持つ弦楽四重奏団。ピエール・ブーレーズ、ヘルムート・ラッヘンマンなど20世紀後半の偉大な作曲家たちと緊密な共同作業を行なってきた。また細川俊夫、ミロスラフ・スルンカ、アルベルト・ポサダス、マウロ・ランツァ、ジェラール・ペソン、レベッカ・サンダース、トリスタン・ミュライユなど現代を代表する優れた作曲家たちに新作を委嘱してきている。ベートーヴェン、シューベルト、新ウィーン楽派(シェーンベルク、ベルク、ヴェーベルン)、ヤナーチェク、ドビュッシー、ラヴェル、バルトークなど、19世紀や20世紀の傑作にも新たな光を当てている。
ディスコグラフィーも極めて豊富だ。近年の主なものとしてはバルトークの弦楽四重奏曲全集、新ウィーン楽派作品集などがある。2023年のリゲティ生誕100周年にあたりリゲティに捧げたアルバムをリリース。2019~21年弦楽四重奏団としては史上初めてラジオ・フランスのレジデント・アーティストを務めた。若手アーティストの指導や育成にも積極的で、エクサンプロヴァンス音楽祭アカデミーにおけるアソシエート・アーティストやシカゴ大学のアーティスト・イン・レジデンスを務めているほか、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、パリ国立高等音楽・舞踊学校、他でマスタークラスを開いている。
世界有数のホールやコンサート・シリーズに定期的に出演しており、今シーズンはジョージア、アルメニア、アゼルバイジャンをツアーし、エルンスト・フォン・ジーメンス音楽財団の50周年記念コンサートにも呼ばれている。またパリ・フィルハーモニー管弦楽団ではオーガスタ・リード・トーマスおよびマルク・モネの新作を演奏する。©Michel Nguyen


ルーティン化を避け、ときに肉体的、芸術的、知的な限界に挑戦することも大切

――ディオティマ弦楽四重奏団は結成以来、常にチャレンジングな企画に取り組み続けてきました。チャレンジを続ける理由、そしてその原動力となるものは?

フランク・シュヴァリエ(va) 弦楽四重奏団のプログラム選びはたいへんな作業です。レパートリーに加える曲は、なによりも自分たちが演奏する音楽にマッチするものでなければなりません。同時に、なんとなくうまくいっているから同じことをやる「ルーティン化」も避けなければなりません。

ときには肉体的、芸術的、知的な限界に挑戦することも大切です。疲れきっている時にはいつもと同じような演奏はできませんし、聴衆もそれは感じるでしょう。ある一人の作曲家が生涯にわたって書いた作品の中へと入り込む、これは私たちにとっても聴衆にとっても素晴らしいことです。このような野心的なコンサートにおいていちばん重要なのは、演奏を通じて形成される大きな線や形でしょう。

――この6時間の演奏会に向けて、メンタルとフィジカルの準備はどのようにされていますか?

アレクシス・ドゥシャルム(vc) もちろんリハーサルはたくさんしますし体調管理にも気を配ります。よく寝ること、バランスよく食べること。それから公演前の何日かはアルコールを断つことです。フランス人でありボルドーに住む私にとって禁酒はとてもつらいことです! 試合前のアスリートのような気分といっていいかもしれません。それ以外はいつもとまったく変わりません。ステージに立つということはプログラムの長さに関係なくいつも真剣勝負です。

――今回の演奏曲目の中で、各メンバーがいちばん好きな曲(楽章)を教えてください。

弦楽四重奏曲「第1番」です。(ユンペン・ジャオ vn

「第2番」第4楽章です。音楽家にとって神聖な体験です。恐ろしく繊細かつ想像を絶する方法で未知の世界へ、無調の世界に足を踏み入れるのです。(レオ・マリリエ vn

ヴィオラを弾く私にとって「ソロがあるから」だけではなく、シェーンベルク自身が、自分の書いた最高の“メロディー”と表現した「第1番」の緩徐楽章ですね。(フランク・シュヴァリエ va

「第3番」第3楽章です。ディオティマに加わらないかと声をかけてもらったとき、試験として弾いたからです。(アレクシス・ドゥシャルム vc

公演情報
ディオティマ弦楽四重奏団 シェーンベルク 弦楽四重奏曲 全曲演奏会 生誕150年に寄せて

日時:2024年4月6日(土)14:00開演
会場:東京藝術大学奏楽堂(大学構内)
出演:
ディオティマ弦楽四重奏団
 ヴァイオリン:ユン・ペン・ジャオ、レオ・マリリエ
 ヴィオラ:フランク・シュヴァリエ
 チェロ:アレクシス・デシャルム
ヴィオラ:安達真理
チェロ:中 実穂
ソプラノ:レネケ・ルイテン

曲目
シェーンベルク:
弦楽四重奏曲 ニ長調
弦楽四重奏曲 第3番 op.30
弦楽四重奏曲 第1番 ニ短調 op.7
弦楽四重奏曲 第2番 嬰ヘ短調 op.10(ソプラノと弦楽四重奏版)
弦楽四重奏曲 第4番 op.37
《浄められた夜》op.4
/他

公演時間:約6時間(休憩3回含む)

詳細はこちら

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