インタビュー
2019.01.30
4月20・21日開催! ローム ミュージック フェスティバル2019

音楽家のための奨学金制度を継続するローム ミュージック ファンデーションと、半導体メーカー「ローム」の支援の形

将来を嘱望されている音楽家たちにとって、留学などで多様な経験を積み、学ぶことは大切なこと。だが、長い期間になれば経済的な負担はより大きく、継続することが難しいことも多い。
そんな若手にとって「ローム ミュージック ファンデーション」の奨学金制度は、目標にもなっているようだ。この制度によって支えられ、いま世界の第一線で活躍する日本人のアーティストは驚くほど多い。
毎年春、京都で開催されるローム ミュージック フェスティバルには、元奨学生などさまざまな形で支援を受けた「ローム ミュージック フレンズ」の豪華な顔ぶれがそろい、聴衆にも開かれている。

インタビュー・文
飯尾洋一
インタビュー・文
飯尾洋一 音楽ライター・編集者

音楽ジャーナリスト。都内在住。著書に『はじめてのクラシック マンガで教養』[監修・執筆](朝日新聞出版)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『R40のクラシッ...

写真上:2017年8月のスカラシップコンサートVol.15より。©佐々木卓男
インタビュー写真:各務あゆみ

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音楽家によく知られるロームの奨学援助

おそらく日本の若い音楽家たちで「ローム」の名を知らない人はいないのではないだろうか。ロームといえば京都に本社を置く世界的な半導体メーカーだが、音楽界においてはロームが支援する公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーションによる若い音楽家たちへの奨学援助が広く知られている。この動画の最後には、しっかりと文化支援活動まで紹介されている。

「つねに品質を第一とする」ロームの創業者であり現名誉会長の佐藤研一郎氏は、ピアニストを志望したが、大学生のときに実用新案権をとり、エンジニアの道へ。ロームの景気にかかわらず安定して音楽文化の支援をしたいとの思いから、91年に公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーションを創設し、現在、理事長を務める。

東京音楽コンクールとルーマニア国際音楽コンクールで優勝を果たして大活躍中の若手ヴィオラ奏者、田原綾子さんもそんな奨学援助を受けたアーティストのひとり。同財団事務局チーフの小宮山由佳さんとともに、お話をうかがった。

──田原さんは2015年と2016年にローム ミュージック ファンデーションの奨学生になって、パリに留学されたそうですね。以前からローム ミュージック ファンデーションの名前はご存知でしたか。

田原 はい、ローム ミュージック ファンデーションの奨学金制度のことは先輩方や友人たちから聞いていました。私もいつかお世話になれるようにがんばろうと、目標のように感じていました。海外に留学したいと思ってもなかなか自力で資金を調達できるものではありませんので、若い音楽家にとってローム ミュージック ファンデーションの存在は本当に大きいと思います。

私の場合は、東京音楽コンクールで1位をいただいて自信になったことが、奨学金を申し込むきっかけになりました。

ヴィオラ奏者の田原綾子さん。奨学生の審査は1年ごとに行ない、最長2年間。「2年目はないかもしれない」と必死だったそう。

留学しているパリでの写真

師匠のパスキエ先生と。家に帰ると一人の時間になり、弱音をはく相手もいないなか、自立してたくましくなったという。
salle cortotのホールでのコンサート。海外での演奏機会も貴重な経験だ。
勉強しているパリ・エコールノルマル音楽院。
「歴史の詰まった校舎の中の響きは最高に素敵で、そこで演奏するだけでたくさんのことを学べます」と田原さん。

小宮山 奨学金制度にはたくさんのご応募をいただいておりまして、今はだいたい5、6倍くらいの倍率です。しかもレベルの高い方々ばかりが申請してくださるので、選考委員の先生方も毎年大変です。

──そんなに倍率が高いんですか。 選考はどんなふうに進めるのでしょう。

小宮山 書類審査があって、その後、京都に来ていただいて実技審査があります。

田原 選考委員の名だたる先生方がずらーっと並ぶんですよ! 音楽家の側からすると、自分の将来がかかっていますので、やはり気負うところはあります。

──まるでコンクールみたいですね。

田原 そうですね。でも、お客さんはだれもいませんし、コンクールとはまた違った独特の緊張感があります。面接もありますし。

小宮山 実技が中心ではありますが、面接も行なっています。奨学生にはその後も「ローム ミュージック フレンズ」の一員として、財団のさまざまな音楽活動にかかわっていただいています。

ローム ミュージック ファンデーションの事務局チーフの小宮山由佳さん。奨学生は創設から28年間で464名になり、セミナー受講生や国内外から呼ぶ京都・国際音楽学生フェスティバルの出演者なども含めると、全4400名。「財団の財産です」と語る。

なぜ音楽をやっているのかを言葉にする

─面接ではどんなふうに答えたんですか。

田原 えっ、ここで言うんですか!(笑)。そうですね……私の場合は「ヴィオラという楽器の魅力をもっとみなさんに知ってほしい、こんなに素敵な楽器なのだから、少しでも多くの人に存在を知ってほしいし、そのためにもっと成長し、いろいろな演奏活動に取り組みたい」といったことを答えました。

田原 自分の考えを言葉にすることについても、奨学援助への応募をきっかけによく考えるようになりました。なぜ音楽をやっているのか、どうして今この活動をしたいのか。学生の頃はどうしても目の前のことばかりに必死になって、なかなかそういったことまでは考えが及びません。でも援助していただくからには、なぜ音楽をするのかも言葉で明確になければならないと感じました。

──楽器愛を感じますね。ヴィオラの魅力はどんなところにあると思いますか。

田原 なにより音色のすばらしさです。ヴァイオリンの華やかでつややかな音色ももちろんすばらしいのですが、ヴィオラは暖かくて深い音色を持っています。歌うようなメロディを弾いたときに、思わず涙があふれてしまうような魅力があります。ヴィオラはひとりで弾いても、アンサンブルで弾いてもすばらしい楽器だと思います。

演奏機会を提供するための、現役または給付終了直後の奨学生によるスカラシップコンサート Vol.15(2017年8月23日)。田原さんは、ヴァイオリン倉富亮太、チェロ笹沼樹とともに弦楽トリオを組んだ。© 佐々木卓男
毎年8月には奨学生の認定式と報告会が行なわれる。写真はその後の懇親会の様子(2016年)。 © 佐々木卓男

音楽家の支援から聴衆へ

──奨学生同士の交流もあるのでしょうか。

田原 あります。同じ年度の奨学生同士は特に。スカラシップコンサートはソロでも出演できますが、いっしょに室内楽を演奏することもできますので、やはり仲良くなります。いろいろな楽器の方と知り合うことができるのは本当にうれしいですね。

──ローム ミュージック ファンデーションでは奨学援助のほかにも、さまざまな活動を行っていますよね。

小宮山 ローム ミュージック ファンデーションでは音楽家の育成に加えて、もうひとつの柱として聴衆の拡大を目指しています。2016年からは「ローム ミュージック フェスティバル」を開催して、幅広いお客さまに楽しんでいただいています。昨年は1万人以上の方にご来場いただきました。今年は4月20日と21日の開催です。ロームシアター京都が音楽であふれる2日間にしたいと思っています。

──田原さんもご出演なさるんですよね。

田原 はい、すばらしい先輩方といっしょに演奏できる機会をいただいて、とても嬉しく思っています。私は4月20日の「モーツァルト・ガラ・コンサート」でフルート四重奏曲第1番と弦楽三重奏のためのディヴェルティメントで出演させていただきます。

モーツァルトはヴィオラを好んで演奏した作曲家ですので、曲の書き方にもヴィオラへの愛情があふれているんですよ。

小宮山 この音楽祭には、ローム ミュージック フレンズの方々に多数ご出演いただいています。若い音楽家を支援し、成長した方々がローム ミュージック フレンズとして音楽祭に出演し、聴衆のみなさんに演奏会を楽しんでいただく。そんなよい循環ができています。私たちのこれまでの活動が形になったものが、この音楽祭だと思っています。

京都の4月は過ごしやすい時期です。ぜひ観光も兼ねてロームシアター京都にいらっしゃってください!

ローム ミュージック フェスティバル2018の模様

野外のローム・スクエアコンサートでは、名門・大阪桐蔭高校吹奏楽部も出演。 © 大澤正
NHK交響楽団首席トランペット奏者、菊本和昭を中心に、ローム ミュージック フレンズの金管楽器・打楽器奏者13名が、クラシックやジャズのソロ曲やアンサンブルを披露!
メインホールでのオーケストラコンサートⅡ 天才と英雄の肖像。ナビゲーターに朝岡聡を招き、フレンズからは下野竜也(指揮)、 小林愛実(ピアノ)、 泉原隆志(ヴァイオリン)が出演した。 © 佐々木卓男
ヴァイオリン成田達輝、ピアノ萩原麻未のデュオ・コンサート。両氏とも国際コンクールで輝かしい成績を残し、ソロや室内楽などで活躍する。
ローム ミュージック フェスティバル2019
イベント情報
ローム ミュージック フェスティバル2019

日程: 2019 年4 月20 日(土)、4 月21 日(日)

会場: ロームシアター京都 (京都市左京区岡崎最勝寺町13)
メインホール、サウスホール、ローム・スクエア

出演者: ローム ミュージック フレンズ 31名、京都市交響楽団 ほか

料金: 1,500 円~4,000 円(公演ごと/全席指定/税込)
※ローム・スクエアで行なうコンサートは無料

チケット販売: エラート音楽事務所(Tel.075-751-0617) ほか

インタビュー・文
飯尾洋一
インタビュー・文
飯尾洋一 音楽ライター・編集者

音楽ジャーナリスト。都内在住。著書に『はじめてのクラシック マンガで教養』[監修・執筆](朝日新聞出版)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『R40のクラシッ...

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