相撲部屋での取材敢行!

春場所で新入幕! 尾車部屋の幕内力士・友風の“ピアノ愛”は燃え続ける

インタビュー
2019.03.21

相撲ファンという音楽ライターの芹澤一美さんから、「急成長中の力士でピアノが上手な人がいるんです!」と熱い取材希望があったのは数か月前。自ら日本相撲協会に申請を出したしばらくあと、芹澤さんの携帯電話に尾車親方から直々にかかってきた電話で取材をご快諾。相撲部屋にはさすがにピアノはないだろうという予想で、芹澤さん自前のキーボードを持ち込み、音楽メディア異例の取材に臨んだ。

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写真:各務あゆみ
相撲ファンの音楽ライター
芹澤一美 音楽編集者
芹澤一美
相撲ファンの音楽ライター
芹澤一美 音楽編集者
音楽療法専門誌「チャレンジ!音楽療法2003」(2002年)「the ミュージックセラピー」(2003年vol.1~2011年vol.20/音楽之友社)の編集・取材・...

音大に行こうか悩んだ力士

春場所で新入幕を果たしたスピード昇進の出世頭であると同時に、「ピアノが弾ける力士」としても注目を集めている友風関。昨年11月の九州場所の中継中、新十両インタビューで流れた中学3年生当時の演奏が衝撃的だった。

「音大に行こうか相撲の世界に進もうか、真剣に悩んだそうです」と紹介されたホームビデオには、筋肉質の大きな体格を生かした深いタッチと、それでいて繊細で柔らかい音色、芯のある重厚な和音を奏でる姿が記録されていた。

これは「ピアノが特技」などというレベルではない。さっそく、友風関のピアノへの思いを深掘りすることに。こんなユニークなお相撲さんの存在を、音楽ファンにもぜひ知ってもらいたい。

いざ、尾車部屋へ

自前のキーボードを携えて友風関が所属する尾車部屋を訪ねると、尾車親方(元大関琴風)も友風関を前に「ちょっと弾いてくれよ。聴いたことないんだから」と盛り上げてくれる。やや照れながらもサラサラと《エリーゼのために》のさわりを演奏すると「おおっ、本当だったんだな」と一言。これが皆の笑いを誘って、一気に場が和んだ。

友風関がピアノと初めて触れ合ったのは1歳半ば。

「母が弾いていたピアノが家にあったので、ピアノは遊びの一つでした。皆さんが想像するよりはるかに大きな子どもだったので、ちゃんと椅子に座って弾いていたそうで、写真も残っています。本格的に習い始めたのは小学校2年生。母も長く習っていた先生に、週1回、家でレッスンを受けていました」。

人前で目立つことが好き+ピアノが弾ける=合唱コンクール伴奏者、の方程式の通り、中学3年間はずっと自ら立候補して伴奏を担当。家での練習は毎日3、4時間というから相当の力の入れようだ。小学校の宿泊学習で何日か弾けずに帰宅したとき、指が思うように動かないことにショックを受けて号泣したほど。

曲が形になると「それをずっと弾くのが楽しかった。何時間でも弾いていられた」と振り返る。

ピアノと相撲の両立の道は険しく……

高校から本格的に相撲を始め、全国大会で準優勝。決勝の相手は、今の逸ノ城だった。「準優勝のままでは引き下がれない。大学でさらに相撲を磨こう」と決めて日本体育大学に進む。ショパンの譜読みを始めた矢先に、指の怪我もあってピアノからは離れてしまった。

でも無性に弾きたくなりませんかと、尋ねると「そうなんですよ」と身を乗り出し、「部屋のすぐ近くに高田川部屋があるんですが、昔、ピアノを弾く力士がいたそうで、なぜかピアノがあるんですよ。それで何度か弾かせてもらいに行ったことがあります」とのこと。稽古以外で部屋を訪ねて来る力士に、快くピアノを弾かせてくれる高田川親方も心が広い。

また、川崎の実家に帰った際には、たとえ少しの時間でも必ずピアノを弾く。大ファンだというX JAPANの曲や、よく祖母にリクエストされるリチャード・クレイダーマン《渚のアデリーヌ》などが定番だ。緊張の続く本場所中やリラックスしたいときにはYouTubeでひたすらショパンを聴くという友風関にとって、ピアノは「なくてはならない存在」なのだ。

友風関がよく弾く曲

ピアノが弾ける力士というキャラクター

やや早めの口調で語られる、ピアノにまつわるエピソードが面白い。

「昇進会見で心境を聞かれたんですけど、宝石箱を開けた時みたいにワクワクしてますって答えたら、さすがピアノを弾く力士だけあって表現が違う、みたいなことを書かれちゃって(笑)」

さらには、「この部屋の力士に《乙女の祈り》って曲を知ってます?って聞いたら知らないって言うんで、弾いたんですよ。そしたら『ゴミ収集車の音楽や』って(笑)。確かに名古屋場所の時に聴いたゴミ収集車のメロディは《乙女の祈り》でしたけど、力抜けました」と、抜群のテンポ。ここぞという笑いのツボを外さないリズム感は、どこか相撲にも通じるのだろうか。

中学・高校時代、相撲で頭角を現す中でも、ショパンを弾きたい一心でピアノを練習し続けた友風関。さらなる昇進に期待が高まる友風関の活躍に、これからも熱い視線を注いでいきたい。

バダジェフスカ:乙女の祈り Op.4 変ホ長調

レッスンの思い出や母との二人三脚での練習、ピアノと距離を置くようになった背景などを、ピアノ専門誌「ムジカノーヴァ」5月号(4月20日発売)にも掲載。こちらもぜひご一読を!
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