
中川優芽花がアルバム・デビュー!「物語がみえる」ピアノを育む師の教え、ドイツでの日々

クララ・ハスキル国際ピアノコンクール、ロベルト・シューマン国際コンクールでの優勝をはじめ、着実にキャリアを重ね注目を集めているピアニストの中川優芽花さん。2025年は第19回ショパン国際ピアノコンクールに出場し、聴衆の心を深く打つ演奏によってさらに多くのファンを増やしています。そんな中川さんに、このたびリリースした待望のデビューアルバムについて、またドイツ・ワイマールで学ぶ日々や、ショパンコンクールで得たものについても伺いました。

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...
ずっと弾きたかったラフマニノフの2作品
――今回のCDは2024年に行なわれた演奏(於:9月5日ザ・シンフォニーホールおよび9月11日浜離宮朝日ホール)のライブ録音ですね。
中川 大阪で演奏したラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》Op. 43を入れることが先に決まっていたので、それに合わせて浜離宮でのリサイタルの楽曲(シューマン:《子供の情景》Op. 15およびラフマニノフ「10の前奏曲」Op.23など)を組み合わせていきました。
《パガニーニの主題による狂詩曲》は今回が初めての演奏だったのですが、以前からずっと弾きたいと思っていたのでとても嬉しかったです。さまざまな場面が連続していくので その対比をまとめあげていくのは大変な作業でしたが、指揮の髙橋直史さんや大阪交響楽団の皆様のお力もお借りして、とても楽しく演奏できました。
――ラフマニノフはよく弾かれるのでしょうか?
中川 もともと主なレパートリーはモーツァルトやリスト、シューマンなどの作品でしたが、フランツ・リスト音楽大学に入学し、グリゴリー・グルズマン先生に師事してからラフマニノフも弾くようになりました。
先生はロシアン・スクール(ロシアの伝統的なピアノ奏法や教育メソッドのこと)による指導をしてくださり、演奏スタイルが大きく変わりました。たくさんの演奏家や音源のおすすめも紹介してくださるので、選曲の幅や視野も広がりましたね。
――どんな演奏家をよく聴かれますか?
中川 エミール・ギレリスやウラディミール・ホロヴィッツはとくに聴いています。ミハイル・プレトニョフの演奏も大好きで、実は今回のCDにも入っているラフマニノフの前奏曲(Op. 23-4)は彼の演奏を聴いて「絶対に弾きたい!」と思って弾き始めた曲なのです。これを中心に、他の曲を組み合わせていきました。
作曲家が見た景色がインスピレーションの源に
――現在勉強されているワイマールでの生活はいかがですか?
中川 歴史が大切に守られ、また自然にもあふれている素晴らしい環境です。散歩しているだけでもたくさんのインスピレーションを与えてくれます。
――さまざまなことを感じながら生活されているのですね。中川さんの演奏をお聴きすると、物語や情景がとても鮮やかに見えてくるのですが、その秘密の一端が見えてきました!
中川 ありがとうございます! 自然や美しい建築物はもちろん、物語を読むなどして、さまざまなものを自分の中に取り入れようというのは常に考えています。

中川優芽花 Yumeka Nakagawa
2021年クララ・ハスキル国際ピアノコンクールで優勝、および聴衆賞ほかもあわせて受賞した。ロンドンのウィグモア・ホール、デュッセルドルフのトーンハレ、ワイマールハレ、マリインスキー国際ピアノ・フェスティバルなどで演奏。クリスティアン・ツァハリアス指揮ホーフ交響楽団、ポルト・カーザ・ダ・ムジカ管弦楽団と共演。ウィーン・コンツェルトハウス、リンツ・プルックナーハウスでも演奏している。
バーバラ・シュツェパンスカ、ウィリアム・フォンに学んだのち2021年からワイマールのフランツ・リスト音楽大学においてグリゴリー・グルズマン教授のもと研鑽を積む。スイスのグシュタードではマリア・ジョアオ・ピリスのマスタークラスを受講。2022年より24年までロームミュージックファンデーション奨学生。2025年、岩谷時子 Foundation for Youth 受賞
《子供の情景》には子供と大人、2つの視点がある
――シューマンの《子供の情景》も中川さんならではのファンタジーを感じる演奏でした。
中川 音数が少ない分、それぞれの音に意味や重みが詰まっているので、いろいろと考えなくてはいけないことがあります。この曲の場合は子供の視点で無邪気に演奏するか、大人の視点で子供の頃のことを考えて弾くのか……と演奏のしかたも悩みどころです。今回は後者の視点で演奏しましたが、いつか変わることもあるかもしれません。
――シューマンと同時代のショパンについても伺わせてください。今回ショパンコンクールに挑戦されたことで、ショパンについての考え方などは変わったのでしょうか。
中川 もともとショパンは大好きだったのですが、コンクール期間中にたくさんの作品を弾き、また世界各地のコンテスタントのさまざまな解釈による演奏を聴いたことで、あらためて「ショパンっていいな」と思いました。
音色のコントロールや響きのバランスなど、演奏においてほんとうに難しいところが多いのですが、今回の挑戦で自分なりの「ショパン像」が見えてきた気がします。まだまだ弾きたい作品もありますし、これからも大切に向き合いたい作曲家です。
今後はモーツァルトやシューベルトなどの作品も演奏していきたいと語ってくれた中川さん。これからもたくさんのレパートリーで心を打つ演奏を届けてくれることだろう。

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