川口成彦・青柳いづみこ対談〜ショパン演奏に新たな道を切り拓いたピリオド楽器コンクール
第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで第2位を受賞した川口成彦さんと、ピアニスト・文筆家の青柳いづみこさんが対談! 2023年10月に開催された第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールの振り返りを中心に、古楽器演奏について詳しくお話をうかがいました。
1989 年に岩手県盛岡市で生まれ、横浜で育つ。第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール第2位、ブルージュ国際古楽コンクール最高位。フィレンツェ五月音楽祭や「ショパン...
安川加壽子、ピエール・バルビゼの各氏に師事。フランス国立マルセイユ音楽院首席卒業、東京藝術大学大学院博士課程修了。武満徹・矢代秋雄・八村義夫作品を集めた『残酷なやさし...
国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...
2023年10月に第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールが開催され、新たな優勝者と入賞者が誕生した。現地やオンラインで審査の模様を追っていた人もいるかもしれない。モダン楽器のショパン国際ピアノコンクールとはまったく違った審査方式ということもあり、審査の基準や聴くポイントなどがどこにあるのか疑問に思った方もいることだろう。今回は同コンクール第1回で第2位を受賞した川口成彦さんと現地でコンクールを取材したピアニストの青柳いづみこさんによる対談が実現。改めてこのコンクールについてお話をうかがった。
楽器の選択の重要性
——ピリオド楽器国際コンクールとモダン楽器によるコンクールではまず楽器の違いが特徴的ですね。今回は6台の楽器が使用されましたが、これらはそれぞれどのような特徴があるものなのでしょうか。
川口 ショパンの人生にかかわりのあるほとんどのメーカーの楽器が並んでいたと思います。コンクールで使用されたものはショパンが実際に弾いていたものではありませんが、グラーフは彼がウィーンでデビューしたときのもの、ブッフホルツはワルシャワ時代に所有していた楽器です。そしてプレイエルとエラールは当時のパリの主要メーカーであり、両方ともショパンが好んで愛用していました。そしてブロードウッドは彼がロンドンのコンサートで演奏しています。
青柳 本選の協奏曲審査では、会場がフィルハーモニーになり会場が大きくなるので、おのずとエラールとプレイエルの2択になりますね。実際に今回も3人ずつに分かれ、そしてこのことが結果に影響を及ぼしたという印象があります。
——かなり選択に幅があるようですが、選ばれる楽器の傾向などはありますか?
川口 すべてを観ていたわけではないのではっきりと申し上げられませんが、確かなことは、第1回と違って今回は古典派に近いウィーン式アクション(註:「跳ね上げ式」とも呼ばれる。軽いハンマーを“てこ”の原理で跳ね上げて打弦するという構造を指す。タッチは浅く俊敏で、軽やかなタッチを特徴とする)の楽器を必ず使わなくてはいけないということになっていました。前回は最初から最後までエラールで通したという人もいましたが、今回は楽器を変えることで、それを扱うセンス、音色から得るインスピレーションを加えての演奏解釈など、よりさまざまな角度から演奏を楽しむことができたのではないでしょうか。
青柳 ウィーン式アクションのグラーフとブッフホルツは機構や音色の違い以外に、ペダルが4本あるということも大きな特徴ですね。「モデレートペダル」といって、
一次予選でのエリック・グオの演奏
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