演奏者の個性が表れたショパン以外の作品

——モダン楽器のコンクールではすべてショパンの作品を演奏することが必須なのに対し、ピリオド楽器国際コンクールではショパン以外の作品を演奏することも求められますね。

川口 バッハにモーツァルト、そしてポーランドの作曲家が挙げられていますね。いずれもショパンの音楽観の形成にあたり重要な存在です。ショパンが前時代の音楽家たちの影響を踏まえて存在していることが理解できているかを見るうえで重要なことだと思います。より深くショパンの実像に迫りたいというコンクールの趣旨を反映するものでしょう。私が主催者だったとしてもそのようにすると思います。

青柳 モーツァルトの《幻想曲ニ短調》が課題に出ていましたが、これをどのように演奏するか、スタンスがはっきり分かれて興味深かったです。モダンとピリオド、それぞれの分野で専門的に研究してこられた方がコンテスタント、審査員ともに一堂に会したこのコンクールならではだったかなと。

具体的にいえば、97小節以降のモーツァルト自身の真作ではない箇所をどう弾くか、またそれをどう評価するか、という点です。即興的なパッセージを挿入して補筆部分で終わるパターンは、モダンを中心に勉強してきた自分も経験ずみでしたが、集結部は弾かずに自在なスケールやアルペッジョでつなぎ、次の曲にそのまま移行した方が何人かいらして、びっくりしました。

審査員のインタビューを読んだところ、ピリオド楽器奏者からすれば“あり”だそうですが、ただアイディアを出すだけではなく、様式に則っているかなども求められます。今回は残念ながらよい評価にはつながりませんでしたが、それでも、モダン側にとっては古楽系とのアプローチの違いを認識する得難い機会となりました。

青柳いづみこさんによる第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクールのレポート