工藤重典 フルートと歩んだ60年。「これまで」と「これから」が詰まった特別公演を開催
フルート界のレジェンド、工藤重典さんが、フルートを始めて60年を記念する特別なコンサートを開催します。門下生を中心としたフルート・オーケストラや、フルートの可能性を拡げる編曲、モーツァルトの傑作2曲という魅力的なプログラム。工藤さんに公演にかける思いや、これまでの歩みを伺いました。
音楽レヴュアー・フルート奏者。桐朋学園大学中退。演劇、モダンダンス、日本舞踊などの公演に音楽制作・フルーティストとして多く出演。評論家・レヴュアーとしては、『レコード...
日本を代表するフルート奏者、工藤重典が自らプロデュースする東京チェンバー・プレイヤーズが第3回のコンサートを開く。「フルートと共に60年」と銘打ち、前半には門下生を中心とするフルート属のみによるアンサンブルを指揮、後半に室内オーケストラと協奏曲を演奏するという注目の一夜である。
綺羅星のごとき門下生が中心のフルート・オーケストラは聴きもの
――「フルートと共に60年」というのは?
工藤 生まれが札幌で、3歳くらいからスキーをやっていました。当時札幌オリンピックのための強化合宿にも選ばれたくらいのめり込んでいました。そんな昼間のきついトレーニングの後に、自分を癒すためにフルートを吹いていたんですね。毎週日曜日のレッスンのためにフルートを練習することは、まったく苦にならないほど好きだったんです。
その後20歳でフランスに行きました。当時のパリ音楽院は21歳までに受験しなければいけないので大急ぎで。憧れだったランパル先生が教えていたので、どうしても付きたかったのです。実際には演奏活動がご多忙であまり多くレッスンはしていただけなかったのですが、アシスタントとしてアラン・マリオン先生が基礎から厳しくしっかり見てくれました。
そして23歳の時に第2回パリ国際フルートコンクール、そのあと第1回ランパル国際フルートコンクールで優勝できたのです。とてもラッキーでした。その後40年近くフランスで活動していて、10数年前に正式に帰ってきました。
——今回のコンサートは少し珍しい形ですね。
工藤 前半にフルート・オーケストラ*をやることにして、そちらは僕が指揮をします。メンバーは門下生が中心ですが、サイトウ・キネン・オーケストラなどでずっと一緒に吹いていた岩佐和弘さんなど、仕事を共にした人もいます。
*フルート・オーケストラとは、フルート属のみによる合奏のこと。上はピッコロから、下はアルト、バス、そして普通のフルートより2オクターヴ低いコントラバス・フルート(さらに低い音が出る楽器も存在する)に至る楽器を使う。弦のアンサンブルのような均質性、オルガンのような透明感、そしてフルート属ならではの繊細さが出るのが特徴である。
1980年、第1回JPランパル国際フルートコンクールで優勝。同時にフランス大統領賞も受賞。現在、東京音楽大学教授、昭和音楽大学客員教授、パリエコール・ノルマル教授として、後進の指導にもあたっている。
パリ国立高等音楽院を一等賞で卒業し、23歳の若さで第2回パリ国際フルートコンクールに優勝。ランパルに認められ世界各地で演奏する。世界各地でソリストとして訪問した国は30か国に及び、ディスコグラフィーは70タイトルを超える。秋山和慶、岩城宏之、井上道義、小澤征爾、外山雄三、尾高忠明、佐渡裕、またJ.Pランパル、M.ロストロポーヴィチ、ホルスト・シュタイン、K.ペンデレツキ、J.Fパイヤール、ネヴィル・マリナーなどの名だたる指揮者と60曲以上のフルート協奏曲を演奏してきた。サイトウ・キネン・オーケストラと水戸室内管弦楽団で首席奏者、オーケストラ・アンサンブル金沢で特任首席奏者を歴任
フルートという楽器の未来を予感させるプログラム
工藤 パッヘルベルの「カノン」は、フランス時代に何度も共演して、とてもお世話になったジャン=フランソワ・パイヤールさんへのオマージュです。彼が編曲してご自分のオーケストラで使っていた弦のための楽譜をそのまま、フルート・オーケストラで演奏します。
プロコフィエフの《ロミオとジュリエット》は、2台ピアノのためのヴァージョンに、編曲の内門卓也さんにフルート4本を加えてもらいました。ピアノの工藤セシリアは僕の娘で、共演の千葉皓司さんは彼女の友人。ロシア人の先生の元で勉強した仲間です。ピアノ2台にフルートが入ることで、とても華やかな音楽になると思います。
——後半は室内オーケストラとの共演になります。
工藤 ソリスト陣*も豪華ですから、ぜひ多くの方にいらしていただきたいです。オーケストラというものは弦楽器がとくに素晴らしい。四重奏から始まって大きくなって合奏になったものがオーケストラです。前半のフルートだけによるアンサンブルとの音色の違いを聴いてほしいと思います。
*吉野直子(ハープ)、古部賢一(オーボエ)、福川伸陽(ホルン)、保崎佑(ファゴット)、梶川真歩(フルート)、神田勇哉(フルート)、飯島諒(フルート)
日時:2025年2月17日(月)19:00 開演
会場:サントリーホール
出演
工藤重典(フルート/指揮)
矢崎彦太郎(指揮)
吉野直子(ハープ)
古部賢一(オーボエ)
福川伸陽(ホルン)
保崎佑(ファゴット)
梶川真歩(フルート)
神田勇哉(フルート)
飯島諒(フルート)
工藤重典 フルート・オーケストラ
(リーダー 岩佐和弘、山内豊瑞)
工藤重典 室内合奏団
(コンサートマスター 森下幸路)
工藤セシリア(ピアノ)
千葉皓司(ピアノ)
曲目
クーラウ:10本のフルートのためのソナチネ ト長調 op.20-2
パッヘルベル:カノン ~J.Fパイヤールへのオマージュ~
ビゼー:「アルルの女」第2組曲より パストラル ~ メヌエット ~ ファランドール
プロコフィエフ(アンセル/内門卓也 編曲):バレエ音楽「ロメオとジュリエット」より2台ピアノと4本のフルートのための幻想曲
モーツァルト:フルート、オーボエ、ホルン、ファゴットのための協奏交響曲 変ホ長調
モーツァルト:フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 K.299
チケット:S席 6,000円 A席 4,500円 B席 3,000円 学生 2,000円 ※学生券はカジモト・イープラスでのみ取り扱い
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