「ピアノ・ソナタ第1番 へ短調」――ついにウィーンへ! 師ハイドンにいきなり挑戦?
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ついにウィーンへ! 師ハイドンにいきなり挑戦?「ピアノ・ソナタ第1番 へ短調」
一七九二年十一月二日早朝、ボンを駅馬車で発った。ライン河がモーゼル河へと分岐するコブレンツではフランス革命軍とドイツ軍が砲火を交えていたが、戦闘の休止する夜陰の中をくぐり抜けてウィーンには十一月十日ころ到着した。五年半ぶりのウィーンであったが、今回はハイドンが認めた才能ある青年楽師として、また、皇帝レオポルト二世の実弟マックス・フランツが治める選帝侯領ボンの宮廷楽師としての派遣留学生である。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)37ページより
ついにウィーンへ到着! ハイドンの弟子になったベートーヴェンが初めて発表したピアノ・ソナタです。
ウィーン進出後の本格的なピアノ・ソナタの最初のセットは、師ハイドンに献呈された「三つのソナタ」作品二であるが、これらは全て四楽章構成で書かれている。ピアノ・ソナタと言えば三楽章構成が常識であったハイドンやモーツァルトの伝統様式から脱却、あるいは離脱を宣言したような強い意志表明と言えよう。
——平野昭著 作曲家◎人と作品シリーズ『ベートーヴェン』(音楽之友社)234ページより
しかも第1番は当時の慣例を破って、すべての楽章がへ調(ファからはじまる長短調)で統一されています。いきなり師匠ハイドンとは違うスタイルの作品を作曲、献呈するとは! 若きベートーヴェンは自分の作風を確立することに燃えていたようです。
ピアノ・ソナタ第1番へ短調 op.2-1
作曲年代:1793~1794(ベートーヴェン23~24歳)
出版:1796年3月アルタリア社
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