新春!《美しき青きドナウ》づくし
クラシック音楽界の新年を代表するイベントといえば、やはりウィーンフィル・ニューイヤー・コンサート。
ONTOMOでは毎年必ずアンコールで演奏されるワルツ《美しき青きドナウ》に大注目!
さまざまな指揮者による演奏で、ニューイヤーコンサートを楽しみに待つのもよし、見逃してしまった方、今まで興味のなかった方もウィーン流の“おとそ気分”を味わってみては?
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
あけましておめでとうございます!
クラシック音楽が大好きなあなたも、2019年こそはクラシック音楽を…… というあなたにも、新年の要チェックイベントといえば毎年恒例ウィーン楽友協会ホールで行なわれる、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ニューイヤー・コンサート!
2019年はドイツの指揮者クリスティアン・ティーレマンが初登場。全世界90か国以上に中継され、日本では1月1日(火)[Eテレ]18:45/[NHK-FM]19:15に放送予定です。
さまざまな作曲家が敬意を表する傑作ワルツ《美しく青きドナウ》
そんな華やかなニューイヤー・コンサートのアンコールといえば、ヨハン・シュトラウス2世作曲の《美しき青きドナウ》と、ヨハン・シュトラウス1世作曲の《ラデツキー行進曲》が定番。定番というより、必ずこの2曲で終わるのが恒例なのです。
この2曲でコンサートを締めるのが恒例になったのは、第2次世界大戦後のようですが、そもそも《美しき青きドナウ》はオーストリア第2の国歌ともいわれるほどの人気曲。ワルツ王ヨハン・シュトラウス2世が書いた3拍子のメロディは、今も昔も人々の心を引き付けてやみません。
大作曲家で、シュトラウス2世の友人でもあったブラームスは、サインを求められた際に、この曲の冒頭のメロディを書きつけて、「残念ながら、これはヨハネス・ブラームスの作品にあらず」の署名を添えたと伝えられています。
同時代にドイツ・オペラ界のトップに君臨したリヒャルト・ワーグナーも、この作品の大ファンだと公言し、すこしあとの時代のフランスの作曲家モーリス・ラヴェルはヨハン・シュトラウス2世へのオマージュとして《ラ・ヴァルス》を作曲、こんな言葉を残して大絶賛しています。
ワルツは、あらゆる作曲家を誘惑する形式だ。だが成功したのはほんの一握りの作曲家だけだ。(~中略~)だがほんとうに成功したのはだれだろう。それはヨハン・シュトラウスただひとりだ。彼は奇跡的に、みなが書きたいと思ったワルツを作曲し得たのだ。《美しき青きドナウ》だよ。
―― マニュエル・ロザンタール著 伊藤制子訳『ラヴェル その素顔と音楽論』(春秋社刊)
こんなに皆に愛される《美しき青きドナウ》。ONTOMOではさまざまな指揮者の演奏を集めてみました。皆さんのお気に入りの録音が見つかりますように。
まずは2018年のニューイヤー・コンサートから
2018年には、第30回高松宮殿下記念世界文化賞を受賞したイタリアの指揮者リッカルド・ムーティが14年ぶり5回目の登場。まずは昨年の演奏からニューイヤー・コンサートの雰囲気を味わってみましょう。
ウィーンの伝統を継ぎゆくニューイヤー・コンサート
第1回は1939年、今から80年前にさかのぼります。ナチス・ドイツのオーストリア併合のさなか、ヨハン・シュトラウスのワルツやポルカのコンサートを通して、ウィーンの文化に対する強い気概が見られました。
1955年にはコンサートマスターを務めていたボスコフスキーが初登場。1974年まで弾き振りで人気を博し、ニューイヤーコンサートの伝統を築き上げました。ヴァイオリンを弾きながら弓で指揮を執る様は、さながらヨハン・シュトラウスのようであったといわれています。
1974年のニューイヤー・コンサートの様子はこちらでご覧いただけます。https://www.youtube.com/watch?v=vfgvqWEFa54 (《美しき青きドナウ》は55分頃から)
ウィーン文化の代名詞となったウィンナ・ワルツ
1959年からは各国に中継されるようになり、ニューイヤー・コンサートはウィーンの文化を世界的に知らしめる一端を担うようになりました。中でも特徴的なのが、優雅な雰囲気を醸し出すウィーンフィル特有のワルツです。
ワルツは3拍子の舞曲ですが、ウィンナ・ワルツの特徴はその3拍子のくずし方にあります。同じ曲でも、ウィンナ(ウィーン風)に仕上げると、こんなに印象が変わります。
先にボストン・ポップス・オーケストラが演奏する均等に近い3拍子を聴いてみましょう。
対して、ウィンナ・ワルツ色が濃い演奏をご紹介します。伴奏に注目すると、2拍目が1拍目に寄せられて演奏されていて、ワルツの優雅なステップが思い浮かびますね。
右: 日本でウィンナといったら、やはりこれ? JAS(日本農林規格)によると、ウィンナ・ソーセージとは、太さ20mm未満で羊腸を使用したもの。
小澤征爾も登場
日本人指揮者として唯一、ニューイヤー・コンサートに登場した小澤征爾の演奏を聴いてみましょう。この年のニューイヤー・コンサートは地元紙で絶賛されました。
2日付けで出揃った地元日刊紙の反響は、好意的という以上に絶賛に近い。「日本風?ナイン!、ウィーン風だよ」(クーリエ)、「ワルツの雲の上の踊り」(スタンダード)、「生命力、演奏のよろこび、輝ける火花」(ディ・プレッセ)、「まじめな、ほとんど真面目過ぎるくらい」(クローネン)とおしなべてポジティーヴだ。
――『〔ONTOMO MOOK〕小澤征爾とウィーン』(2002年 音楽之友社刊)
ちなみに、この演奏会のライヴCDはセンセーショナルな売り上げを記録しました。
幻のバーンスタイン登場回、代演クライバーの名演
1992年のニューイヤー・コンサートにはバーンスタインの初登場がアナウンスされていましたが、1990年10月に逝去、代わりに指揮台に立ったのがカルロス・クライバーでした。
滅多に指揮台に立たないクライバーの数少ない録音にはなりましたが、バーンスタインのニューイヤー・コンサートも聴いてみたかったですね(プレイリストはバーンスタインの手兵、ニューヨークフィルと録音したものです)。
カルロス・クライバー指揮 ウィーン・フィルハーモニック管弦楽団(1992年)
レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニックによる録音
歌で楽しむ《美しき青きドナウ》
1890年、フランツ・フォン・ゲルネルトによって改訂版の歌詞がつけられ、ウィーンを讃える内容によって「第二の国歌」といわれるようになりました。
ウィーン少年合唱団の清らかな歌声を通しても、またちがった《美しき青きドナウ》の魅力を発見することができるかもしれません。
変わり種三種
古楽器で聴く当時の響き?/ヨス・ファン・インマゼール指揮アニマ・エテルナ
ヨハン・シュトラウス2世の時代、ウィーンで使われていた楽器による演奏です。弦楽器にはガット弦が張られており、現代とは違った響き方をします。
超絶技巧! ピアノ編曲版/ジョルジュ・シフラ(ピアノ)
ハンガリー出身で、リストの再来と謳われたピアニストのジョルジュ・シフラが編曲・演奏した超絶技巧バージョン。
シュトラウスでスウィング? ジャズ版ドナウ/レス・ブラウン&ヒズ・オーケストラ
アメリカでも大変な人気を誇った《ドナウ・ワルツ》はビッグバンド用に編曲されて、スウィングのリズムで楽しまれたりもしていたようです。
いかがでしたか? 新春《ドナウ》づくし、お楽しみいただけましたでしょうか?
ONTOMOでは、皆さんの生活に音楽をONする記事を続々と更新してまいります。
2019年も、どうぞよろしくお願いいたします!!
まとめて聴くにはこちらから
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