ピアニスト、アレクサンダー・ガジェヴ~”再生”を必要としているあなたに送るプレイリスト
アーティスト×WebマガジンONTOMOがお送りする「ONTOMOプレイリスト・プロジェクト」。今をときめくアーティストの皆さんがテーマに沿ったプレイリストを作成、選曲についてのコメントも公開します。今回はピアニストのアレクサンダー・ガジェヴさんが、Rebirth(再生)をテーマに選曲。
選曲ノート by アレクサンダー・ガジェヴ
変化と不確実性の時代が過ぎたあと、僕たちが必要とするのは“再生”の感触……
アレクサンダー・ガジェヴ
ラフマニノフ:《ピアノ協奏曲 第2番》より「第2楽章」
スビャトスラフ・リヒテル(ピアノ)、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団、スタニスラフ・ヴィスロツキ(指揮)
これ以上に優しく愛情のこもった演奏が他にあるでしょうか?——リヒテルの演奏は、彫刻的な美しさも兼ねそなえています。その組み合わせが、儚(はかな)くも永遠なるものを生み出しているように感じられます。
ラフマニノフ:前奏曲 Op.23-6
ニコライ・ルガンスキー(ピアノ)
ラフマニノフが娘の誕生に寄せて書いた曲です。左手パートの流れるような音の運びと、右手パートが伝えるシンプルな喜びは、いつも僕を微笑(ほほえ)ませます。この曲は、シンプルなものが時に極上の美をもたらすことを僕に思い出させてくれます。
キース・ジャレット:The Wind
僕が英語を学ぶために——たしか15歳か16歳のころです——初めてイギリスに渡ったとき、繰り返し聴いていた1曲です。この曲を聴きながら、いつも大いなる自由と親密な空気を同時に感じていました。
ムソルグスキー:展覧会の絵より〈プロムナード〉〈リモージュの市場〉
アレクサンダー・ガジェヴ(ピアノ)
〈プロムナード〉は、クラシック音楽史上もっとも有名な“幕開け”をもつ曲の一つですね! 冒頭の三音が鳴り響くだけで、人生を肯定するようなエネルギーがふつふつと湧き上がるのを感じます。
〈リモージュの市場〉は、ウィットに富んでいます。僕と一緒に、この曲の予測不可能な展開に身をゆだね、思いきり楽しみましょう!
Improvy:fresh prelude
今や僕の親しい友人であるジョンファ・パクとは、即興演奏の勉強を通して出会いました。彼が世界最高のインプロヴァイザーの一人であることは間違いありません。
この短いプレリュードは、彼のアルバムのオープニング曲です。実は僕自身もレコーディング中にホールにいて、この即興をするよう少しだけ彼の背中を押したので、このトラックをとりわけ誇りに思っています。
ぜひ、このアルバムを全曲通して聴いてみてください!
父に師事し、9歳の時にオーケストラと初共演、10歳で初リサイタルを開いた。17歳で2013年、イタリアの教育機関で最高評価を得た若手だけが競うコンクール「プレミオ・ヴェネツィア」への出場を許され、その覇者となった。その後ザルツブルクのモーツァルテウムでパヴェル・ギリロフに、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学でエルダー・ネボルシンに師事した。
2019年から21年にかけてBBCニュー・ジェネレーション・アーティストとしてロンドンの著名なホールや音楽祭で演奏し、22年にはテレンス・ジャッド賞を受賞。また2023年にはイタリアの権威あるアッビアーティ賞と、スロベニアの芸術家に対する最高の賞であるプレシェーレン賞を受賞した。そして2023/24年シーズンからトリノのウニオーネ・ムジカーレのアーティスト・イン・レジデンスを、また「ノヴァ・ゴリツァ/ゴリツィア欧州文化首都2025」の文化大使を務める。2024年からはイタリアとスロベニアの国境を越えたフェスティバル「Prečkanja–Sconfinamenti」の芸術監督を務めている。
録音はリスト&シューマン作品集(Acousense)やシドニー国際コンクールのライヴ(デッカ)、チェレプニン&プロコフィエフ作品集(CA-vi Music)などがあり、最新『Legends』は2025年8月にOuthere Musicからリリース。
©Vitoria-Nazarova
11月19日(水)19:00 カワイ表参道 コンサートサロン パウゼ
共演:アンドレア・ミアッツォン(ピアノ)
カーキ・ソロムニシヴィリ(指揮)スロヴェニア・フィルハーモニー管弦楽団
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