8つの歌曲(リート)第1曲「ウリアンの世界旅行」——ウリアンさんの自慢話をユーモアあふれる歌曲に
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
ウリアンさんの自慢話をユーモアあふれる歌曲に 8つの歌曲(リート)第1曲「ウリアンの世界旅行」
さまざまな詩人による、ほらふき話、恋のときめき、厭世、死への憧憬、戯言、謙虚といった人生の機微について歌った8曲からなる。
その第1曲はマティアス・クラウディウス(1740~1815)の14節からなる詩。ウリアンはかなりの老人か。きっと酒場で自分の人生の自慢話(つくり話か)を延々と語るが、全14節の第13節までの最後は「それは結構なこった、話の続きをウリアンさん」と酒場の客たちが囃子たてる言葉で結ばれる。
ベートーヴェンの音楽は全12小節で、最初の8小節がウリアンの話、イ短調の中庸の早さでややおどけて歌われる。すると、最後の4小節は、面白いことに独唱歌なのに「Tutti(皆一緒に)」と指示されていて、酔客たちが少しテンポを上げてイ長調で喜劇風にはやし立てる「ソイツァー良かった、それからどうした」といった具合。
ウリアンは先ず北極に、それからグリーンランド、エスキモーの国、アメリカ、メキシコはブレーメンより遠いんだぞ、ムガール帝国の皇帝は大きかった、中国、ベンガル、ジャワにタヒチに、アフリカにも行った。そして分ったんだ、どこもここと同じでおかしなやつがいるもんだ、人間はまったくわしらと同じで愚か者、と歌う。
第14節の最後のトゥッティは「そりゃ、御愁傷様、話の続きはもういいよ、ウリアンさん」。
解説:平野昭
ウリアンさん……なかなか強烈な歌詞ですね。酔ったお客さんたちが参加してはやし立てるという、ユーモアあふれる構成も楽しんで聴いてみましょう。
酔ったお客さんのパートを合唱で歌った録音
8つの歌曲(リート)第1曲「ウリアンの世界旅行」Op.52
作曲年代:1790年以前?(ベートーヴェン20歳以前?)
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