「6つのドイツ舞曲」——トゥーン伯爵夫人の娘たちに献呈したヴァイオリンとピアノの作品
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
トゥーン伯爵夫人の娘たちに献呈したヴァイオリンとピアノの作品 「6つのドイツ舞曲」
1796年2月中旬から半年に及ぶ演奏旅行に出たベートーヴェンは、最初の2ヶ月をプラハで過ごしている。プラハまではカール・リヒノウスキー侯爵と同伴であった。もともとこの旅行は侯爵の誘いに応じたものだ。
このプラハ滞在中にはかなりの作品が書かれているが、このヴァイオリンとピアノの二重奏によるドイツ舞曲(レントラーやワルツの原型ともいわれる2人1組で踊る3拍子の舞曲)は、ピアノもヴァイオリンも初心者用の音楽となっている。それでも連続して演奏することで、実用舞曲として使うことができる。
基本的に8小節を繰り返す構造で、全体が16小節となっている。第3曲と第6曲だけは、中間部に16小節のトリオ部をもち、全体で32小節。曲は順に、ヘ長調、ニ長調、ヘ長調、イ長調、ニ長調と進み、最後がト長調となっている。
写本には、トゥーン伯爵夫人の娘たちに献呈する旨が記されている。トゥーン伯爵夫人は、リヒノウスキー侯爵夫人マリア・クリスティアーネの母。
しかし、クリスティアーネはモーツァルトの優れたピアノの弟子であり、4歳下の妹マリア・カロリーネも優れたギター奏者で歌手でもあったので、この作品のピアノ・パートは、そこそこの演奏者であった1歳上の姉でラズモフスキー伯爵夫人となったマリア・エリーザベトを想定したのかもしれない。
いずれにせよ、トゥーン伯爵夫人の3人の娘のうち、2人を想定して書かれたものだ。
解説:平野昭
トゥーン伯爵夫人の娘たち、
長女:マリア・エリーザベト(ラズモフスキー伯爵夫人となる)
次女:マリア・クリスティアーネ(モーツァルトの弟子、リヒノウスキー伯爵夫人となる)
三女:マリア・カロリーネ(優れたギター奏者で歌手)
という、ものすごい3姉妹ですね……。
作品は、初心者向けの聴きやすいドイツ舞曲なので、1日の終わりにほっと一息ついて聴いてみてください。
「6つのドイツ舞曲」WoO42
作曲年代:1796年(ベートーヴェン26歳)
出版:1814年7月
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