2020.04.05
おやすみベートーヴェン 第112夜【天才ピアニスト時代】
「ロンド第1番 ハ長調」——幻想曲の趣をもつ表情豊かな小品
生誕250年にあたる2020年、ベートーヴェン研究の第一人者である平野昭さん監修のもと、1日1曲ベートーヴェン作品を作曲年順に紹介する日めくり企画!
仕事終わりや寝る前のひと時に、楽聖ベートーヴェンの成長・進化を感じましょう。
1792年、22歳のベートーヴェンは故郷ボンを離れ、音楽の中心地ウィーンに進出します。【天才ピアニスト時代】では、ピアニストとして活躍したウィーン初期に作曲された作品を紹介します。
幻想曲の趣をもつ表情豊かな小品 「ロンド第1番 ハ長調」
全体で135小節、演奏は5〜6分の小品だが、大変にユニークで中間部(第52~91小節)にはハ短調、変ホ長調、変イ長調といった転調で、ドラマティックな展開が見られる。
開始部分がいかにも古典的な初心者向けのハ長調の単純な主題のためか、演奏機会に恵まれていないが、内容は単純なロンドではなく、変奏表現と即興性に富んだ幻想曲の趣ももっている。
はっきりした作曲時期は不明だが、1797年の10月に《クラヴサンあるいはピアノフォルテのためのロンド》のタイトルで、ウィーンのアルタリア社から初版出版されているので、おそらく1796年から97年夏までの間に成立したものと思われる。このときの出版では、作品番号は付けられていないかった(4月18日公開予定のOp.51-2のロンド第2番で改めて解説)。
解説:平野昭
後半にいくにつれ、さまざまな表情が楽しめる作品です。4月3日に公開した「ヴァイオリン・ソナタ第3番」の解説でも取り上げた通り、転調を多用するのはベートーヴェンの独自性の打ち出し方のひとつでもありました。
作品紹介
「ロンド第1番 ハ長調」Op.51-1
作曲年代:1797年?(ベートーヴェン27歳?)
出版:1797年
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