国際色豊かな結果に!第19回東京国際音楽コンクール〈指揮〉の審査のポイントに「音楽性は人間性」
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
10月3日(日)、東京オペラシティ コンサートホールにて、第19回東京国際音楽コンクール〈指揮〉本選が行なわれ、入賞者が決定した。
結果は以下のとおり。
第1位/聴衆賞: José SOARES / ジョゼ・ソアーレス(ブラジル)
第2位 : Samy RACHID / サミー・ラシッド(フランス)
第3位/特別賞・齋藤秀雄賞/オーケストラ賞(新設): Bertie BAIGENT / バーティー・ベイジェント(イギリス)
入選・奨励賞: Satoshi YONEDA / 米田 覚士(日本)
コロナ禍で開催が危ぶまれた今回、尾高忠明審査員長の話によれば、延期するときのために来年の仮押さえもしながら、主催する一般財団法人 民主音楽協会は「絶対に今年開催する」という信念のもと進めていたそう。
開催を決定したあとも、応募者が少ないかもしれない、参加者や審査員は来日できるのかなどと懸念していたが、世界49カ国・地域から過去最多の331名もの若き指揮者が応募、3日間でビデオ審査するのは「死に物狂いだった」が、すばらしい演奏が多く、心地よい時間だったと話す。
予選への通過者14名のうち2名は棄権になってしまったが、参加者は14日間の隔離期間を経て、1次予選では12名、2次予選では8名が東京フィルハーモニー交響楽団を指揮し、本選ではファイナリスト4名が新日本フィルハーモニー交響楽団とともにステージに上がった。
なお、錚々たる顔ぶれが並ぶ審査員9名は、無事に全員がそろっての審査になったが、そのうち3名は、ディスタンスをとる必要から2階席で審査することになった。
フランス、ブラジル、イギリス、日本と、出身地の異なる4名のファイナリストは、本選前半には課題曲であるロッシーニのオペラ《どろぼうかささぎ》序曲を、後半にはカラーの異なる自由曲を指揮し、それぞれの音楽の個性を発揮した。
3年前の前回大会では1位から3位は日本人という快挙であったが、今回は一気に国際色豊かに、そして全員が20代と若返った。
10月4日(月)の記者会見で審査員が語った審査のポイントや今回の感想について、一部をご紹介しよう。
「音楽性というのは人間性だと思います。いかにすばらしい人間で、それが舞台に出るか出ないか。自分自身をさらけ出すことが大切で、自分を大きく見せようとしても出てきません。棒がうまくても、音楽が何も出てこない指揮者にはなってほしくない」(尾高)
「一人ひとりがどれだけやりたい音楽があるのかを見ていました。日本人の参加者に関しては、本当にやりたい音楽はどこにあるのかなというところが少し見づらかった」(高関健)
「若くて熟成した音楽性をもっていることは珍しいことだと思いますので、とてもすばらしいコンクールだったと思います」(ユベール・スダーン)
「指揮のテクニックは筆跡とまったく同じで、良し悪しはない。自分が感じるものを表現し、オーケストラのリアクションを得るのが大事。とてもよく従う、サポートしてくれるオーケストラだったと思います」(オッコ・カム)
「9名の審査員が本当に心を配って、オープンに話をしながら審査をした。ここで入賞したということは、世界に認められたと言ってよいと思います」(シャーン・エドワーズ)
本選のオンライン配信は、11月3日(水・祝)まで無料で視聴できる。これから何十年もの指揮者人生を歩むであろう若き俊英の門出を見逃すことのなきよう!
入賞者のプロフィール、将来に向けたひと言
見逃し配信視聴期間: 11月3日(水・祝)18:00までに視聴券を申し込み、23:59まで視聴可能
料金: 無料 ※申し込みはこちら
プログラム:
前半審査/課題曲
G.ロッシーニ:オペラ《どろぼうかささぎ》序曲
後半審査/自由曲
No.143 サミー・ラシッド[フランス]
サン=サーンス作曲:交響曲第3番 ハ短調《オルガン付き》Op. 78より第1部から Adagio – Allegro moderato、第2部
No.205 ジョゼ・ソアーレス[ブラジル]
I.ストラヴィンスキー作曲:バレエ音楽《ペトルーシュカ》(1947年版)より第1部、第2部、第4部
No.218 バーティー・ベイジェント[イギリス]
R.シュトラウス作曲:交響詩《死と変容》 Op. 24, TrV 158
No.102 米田覚士[日本]
P.I.チャイコフスキー作曲:幻想的序曲《ロメオとジュリエット》
演奏: 新日本フィルハーモニー交響楽団
審査委員:
委員長:尾高忠明
委員:シャーン・エドワーズ、広上淳一、オッコ・カム、ライナー・キュッヒル、準・メルクル、ユベール・スダーン、高関健、梅田俊明
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