レポート
2020.01.24
上質な本場の公演なら「クラシカ・ジャパン プラス」

いま観るべきクラシックの映像を毎月特集! 聴き比べにもオススメの動画配信サービス

みなさんは、動画でクラシックを楽しんでいますか? 無料で観られるものがあふれている世の中ですが、時間は有限! 上質で貴重な映像だけを、旬なタイミングでオススメしてほしい人は、「クラシカ・ジャパン プラス」を試してみよう!

体験した人
長井進之介
体験した人
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

取材写真:各務あゆみ

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ピアニスト&音楽ライター長井進之介が、1ヶ月試してみた。

なかなか日本では聴けない、観られないオーケストラピアノ室内楽の公演のほか、オペラバレエの舞台、アーティストのドキュメンタリーなどの動画を配信する「クラシカ・ジャパン プラス」。

毎月特集が組まれ、たとえば、2月はアカデミー賞の開催を記念した映画音楽特集や“ヴァイオリンの女王”アンネ・ゾフィー・ムターの来日記念特集、そして「年間特集」として生誕250周年のアニバーサリー・イヤーを迎えたベートーヴェンの作品による公演を月替わりで楽しめるなど、話題のアーティストや演目、そして“旬”の公演などをじっくり鑑賞し、深掘りすることもできます。

2月の特集より番組を紹介!

モーツァルト週間2019『タモス』
モーツァルト週間2019『タモス』
モーツァルトの生地、ザルツブルクで毎年モーツァルトの誕生日1月27日前後で開催される「モーツァルト週間」。60年以上の歴史をもつ音楽祭は、2019年、芸術監督にメキシコ出身のロランド・ビリャソンを迎えた。写真はモーツァルトの劇音楽『エジプトのターモス』をもとに再創造した舞台。©Matthias Baus
ドキュメンタリー『アンドレ・プレヴィン~2つの世界をつなぐ橋』
ドキュメンタリー『アンドレ・プレヴィン~2つの世界をつなぐ橋』
写真は、アンネ=ゾフィー・ムターと元夫で作曲家、指揮者、ジャズピアニストとしてもマルチに活躍したアンドレ・プレヴィン。アンネ=ゾフィー・ムター来日記念特集では、モーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲全集」と、ブラームスの「ヴァイオリン・ソナタ全集」のほか、ドキュメンタリー番組を2本配信。©Lillian Birnbaum
「ハリウッド in ウィーン 2019」
「ハリウッド in ウィーン 2019」
前半にはアカデミー賞受賞作がずらりと並び、後半は『イングリッシュ・ペイシェント』などで知られる作曲家ガブリエル・ヤレド自身が、ピアノで出演。©Ludwig Schedl
「ヤンソンス&ウィーン・フィル定期公演2019」
「ヤンソンス&ウィーン・フィル定期公演2019」
ムジークフェライン(ウィーン学友協会)竣工150周年特集では、2019年11月に急逝した指揮者マリス・ヤンソンスのウィーン・フィルとの最後の定期公演となった貴重な映像のほか、フランス・ウェルザー=メスト指揮の2017年の定期公演が配信される。©Terry Linke
ホフマン&セリグ『ベートーヴェン:チェロ・ソナタ全集』
ホフマン&セリグ『ベートーヴェン:チェロ・ソナタ全集』
2020年の1年間はベートーヴェン生誕250周年の特集。2月は、欧米で高い評価を受けているチェロのゲイリー・ホフマンとピアノのデイヴィッド・セリグによる共演で、ベートーヴェンのチェロ・ソナタの第1〜5番全曲が2/14から毎週金曜日に日本初放送。©Megane Fontaine

せっかくの名演奏だから、どのように生み出されるのかも味わいたいですよね。映像は、何台ものカメラで撮影され、音楽に合わせてクローズアップされるので、奏者や歌手の呼吸、身体の使い方をじっくりと見て、一つひとつの音の意味や、その裏にある感情を感じることができます。

特に、オペラのような舞台芸術では、歌手たちがどのような感情で歌っているのかということが伝わってきますし、オーケストラのコンサートでは、コンサート会場では背中しか見えないような指揮者の表情や演奏者同士のアイコンタクトなど、コンサートのライヴ感を味わえるだけでなく、まるで自分がその中の一人になったかのような感覚も体験できました。

イタリア・ヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場「ニューイヤー・コンサート2017」。会場外の映像では、街の雰囲気や建物の素晴らしさも感じられる。
豪華絢爛な劇場や聴衆の表情も観られて、ライブの中にいるような気分に。
「クラシカ・ジャパン プラス」を利用する際は、Webサイト(https://plus.classica-jp.com/about)から会員登録し、そのあと視聴する各端末、スマホやタブレット、PC、FireTVでアプリをダウンロードしてログイン。
パソコンで見ていたものの続きを外出中にスマホですぐに見るなど、複数の端末で利用できるので便利でした!

マイブームのバレエを比べてみた!

私の場合は、昨年11月、ドイツでチャイコフスキーの《くるみ割り人形》を鑑賞しバレエ熱が再燃したため、世界各地で上演が多発する12月に、「クラシカ・ジャパン プラス」でチャイコフスキーのバレエ《くるみ割り人形》を“観比べ”してみましたバレエでは衣装・演出・美術の比較など、“映像だからこそ”の感動ポイントがたくさんあります。まず、「マイリスト」にお気に入りになりそうな《くるみ割り人形》を3つ登録しました。

筆者のお気に入りを登録した「マイリスト」。
観比べた《くるみ割り人形》
  • ゼンパーオーパー・バレエ
    E.T.A.ホフマンの原作を重視し、モダンなテイストを取り入れた演出。
  • マリインスキー・バレエ
    ファンタジーを前面に押し出した華やかな舞台。
  • プラハ国立劇場
    バレエ部門の芸術監督ペトル・ズスカ振付・演出による“くるみ割り人形が登場しない”、新たな世界観による舞台。

この比較で、《くるみ割り人形》のさまざまな解釈を味わうことができました。演出や衣装には特に“お国柄”が出やすいのですが、やはり何でもスケールの大きいロシアのマリインスキー・バレエの演出と衣装は「これぞバレエ!」という華やかさに溢れています。ゼンパーオーパー・バレエやプラハ国立劇場は少し“オトナ向け”の演出で、洗練された印象を受けましたが、派手好きな私としてはやはりマリインスキー・バレエが一番のお気に入りでした。

筆者のいちばんのお気に入りは、マリインスキー・バレエ2011でした。

衣装や仕掛けが豪華な野外のオペラも!

劇場に行きたくても頻繁には難しいオペラにも、注目してみました。

2013年のブレゲンツ音楽祭で上演された《魔笛》は、映像ならではの醍醐味を体感できました。野外コンサートは生で鑑賞できても、衣装や細かな仕掛けまで見えづらいですが、この配信映像では最高のアングルでそれらを味わえてしまうのです。

特に注目したのが、夜の女王の衣装。鏡のように輝きを放つ衣装は、第2幕で彼女が悪役となると大きく変化します。楽曲や演奏だけでなく、衣装によってもキャラクターの内面の変化を味わうことができるこの演出、今回の配信映像でとても鮮やかに楽しむことができました。

ブレゲンツ音楽祭2013、コンスタンツ(ボーデン)湖上舞台の《魔笛》。演出家デイヴィッド・パウントニーはさまざまな仕掛けを駆使している。
夜の女王の衣装は、特に目を引くものであった。
夜の女王は三角錐の上にいます。幻想的!

ピアノ好きな人、習っている人へ

ピアノを弾くうえでは、さまざまな演奏を聴くことはもちろん、身体をどのように使って演奏しているのかをじっくり観察することも重要です。指や腕の動きに気を配ることはもちろんですが、身体全体をコントロールして腕や指に力をつたえなくてはなりません。

1月は、ウィーンを代表するピアニスト、ルドルフ・ブッフビンダーの演奏で、ベートーヴェン・イヤーの幕開けにふさわしい、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲をじっくりと楽しむことができます! ベートーヴェンが人生のあらゆる時期に書いたピアノ協奏曲を味わうチャンスです。

楽譜に徹底的に向き合うブッフビンダー。自分の独奏パートはもちろん、オーケストラのパートもすべて頭に入ってしまっています。なので完全に暗譜で演奏し、自分が細かい音型を弾きながらも、オーケストラに自分の演奏と目力(!)でタイミングや表現を伝えています。鍵盤を見なくても鮮やかな演奏をしながら、音楽全体の流れに絶えず気を配り、オーケストラのメンバーに意志を伝える……しかもそれを最高の形でやり遂げてしまうのか! と感激せずにはいられません。

ブッフビンダー&ウィーン・フィルのベートーヴェン「ピアノ協奏曲第1番』。
ブッフビンダーの目力!
ブッフビンダーのドキュメンタリー「ベートーヴェンのピアノ協奏曲を語る」は、曲や彼の演奏への理解が深まります!

家庭でシェアしよう

「クラシカ・ジャパン プラス」は、パソコンスマートフォンタブレットでも楽しめますが、ご自宅にテレビがある方は、ぜひ“流しっぱなし”にすることもオススメします。

「Amazon Fire TV Stick」をテレビに接続して鑑賞。設定は簡単です。ちなみに、「Chromecast」にも対応しているとのこと。
仕事の休憩時間に、ちょっと視聴というときはパソコンで。
外出時はスマホで観ています。

「クラシカ・ジャパン プラス」には、アーティストの自身の音楽観を熱く語る番組や、彼らの生活に密着したドキュメント、教育的なコンサートなど、お子さんの情操教育にもピッタリな番組が定期的に放送されます。「家族みんなでコンサートに出かけたいけれど、子どもが小さいし、移動が大変……」という場合にも、周りを気にすることなく、ゆったりと楽しめます。ただ“流しっぱなし”にするだけで、生活の中に自然と音楽を取り入れられますね。

ハリウッド映画の音楽を一流オーケストラの演奏で楽しめる「ハリウッド in ウィーン」といった番組もあります。いきなりクラシックを聴くのにはまだ壁を感じる……という方にもオススメですよ。

サウンドトラック界のバッハ一族、ニューマン・ファミリーの魅力を堪能する「ハリウッド in ウィーン2014」。『トイ・ストーリー』シリーズなど、多くのピクサー作品で知られる作曲家ランディ・ニューマンが、指揮やピアノ、歌を務めた公演。ステージ上に映し出されたアニメーションや、華やかな照明も楽しい。
「ハリウッド in ウィーン2017」の第10回公演は、アメリカの人気映画作曲家ダニー・エルフマン特集。映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』など、鬼才ティム・バートン監督との強力タッグで知られるエルフマン。楽友協会ホールと並ぶウィーンのクラシックの殿堂コンツェルトハウスで、彼自身の凄みのある歌声も披露!

結論!

演奏者の指さばき息遣い視線から、衣装や装置の華やかさなどはもちろん、なかなか行けない海外のホールや教会といった会場の美しさもじっくりと味わえる「クラシカ・ジャパン プラス」。

有名曲やクロスオーヴァー作品の演奏から、珍しい演目や演出も味わえる公演、さらに演奏者の普段見られない素顔や音楽観にも触れることができるドキュメントインタビュー番組なども充実しており、クラシック初心者から上級者まで大満足の内容。もし生放送の番組を見逃してしまっても、一部の番組はオンデマンドで楽しめるので安心です!

「クラシック音楽の魅力ってなんだろう?」「クラシック音楽を楽しむにはどうしたらいいんだろう?」という方はもちろん、「何か違った角度からクラシックを楽しみたい」という方にも、素晴らしいガイドになってくれること間違いなしのサービスです。きっとあなたの生活に新しい風を運んでくれることでしょう。

※この記事で紹介した番組は、取材時に視聴可能なものであり、現在は配信が終了している場合があります
※紹介した番組の画面キャプチャは、すべて「クラシカ・ジャパン プラス」のものです

体験した人
長井進之介
体験した人
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

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