
ベルリン・フィルハーモニーの改修問題、代替会場は?気になるベルリン文化施設のゆくえ

3月のドイツ・ベルリンの音楽シーンから、ニュースとコンサートのレポートをお届けします。

1975年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、2000年よりベルリン在住。著書に『明子のピアノ』(岩波ブックレット)、監修を務めた『おとうさんのポス...

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地「フィルハーモニー」が、2032年から大規模な改修工事に入ると見られている。3月初頭、ベルリンの地元紙『モルゲンポスト』が報じた。
ハンス・シャロウンの設計で名高いフィルハーモニーは、1963年にヘルベルト・フォン・カラヤン指揮のベートーヴェン《第九》でオープニングを迎えて以来、じつはまだ一度も大規模な改修は行なわれていない。そのため、建物の設備や防火対策について早急な対応が求められている。ベルリン・フィルの総裁(インテンダント)、アンドレア・ツィーチュマンとしては、2032年の楽団創設150周年をフィルハーモニーで祝ってから、改修工事に入りたい意向のようだ。
焦点となるのが、その間の代替会場である。1990年代初頭、フィルハーモニー大ホールの屋根の改修工事のため、ベルリン・フィルはフィルハーモニー室内楽ホールと東側のコンツェルトハウスを代替会場に使用したことがあるが(期間は約1年半)、今回の改修の規模はその比ではない。問題は、フィルハーモニーの2,200席を収容できる適切な会場がベルリンでなかなか見当たらないことである。
現在候補に挙げられている一つが、西側にある国際会議場(ICC)。1979年に建てられた未来的な建築だが、音響の評判はよくない。もう一つは、旧テンペルホーフ空港の広大な格納庫で、筆者には2008年のフィルハーモニー火災事故の直後、サイモン・ラトルとベルリン・フィルが急きょここでコンサートを行ったことが思い出される。いまもときどき大規模な舞台公演で使われるが、ここを代替会場として使うとなると、老朽化した設備を改修する必要が出てくるという。
現在、ベルリンの文化施設では2023年夏から長期改装中のコーミッシェ・オーパーに加え、フィルハーモニーの向かいに位置し、同じシャロウンが設計した国立図書館が2030年から改修工事に入ることが発表されたばかり。その見積もり額は11億ユーロで、期間はなんと11年! 国際的な芸術都市ベルリンの顔ともいえるベルリン・フィルの本拠だけに、その行方が注目される。

©Heribert Schindler / Berliner Philharmoniker
84歳でベルリン・フィル定期デビューしたサバールがフィルハーモニーで公演

そのフィルハーモニー大ホールで、3月16日、ジョルディ・サバール指揮のコンサートが行われた。今シーズン、サバールは84歳にしてベルリン・フィルの定期演奏会にデビューを果たしたほか、自ら設立したエスペリオンXXIとの客演、さらにカラヤン・アカデミーの若手音楽家との共演など、音楽界の泰斗たる貫禄を示してきたが、その一連の締めくくりとなる公演だ。
今回は「ル・コンセール・デ・ナシオン」と合唱アンサンブル「ラ・カペラ・ナシオナル・デ・カタルーニャ」を引き連れて、モーツァルト「レクイエム」と「クラリネット協奏曲」という、この作曲家最後の年に生まれた極めつけの2作品が選ばれた。
「クラリネット協奏曲」の独奏は、イタリアのフランチェスコ・スペンドリーニ。彼は初演者のアントン・シュタードラーが使用した特徴的なベル(朝顔)を持つバセット・クラリネットのレプリカを用いて、冒頭のトゥッティ(総奏)から共に奏でる。きわめて室内楽色の強い音楽づくりでありながら、ソロでは憧れや悲しみ、諦念が混じり合った無限のニュアンスを音に響かせ、絶品だった。
後半の「レクイエム」では、サバールが指揮する直前、「私たちは『平和への祈り』としてこの作品を演奏します」とドイツ語で語りかけ、聴衆から大きな拍手が沸き起こった。先ほどまでソロを吹いたスペンドリーニもバセット・ホルンで参加。オーケストラの後ろに合唱メンバーが半円状に囲み、その間に3人のトロンボーン奏者を個々に配すなど、まさに器楽と声楽が一体となった表現への意思が感じられる。
「怒りの日」などサバールの指揮は充分な劇性を放ちながらも、響きの丸み、やわらかさを失わない。それは、いまを生きるわれわれへの慰めであるとともに、壊れた世界の再生への希求であるように思われた。
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