レポート
2023.11.21
いきものスケッチブック ファイナル

生き物をテーマに学びと遊びとアートが融合した子ども向けワークショップ、最終回!

作曲家の春畑セロリさんが子どもたちと一緒に生き物とアートを結ぶ企画、『いきものスケッチブック』プロジェクトが最終回を迎えました。「夜に咲く花」「擬態(ぎたい)」「トゲ」をテーマにワークショップが行なわれ、最後には楽器を製作してアンサンブルも! その様子を飯田有抄さんがレポートします。

取材・文
飯田有抄
取材・文
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

写真:飯田有抄

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作曲家の春畑セロリさんが子どもたちと一緒に生き物とアートを結ぶ企画、『いきものスケッチブック』プロジェクト。生き物についていろいろ教えてくれる蝦名元先生と、色や形を描いたり工作を教えてくれる秋田彩子先生とともに、葉っぱ、クラゲ、チョウ、ペリカンなど、これまでいろんな動植物に出会ってきました。

そんなプロジェクトもいよいよ最終回です。題して「いきものにアプローチ!ファイナル〜 音楽と美術と理科の総合ワークショップ」。会場は中目黒GTプラザホール、約100名の親子が参加するワークショップが開催されました。

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「ゼツメツキグシュノオト」を聴こう

毎回ワークショップの最初は、セロリさんのピアノ演奏をみんなでじっくり聴きます。ピアノ曲集「ゼツメツキグシュノオト」の音楽を味わい、植物や動物たちにみんなで思いを馳せます。

最初に演奏してくれたのは、「リュウキュウコノハズク」です。リュウキュウコノハズクは、南の島に住んでいるフクロウの一種。沖縄の波照間島で鳴いているリュウキュウコノハズクの実際の声を、録音で聞きました。森の中をそよぐ風の音、虫の声に混じって、コホ〜 コホ〜と鳴くコノハズクの声。みんなじっと耳を澄ませていました。

それに続けてセロリさんがピアノで演奏。素敵な空間が広がります。

春畑セロリ(はるはた・せろり)
作曲家。東京藝術大学卒。鎌倉生まれ、横浜育ち。
舞台、映像、イベント、出版のための音楽制作、作編曲、演奏、執筆、音楽プロデュースなどで活動中。さすらいのお気楽者。
主な著作に「ゼツメツギグシュノオト」「オヤツ探険隊」「空をさわりたい」「できるかな ひけるかなシリーズ(全7冊)」「連弾パーティー・シリーズ(全5冊)」「きまぐれんだんシリーズ(全6冊)」(以上、音楽之友社)、ピアノ曲集「ポポリラ・ポポトリンカの約束」「ぶらぶ〜らの地図」(全音楽譜出版社、CDは日本コロムビア)、こどものためのピアノ曲集「ひなげし通りのピム(カワイ出版)」などがある。

さらにもう1曲。今回のワークショップの申し込みの際に、みなさんに「ゼツメツキグシュノオト」から聴いてみたい曲をアンケートで答えてもらいました。人気曲の第1位に輝いたのは、「イリオモテヤマネコ」。

野生のイリオモテヤマネコは、ちょっと怖そうにも見えるけれど、セロリさんの曲集では、お母さんネコの子守唄として作曲されました。じんわりと温かい音楽に、みんなうっとり。

ワークその1「夜に咲く花」

さて、ここからは今日の最初のテーマです。まずは「夜に咲く花」。

誰も見ていない夜の闇で、どうして花が咲くのでしょう? 蝦名先生がスライドでいろんな種類の「夜に咲く花」を見せてくれながら、教えてくれました。

蝦名元(えびな・つかさ)
一般財団法人 進化生物研究所 研究員・学芸員。東京農業大学・佼成学園女子中学高等学校・東京農業大学稲花小学校 非常勤講師。博物館・科学館等での展示・講座など、科学の楽しさや生きものをテーマにイベントも実施。
著書:『生きものラボ! 子どもにできるおもしろ生物実験室』(講談社)、『今を生きる古代型魚類-その不思議なサカナの世界-』(東京農業大学出版会・共著)、『群れ MURE 群れるって美しい。』(カンゼン・共著・監修)、教育情報誌『たのしい学校』(大日本図書・連載中)。

「月下美人(ゲッカビジン)は、その名の通り月の下で咲く大きな白い花です。カラスウリは、見たことがある人もちらほらいるかな? 東南アジア、日本でも山の方で見ることができます。レースみたいに綺麗な花びらだね。ヨルガオはアメリカ原産。アサガオ、ヒルガオとあるけど、夜に咲くからヨルガオ。日本でも見られます。アサガオが白くなったような花です。待宵草は、俗にツキミソウとも呼ばれます。咲くときは一瞬でハラハラ〜と開きます。

こうしたお花はなぜ夜に咲くのでしょう? ではここでクイズです。

1:すずしくて、花が長持ちするから?
2:朝一番乗りで咲いていたいから?
3:夜に動く動物と仲良しだから?

正解は3番です。みんなたくさん手があがりましたね。

カラスウリは、夜に飛ぶ蛾が、花粉を運んでくれます。花は生き残るために種子を作ります。できるだけたくさん受粉したい。それが作戦。日中はいろんな花が咲いていてライバルが多いね。でも夜はライバルが少ない。夜に活動する動物、たとえばコウモリなどにも花粉を運んでもらいます。

花の姿形も重要です。どの花も大きいね。色は白っぽい。暗闇で月や星の灯りでも目立つためです。また暗闇のため、アピールには色が重要ではないという場合もあります」

なるほど。ちゃんと夜に咲くのにも、その姿形にも理由があるんですね。

今度は秋田先生の出番です。

「それでは夜に咲いて虫たちを誘えるような綺麗な花を、みんなで作ってみましょう!みなさんに配った袋の中に、傘みたいなお花のベースとレースペーパーが入ってるので、これを切って貼って花びらを作っていきましょう」

秋田彩子(あきた・あやこ)

ものづくり教室主宰。東京藝術大学美術学部芸術学科卒。2014年、Qinari(キナリ)研究所設立。CreoBOX,YES international school アートクラス担当。

子どもたち一人ひとりが、アートのみならずあらゆる物事を自分で考え表現できるように、様々な素材や技術、文化や価値観に触れ、様々な世界に出会える時空間を提供している。自然の中での体験と美術制作を融合させるQinari軽井沢出張所も不定期開催中。

みんなそれぞれに工夫して、お花をふわふわに仕上げていきます。大きくて美しいお花は、動かして開くことができる仕掛け。すごい!

「みんなでお花を開いてみせて! お〜できたね。

じゃあ、「夜に咲く花」の曲を作ろう! 今から聴くフレーズのどっちが好きかな?」

セロリさんはピアノで、Aタイプ(高音でフワッとしたモチーフ)、Bタイプ(低音から駆け上がるようなモチーフ)を弾きます。どっちが好き? と手を挙げてもらうと、どうやらAが人気です。続けてCタイプ、Dタイプから、好きなほうを選びます。

最後に、セロリさんが1曲を通して弾きます。モチーフが出てきたところで、みんなでお花を開きます。ふわ〜っときれいなお花がたくさん咲きました。

ワークその2「擬態(ぎたい)」

お次のテーマは「擬態」。ギタイ。なんだろう。知っていますか? 「動物の色や形が、葉っぱや石とそっくりになって、身を隠すことを『擬態』といいます」と蝦名先生が教えてくれました。みんなの手元には、「擬態ぬりえ」なるものが!

秋田先生が描いた森のイラストですが、なんとここにはたくさんのムシたちが擬態しているんです。

「葉っぱのような形をしたコノハムシやコノハチョウ、コノハバッタ、花のようなハナカマキリ、枝みたいなナナフシなどが隠れています。実は10匹以上いますよ。さぁ、何匹見つけられるかな? みんな色鉛筆で、擬態しているムシを見つけて塗ってみてください! 制限時間は1分!」

みんな一生懸命探してぬりぬり。たくさん見つけられた子もいたみたい。

「何匹塗れた? 5匹見つけたひと〜、6匹見つけたひと〜……」

手を挙げる人がどんどん減っていって、最後は13匹塗れた子が一人だけいました!

「すごいね。実は全部で14匹隠れていました!」

絵でも見つけにくいけど、実際には本当に葉っぱそっくりで見つけにくい! そう実感できたのは、蝦名先生がムシの標本を持ってきてくれたから。「ナナフシ」の標本を見ると、とても大きいことに驚きます。

「実は世界最大の昆虫なんです。マレーシアなど、東南アジアに生息しています。色も形もカモフラージュしてますね。すっすっとは歩かず、風に吹かれる枝のようにゆらゆらしながら歩きます」

セロリさんが作った「ナナフシ」のモチーフはパキパキっとした音楽。それに合わせ、みんなで「風に揺れるナナフシ」みたいな動きをしてみます。

お花のような格好で、寄ってきたムシをパクッと食べちゃうのはハナカマキリ。セロリさんはふわ〜んとしたモチーフの音楽で表現しました。

チョウは葉っぱから青空まで、いろんなものに擬態するそうです。ゆったりした音楽で、セロリさんがチョウを表現してくれました。

「今から曲を弾くので、“擬態モチーフ”に合わせて、そのムシのポーズをやってみよう♪」

野原の場面から始まって、みんなでいろんな虫に変身し、植物に擬態しました。

さて、ここで休憩です。休憩中もみんな興味津々で、蝦名先生が持ってきてくれたムシの標本に親子で釘付け!

ワークその3「トゲ」

蝦名先生が「トゲにはどんな意味があるのか」を解説してくれました。

「トゲのある植物といえば、サボテンのトゲはみんなも見たことあるでしょう。海のハリセンボンやウニ、実はモグラの仲間であるハリネズミもトゲがあるよね。

動物も植物も、自分の身を守るという意味があります。自分からトゲで襲っていくタイプの動物ではなくて、敵から身を守るために、トゲをまとっているんです。

でも、実は違った目的でトゲを持つ生き物もいます。

たとえば「ライオンゴロシ」。この種子はいろんな方向にトゲが伸びていて、どこを持っても手に引っかかります。「ツノゴマ」は「悪魔の爪」なんていうふうにも呼ばれます。トゲのカーブが特徴です。「ウンカリーナ」はとても細かいトゲが多くて、触るのも危険。手にくっついたのを取ろうとすると反対の手にくっつきます。ウニに似ています。

じゃあ、こうした植物の種子のトゲの目的はなんでしょう?

1:地面に止まろうとするため
2:動物にくっついて運んでもらうため
3:転がって動くため

正解は2番です。遠くまで運んでもらうためなのです」

トゲで動物にくっついて遠くまで運ばれ、その地に根付いて育っていく。生き延びる作戦なんですね。

ところで、ヘンなニックネームのムシも紹介されました。「トゲアリトゲナシトゲトゲ」。これは「トゲハムシ」の仲間。

トゲハムシのあだ名が「トゲトゲ」。トゲのない「トゲナシトゲトゲ」が発見されて、そのあとトゲのある「トゲナシトゲトゲ」が発見され「トゲアリトゲナシトゲトゲ」と呼ばれるようになったのだとか。ややこしい!(笑) とてもちっちゃい生き物なのだそうです。

それを聞いてセロリさんは、「『トゲトゲのテーマ』『トゲナシトゲトゲのテーマ』『トゲアリトゲナシトゲトゲのテーマ』を作ったよ!」とみんなに披露してくれました。

未来へ命をつなぐこと

さて、夜に咲くことも、擬態することも、トゲをもつことも、みんな身を守ったり、次の世代へと命をつなぐためだということがわかります。

「今日は、命を繋いで、未来に生物が残っていくことの大切さについてフォーカスしてみました。みんな生き延びていくための作戦なんだよね。わたしたち人間も生き延びていかなければなりません。みんな一つしかない命。一つしかないけど、一つ必ずもっている。そんな命を、どうやって守っていけるか、おうちに帰ってから、みんなで話し合ってほしいです」とセロリさん。

おしまいは、命のエネルギーがぎゅーっと詰め込まれている「種子」そして「卵」についてのお話。

蝦名先生が世界一大きな種子「フタゴヤシ」、それからすでに絶滅したけれど、史上最大の卵を生んだというエピオルニスという鳥の卵の模型を見せてくれました。

エピオルニスの卵は、ニワトリの卵のおよそ150個分! 蝦名先生はその昔、150個の卵で目玉焼きを作ってみたそうです

タンポポの綿毛のように、遠くまで飛んでいって生息地を広げる種子もありますよね。

みんなには白い薄い紙が配られています。それをほそ〜くちぎって綿毛のようにして、ふわ〜っと飛ばしてみます。セロリさんの奏でる「花が咲き、綿毛ができて、知らない場所におちて…」という物語のようなピアノに合わせ、こどもたちはフーッフーッと息をかけたり、手でふわっと持ち上げたりしながら、綿毛の気分になりました。

おしまいはサンバ・サバンナの大合奏!

ワークショップの締めくくりに、みんなで種子を使った楽器を作りました。

「みなさん、今度はお配りした袋の中から、封筒みたいな小さな袋を出してください」と秋田先生。そのなかには、カイワレダイコンの種子がいくつも入っています。

「袋をちょっと膨らませて、口のほうを捻ってください。ふってみると、マラカスかシェイカーのような音がするよね」

実際のマラカスも、中には植物の種子が入っているそうです。

手作り楽器を持った子どもたちとともに、セロリさんとのアンサンブルです。

サバンナにはゾウもライオンもチーターもシマウマも、いろんな動物がいます!

セロリさんがそれぞれの動物にちなんだ掛け声とリズムをみんなに伝えます。セロリさんのリズムはなかなか複雑で、覚えきれない人も多かったみたいだけど、もう最後はとにかく、カイワレマラカスといろ〜んな動物が自由にアンサンブル! きたい音楽教室の北井先生による鍵盤ハーモニカのメロディーも加わって、楽しく明るい音楽で締めくくられました♪

いきものスケッチブック」のワークショップ・プロジェクトでは、生き物をテーマにしながら、子どもたちが学びと遊びとアートの融合した楽しい時間を過ごしてきました。毎回子どもたちから出された、可愛らしくて豊かな発想と、セロリさんの音楽的アイディアがかけ合わさって、まもなく新しいピアノ曲集が誕生するそうです! 楽しみですね。

午前中にプレワークとして「みんなで描く大きな絵~いきものの暮らし~」を開催。子どもたちと一緒に、大きな画用紙に春夏秋冬の絵を描きました。

絵を描いているときの様子
©︎山口敦

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『いきものスケッチブック』

春畑セロリ 作曲

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飯田有抄
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飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター

1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...

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