レポート
2023.10.17
沼尻竜典音楽監督3年目は團伊玖磨《夕鶴》、ヴェルディ《レクイエム》、他

神奈川フィルハーモニー管弦楽団の2024-25シーズンコンサートプログラム発表

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

メインビジュアル:10月16日に行なわれた記者会見から。沼尻竜典音楽監督

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團伊玖磨の生誕100周年、誕生日に《夕鶴》上演

10月16日、音楽監督・沼尻竜典が登壇のもと、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の2024-2025シーズンコンサートプログラム記者会見が開かれた。

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今年6月に、沼尻がオペラ指揮者としての手腕を発揮し、神奈川フィルをオペラに開眼させたドラマティック・シリーズの第1弾、R.シュトラウス/歌劇《サロメ》(セミステージ形式)が上演され、高い評価を得たばかり。その第2弾として、邦人オペラの金字塔である團伊玖磨/歌劇《夕鶴》(セミステージ形式)を、團の生誕100年にあたる2024年、團の誕生日の4月7日によこすか芸術劇場で上演する。團は神奈川フィル桂冠芸術顧問であり、横須賀は團ゆかりの地元、横須賀芸術劇場少年少女合唱団も出演するなど、幾重にも意味が込められた公演となる。つう役に砂川涼子、与ひょう役に清水徹太郎、他(4/7)。

第400回記念定期演奏会はヴェルディ《レクイエム》

みなとみらいシリーズ定期演奏会は全10回。沼尻が振るのは3公演で、まずシーズンのスタートに、国内ではこれまであまり振ってこなかったというブルックナーの、「交響曲第5番」(ノヴァーク版)を指揮する(4/20)。「マーラーよりスコアがシンプルだが、その分オケの機能がストレートに伝わる怖さがある。リンツの教会でブルックナーが弾いていたオルガンの鍵盤の重さを体験したことなども生かしたい」(沼尻)。

第400回記念定期演奏会では、ヴェルディ《レクイエム》を指揮。歌手は《サロメ》での名唱も記憶に新しい田崎尚美(S)や、宮里直樹(T)、他(11/16)。

2025年はショスタコーヴィチの没後50周年にあたることから、第402回ではこれまで沼尻が第7、8、9番を振ってきたショスタコーヴィチの交響曲から「第10番」を振る。組み合わせはブラームス「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」でヴァイオリンが服部百音、チェロが佐藤晴真(2/15)。

みなとみらいシリーズのその他のプログラム

第395回には、オケの支持率も高いという大植英次が振るラフマニノフ「交響曲第2番」、他(5/11)。第396回は小泉和裕指揮でベートーヴェンの《エグモント序曲》、「交響曲第4番、第7番」といういぶし銀のプログラム(6/22)。第397回は、井上道義指揮で伊福部昭の《ピアノとオーケストラのためのリトミカオスティナータ》(ピアノ:松田華音)および出世作の《日本狂詩曲》、他(7/20)。第398回はデニス・ラッセル・デイヴィス指揮でドヴォルジャーク「交響曲第7番」、フィリップ・グラス《“M”Concerto》、他。後者は日本未公開の映画『Mishima』の映画音楽を再編してピアノ協奏曲にしたもので、日本初演となる(9/28)。ちなみに2025年は三島由紀夫の生誕100周年にあたる。

第399回は小泉和裕の指揮で氏の十八番であるプロコフィエフ「交響曲第5番」、他(10/26)。第401回はベルリン・フィルの第1コンサートマスターを経てソリストとしてのキャリアを確立したコリヤ・ブラッハーが日本では初となる指揮を披露。TVドラマ『リバーサルオーケストラ』で神奈川フィルが演奏に携わったチャイコフスキー「交響曲第5番」と、ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」を弾き振り(2025年1/18)。

神奈川フィルの音楽主幹・榊原徹氏(右端)と沼尻音楽監督が軽妙なトークでプログラム構成を紹介。「若い人がどんどん入団してきて、得意の昭和ネタが通用しなくなってきました」と笑いをとる沼尻監督(右から2番目)

神奈川県立音楽堂が会場の「音楽堂シリーズ」Classic Modern

神奈川県立音楽堂が会場の「音楽堂シリーズ」は全3回。古典と現代を結びつけるClassic Modernと銘打たれ、第29回はフランスを拠点に活躍し現代音楽の分野で名前を上げる阿部加奈子を指揮に迎えて武満徹《弦楽のためのレクイエム》、ラッヘンマン《塵》(ベートーヴェン《第九》を異化した作品)、ベートーヴェン「交響曲第3番《英雄》」(5/18)。第30回は沼尻竜典指揮、ヴァイオリンに石田泰尚を迎え、チャイコフスキー《弦楽セレナーデ》、シェーンベルク生誕150周年にちなみ《浄夜》(7/6)。第31回は、ピアニストとしての活躍が著しいのみならず作曲家としても頭角を現す阪田知樹が登場。神奈川フィル委嘱作品を世界初演し、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第2番」とショパン「ピアノ協奏曲第2番」を弾き振りする(2025年1/11)。

このほか、神奈川県民ホールにおける県民名曲シリーズ(全3回)では、《第九》世界初演200周年記念公演としてオケとダンスがコラボレーションする「踊れ!第九」(6/15)、など。

ブルックナー、ショスタコーヴィチ、シェーンベルクといった作曲家や《第九》の周年にからめて相互のプログラムに関連性をもたせ、古典から現代への目ざし、邦人作曲家、注目の指揮者・演奏家をバランスよく配した魅力的なプログラム。『リバーサルオーケストラ』への大きな貢献で認知度を上げた神奈川フィルは、若手が次々と入団し、伸び盛りであるという。沼尻音楽監督3年目のシーズンがいまから楽しみだ。

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