レポート
2024.03.19
本日3月19日(火)いよいよ開幕!

プロデューサー反田恭平が語る 「横浜みなとみらいホール25周年音楽祭」への思い

2023年5月に開館25周年を迎えた横浜みなとみらいホール。そのアニバーサリーイヤーのラストを飾るイベントとして、3月19日(火)から24日(日)までの6日間にわたり、「横浜みなとみらいホール25周年音楽祭」が開催される。
開催前日の3月18日に同ホールで記者会見が開かれ、プロデューサーを務める反田恭平が登壇、この音楽祭のラインナップについて、思いを語った。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

3月18日・横浜みなとみらいホールにおける記者会見に登壇した反田恭平 ©藤本史昭

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アンサンブルをテーマに

音楽祭の企画は、ホールが25周年を迎えるということで、25回のコンサートを作ってみようというアイディアから始まったという。反田は、「横浜みなとみらいホール プロデューサー2023-2025」就任にあたり、1)みなとみらいホールの魅力を伝える、2)新たな企画に挑戦する、3)次世代と新たな未来を見つめる、4)音楽を通じた共生社会、この4つを主軸としていくことを考え、音楽祭に向けて取り組んできた。

現在、指揮者として練習や本番を積み重ね、ヨーロッパでベルリン・フィルのメンバーと内々に室内楽を演奏したりするような経験の中で、一流の演奏家の「腰が抜けるようなアンテナの良さ」を目の当たりにし、室内楽のアンサンブル能力がいかに重要かを実感しているという。

そこから今回の音楽祭は「アンサンブル」をテーマに、室内楽の素晴らしさを知っていただくための企画としたそうだ。

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横浜みなとみらいホール館長の新井鷗子氏。「昨今の災害やパンデミック、戦争などによる世界情勢のめまぐるしい変化の中で、持続可能なホールであるにはどうしたらよいかを考えさせられました。私たちは、どのような状況にあっても皆様から必要とされる存在であるために、社会の今とつながるコンサートホールを目指していきたいと思っています。反田さんはピアニストであり、指揮者であり、音楽プロデューサーであり、 株式会社の社長という実業家でもいらっしゃいます。まさに社会の今とつながっているアーティストです。そんな反田さんなら、次の25年を見据えたフェスティバルを作ってくださると思い、音楽祭のプロデュースをお任せしました」©藤本史昭

コンチェルトに必要な指揮者のスキルとは

まず3月19日(火)は、エリック・ルー(p)と務川慧悟(p)がシューマンとグリーグのピアノ協奏曲を、反田が指揮するジャパン・ナショナル・オーケストラと共演する。

「エリックとはもともと、僕の妻が一緒の学校に通っていて親しくしていたことから、プライベートで会ったり、ショパン・コンクールにもわざわざ聴きにきてくれて、だんだんと仲良くなりました。僕はエリックがすごく好きだし、彼の音楽をすごくリスペクトしているので、一緒にやってみたいと打診したところ、快く引き受けてくれました。

僕は指揮者としてはコンチェルトをまだ5、6人としか共演したことがないので、経験は少ないんですが、エリックとのリハーサルではひじょうに感銘を受けました。指揮者として一緒に音楽をする楽しみを改めて教えてくれるアーティストです。

務川くんとは、お互い切磋琢磨して、日々過ごしています。務川君の演奏は1つの詩を読んでいるよう――1つのストーリーを1ページずつめくっていってくれるような音楽性を持っているアーティストで、本当に大好きで尊敬しています。

指揮者として、コンチェルトでソリストを迎えて演奏するのはひじょうにスキルがいることでもあります。僕は、2016年にデビューして以来270回くらいコンチェルトを演奏しているんですが、そのたびに指揮者の方のリハーサルや本番の時のスキルを吸収しようとしてきた。ピアニストが振るピアノ・コンチェルトというのは、また違うアプローチがあるのではないかと思うので、楽しみにしていただきたい」。

指揮者としてこれから向き合っていきたいこと

3月21日(木)は「ブラームス 室内楽演奏会」。反田は昨年、憧れのミュンヘン・フィルと現地で共演し、 大きな感銘を受けたという。

「いいオーケストラというのはソリストを成長させてくれるし、ソリストもオーケストラに還元できるという関係は、とても必要だと思います。ミュンヘン・フィルは、本当に思い出に残るオーケストラの1つで、 また来シーズンも共演するのですが、そういったことから今回、ミュンヘン・フィルのコンサートマスター・青木尚佳さん(vn)や団員の三井静さん(vc)にお声がけしてわざわざ来日していただきます。人気の高い髙木竜馬さん(p)とのマッチアップにも興味があります」

3月23日(土)は、横浜みなとみらいホールの前館長を務めた池辺晋一郎の新作「ピアノ協奏曲Ⅳ〈草が語ったこと〉」を、反田がジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)の弾き振りで初演する。

「実は自分でも、指揮者になりたいピアニストが弾く曲を作曲途中だったんですが、忙しくてもう3~4年止まっています。池辺先生にはなるべく無調ではなく、JNOで演奏できる形態を、とお願いしました。12分くらいの単一楽章で、心を動かせられるテンポ感、グルーヴ感があります。

(もう1曲の)ブラームス『交響曲第1番』には、このところ積極的に取り組んでいまして、将来的には交響曲の1番から4番まで全部持っていってヨーロッパで振りたいなと勝手に思っています。その準備期間と言いますか、1番から2番…とゆっくり人生をかけて向き合っていきたい」

©藤本史昭

若手演奏家に焦点を当てた理由

24日(日)の「室内楽リレーコンサート」は、比較的若手の演奏家に焦点を当ててメンバーを選んだという。

「日中の聴きやすい時間帯でそんなに長くないコンサートなので、文化祭みたいな感じではしごして、いろいろな曲やアーティストに触れてほしい。﨑谷直人(vn)やエリック・ルー(p)をはじめ、レガートが美しいアレッサンドロ・べヴェラリ(cl)、第一線で活躍しながらドイツの大学でも教えている岡本誠司(vn)、また外村理紗(vn)横坂源(vc)髙木竜馬(p)のトリオもあり、ふらっと来たお客様にもすごく耳に刺激的なコンサートになるんじゃないかと期待しています」

音楽祭の出演者を若手中心に選んだのは、今年30歳になる反田があと10年、20年先を見据えたときに、「今のうちから一緒に聴いてくださる方、そして一緒に年齢を重ねていける方がいるのがよいのではないか」と考えたからだという。

「僕らもこれから一緒に10年、20年と聴いていただけるようなアーティストにならなければいけないですし、そういった環境は全アーティストに共通して必要なことでもあると思っています」

3月24日(日)には、横浜みなとみらいホールで毎年開催する人気企画「こどもの日コンサート」で活躍する、公募で集まった「中学生プロデューサー」の修了生が、反田と一緒に考えた「かぞくみんなで♪2525(にこにこ)コンサート」を開催。

「中学生プロデューサー20人くらいに集まっていただいてミーティングをしたのですが、アイデアがすごく柔軟で、正直びっくりしました。しかも中学生の皆さんが、結構、面と向かってイーヴンに話してくる。私はそうは思いません、とか意思がはっきりしている。個人的にも父親になりましたので、なんか父親目線で応援したくなっちゃうような企画会議でした。このように、次世代のスタッフの方も一緒に成長できるような音楽祭になっています」

「ホール プロデューサー」としての思い

最後に、「横浜みなとみらいホール プロデューサー2023-2025」としての思いを語ってくれた。

「これまで申し上げたことは1年でできるようなものではなく、10年先くらいまで長い目を向けて一緒に変えていかなければいけないなと思っています。今回の音楽祭は、これからの時代にとても大事なコンサートというものを、ターゲットだったり、プレイヤーやスタッフというところに視点を置いて企画させていただきました。

2025年までの任期で、まだアイデアの段階ですが、マスタークラスのようなことができたらいいなと思っています。 これから音楽家になりたい方々を募って、僕だけがレッスンするのではなく、例えば海外から一流の奏者や教育者をお招きする。

音楽家として何を残せるかというのは限られています。クラシック音楽の場合、いちばん大きいものは伝統で、そういう心に残るものしか残せないので、その1つの形として『教育』というものがあるのではないかと思っています。できれば来年取り組んでいきたい」

左から、横浜みなとみらいホール 事業企画グループ長 菊地健一、同ホール プロデューサー 2023-2025 反田恭平、同ホール 館長 新井鷗子の各氏©藤本史昭
横浜みなとみらいホール2024年度のラインナップ

記者会見では、横浜みなとみらいホール2024年度の主催・共催公演のラインナップも紹介された。海外からのビッグネームとしては、12/8にパーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団、12/14にエフゲニー・キーシン ピアノ・リサイタルを開催。12/31の、3回目となる「石田組 年末感謝祭」も楽しみだ。

 

中学生プロデューサーが企画する「こどもの日コンサート」は5/5に開催。今回の反田との協働がきっかけで、自主的な活動を進めるようになっている中学生プロデューサーの今後にも注目したい。

 

新しい取り組みとしては、11/17に「リラックス・パフォーマンス」を横浜で初開催。0歳から入場でき、世代・障がいを越えて音楽を届ける。

 

ホールが誇る企画「横浜市招待国際ピアノ演奏会」(11/16)、「Just Composed 2025 in Yokohama―現代作曲家シリーズー」(2025.3/8)に加え、こちらもホールが誇るパイプオルガン“Lucy”の音色は、年間6回の「1ドルコンサート」、年間3回の「1アワーコンサート」で気軽に楽しめる。10/27には、ジャン=フィリップ・メルカールトのオルガン・リサイタルも。ホール・オルガニスト近藤岳の発案による「10代のためのパイプオルガン・レッスン」は、2025.3/23に第3期生の修了演奏会を開催。

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