音楽・映画連動講座 『ボヘミアン・ラプソディ』 Part 3&4

オーディオファンも血が騒ぐ、フォーカル×ラックスマン最強コンビで聴くクイーンの世界

レポート
2019.10.19

タワーレコードによる「音楽を題材とした映画」の音楽に焦点を当ててアカデミックに解説していくシリーズ講座。今回はパート3とパート4を9月7日、音楽の友ホールにて同日開催。ゲストMCに音楽評論家の萩原健太氏、講師にギタリストのマーティ・フリードマン氏とミュージカル俳優の石井一考氏という今回も強力な出演陣を迎えた。作家の榎本憲男氏がエキサイティングな「クイーン講座」をレポートする。

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協賛:ラックスマン株式会社
取材・文
榎本憲男 小説家
榎本憲男
取材・文
榎本憲男 小説家
『エアー2.0』で大藪春彦賞候補。ロックとオーディオ好きな刑事を主人公にした『真行寺弘道シリーズ』で新しい警察小説の可能性を切り拓いたと注目を浴びる。最新刊は『ワルキ...

爆笑の中であぶり出された“語り”の魅力

クイーンを深掘りするイベントがあるというので行ってきた。今回は後期クイーンにスポットを当てて、全体としては第3回目と4回目にあたるのだそうだ。

3回目はブライアン・メイのギターに、4回目はフレディ・マーキュリーのボーカルに着目し、それぞれマーティ・フリードマン(ギタリスト)さんと、石井一孝(ミュージカル俳優、シンガーソングライター)さんが解説を施す。そしてシリーズ全体を音楽評論家の萩原健太さんがギュッと締め、滞りのない司会進行はDJの矢口清治が務めるというフォーメーションだ。
さらに、話題に上った曲は、ラックスマンのアンプとフォーカルのスピーカーで大音量再生し、みなでこれを聴こうというのだから、オーディオファンとしても血が騒ぐじゃないか。

パート3の講師を務めたマーティ・フリードマン氏
パート4で圧倒的美声を披露した石井一考氏
MCの矢口清治氏
ゲストMCの萩原健太氏を迎えて

今回のセッションでは、1978年から1984年までを射程に置いている。この時代の音楽シーンは、前年から起こったパンクムーブメントとディスコブームとのせめぎ合いの中で音楽業界が大きく揺れた時代であった。原点回帰(パンク)とさらなる洗練(ディスコ)、Wildとfunの二つの波をモロに被った時代と言ってもいい。
さらにMTVの影響も無視できない。音楽紹介番組の重要性がラジオからテレビに移り、映像によって音楽がリスナーに届くようになっていった。MTVをどのように制作していくかということもバンドやミュージシャンの大きな課題となっていった、そんな時代である。

時代の俯瞰図を萩原健太さんがこのように提示してくれたおかげで、見通しが開けた。特にディスコの影響は非常に大きく、あのローリング・ストーンズでさえ「ミス・ユー」をリリースし、僕などは「げっ、これストーンズ?」と驚いたのを覚えている。方向性をめぐって、さまざまなバンドが揺れていた。もともとハードロック志向も多分に含んでいたクイーンもその例外ではなく彼らのサウンドも変化していく。

これに追い打ちをかけたのが、レコーディング技術の変革である。この時期はちょうどデジタル技術がスタジオに導入されていく過渡期でもあった。これはサウンド面のみならず、バンドの一体感を損なっていく。1本のマイクに3人が歌っていたコーラスは、いくらでもトラックが積み重ねられるデジタル録音では、別録りでまったく問題なくなる。
デジタル録音の是非は簡単に論じられないが、自分のパートの録音が終わればさっさとスタジオを後にするというような状況を生んだことは確かだろう。
しかし、自分の居場所はやはりバンドなんだとフレディ・マーキュリーが確信し、3人のもとに戻るのが、映画『ボヘミアン・ラプソディ』のクライマックスである。このような“バンド感希薄化時代”において、バンド感が横溢している希有な曲として萩原さんが取り上げたのが、「ドント・ストップ・ミー・ナウ」だ。この選曲は非常に納得がいくものだった。

さて、マーティ・フリードマンさんはブライアン・メイのギターの魅力を、まずメロディの良さ、そしてチューニングの確かさ、丁寧に弾いていることだと言う。60年代後半から70年代半ばぐらいまでにかけては、音を適当に並べて乱暴に弾くギタリストが多かった(それってリッチー・ブラックモアですか? と僕は心の中で質問していた)。これに対して、歌心のあるフレーズを丁寧に弾くのがブライアン・メイの特徴である。ボストンのトム・シュルツが大好きというマーティさんらしい指摘だ。

さらにマーティさんは、ブライアン・メイの魅力はソロは終わり(ケツ)にあるという。ギターソロというシーンをどのように終わり、どのように次の展開につなげるのかということに非常に気を配っているというのである。これは非常に重要な指摘で、まさしく目から鱗であった。

さて、「歴代ロックギターフレーズベスト10」のような特集があると、いつも挙げられるのが、「ボヘミアン・ラプソディ」のソロだが、マーティさんは「愛という名の欲望」を取り上げた。これもまた、あらためてラックスマン&フォーカルの超高級機で聴いてみると、なるほどなるほど、である。

再生機器は上からラックスマンのCD/SACDプレーヤーD-08u、コントロールアンプC-900u、ひとつ置いてクリーン電源ES-1200
フランスを代表するスピーカーブランド、フォーカルのScala Utopia Evoが、繊細かつスケール豊かにクイーンを鳴らす
パワーアンプも同じくラックスマンのM-900u

「歌いつつ語る」フレディ・マーキュリーのヴォーカル

ミュージカル俳優でもある石井一孝さんは、フレディ・マーキュリーのボーカルの魅力を7つに分類して会場を驚かせた。その中でもっとも重要だと思われるのが、フレディはロックシンガーとしては異常なほど滑舌よく、発音がきれいだという指摘だ。これは、クイーンの音楽とも連関している。神話やファンタジーにもつながるクイーンの音楽性は、ただ情念だけをぶつけるものではなく、つねになにがしかの物語性を含んでいる。それ故に、“歌いつつも語る”という志向がフレディにはある。それが滑舌の良さにつながっているのである。

実は、マーティさんと石井さんの指摘は、ともにクイーンの“物語性”に着目しているという点で、通底している。ギターソロのケツは物語の次のシーンへの受け渡しの妙を、フレディの滑舌は語りの明瞭さを産むのである。爆笑しつつも意外に深い二つのセッション、非常に楽しめた。タワーレコード、グッジョブである。

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