リコーダー、はじめました。第1回

手軽な楽器の代表格! 本気でリコーダーのレッスンを受けてみた。

レポート
2019.03.07

やってきました、飯田有抄さんの自腹企画。「水内くんにリコーダーを習い始めることにしたんです!」と東京藝大時代の同級生、水内謙一さんとの偶然の出会いをきっかけに一念発起した飯田さん。レッスンは自腹で受けるし、自腹で木製リコーダーも買う!……と意気込む。木製はプラスチックと何が違うのか? そもそもリコーダーはわざわざ習うほどの楽器なの!?
鍵盤ハーモニカ以外の管楽器は未経験者の飯田さんが、体当たり取材!

自腹でリコーダーを習いはじめた人
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター
飯田有抄
自腹でリコーダーを習いはじめた人
飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
リコーダーの先生
水内謙一 リコーダー奏者
水内謙一
リコーダーの先生
水内謙一 リコーダー奏者
東京芸術大学音楽学部楽理科卒業。ドイツ・ケルン音楽大学に留学。同大学ディプロマ課程リコーダー科および古楽アンサンブル科を卒業し、演奏家ディプロマを取得。帰国後は国内外...

大人が始めるのに最適な楽器!?

大人になってから何か習い事を始めてみようと思ったら、楽器をやってみたいと思う方も多いだろう。しかしまったくカジったことのない楽器を、今から始めて、はたしてモノになるのだろうか? 音を出すまでに、1曲マスターするまでに、膨大な時間とエネルギーを消費するとなると、それはそれで挫折しそうだ……。そんな大人たちの選択に、実はとってもぴったりな楽器がある。リコーダーだ。

え、あのリコーダー? 小学校のとき、ランドセルの横にさしてた、あの縦笛? その通りである。リコーダーというと、「学校教材」のイメージがあまりに強く刷り込まれてしまった、あわれな(?)楽器の一つと言えるかもしれない。

しかし、ここでイメージを刷新してみよう。リコーダーは本来、バロック時代を中心に大活躍したクラシック音楽における由緒正しき木管楽器である。小学生たちのクラス全員が力いっぱいピピーと吹き鳴らしていた、あの耳をつんざくような響きばかりを連想しては、あまりにかわいそうなのだ。

魅惑の木製リコーダー。

とはいえ、実際多くの人が小学校ではソプラノ、中学校ではアルトのリコーダーを吹いたであろう。つまり、すでに「経験有り」の楽器なのだ。それなら、大人が改めて始めるには、かなりハードルが低いのではないだろうか?

静かに人気を呼んでいるリコーダー

「70代の方が始めても、きちんと上達していきます。バロック時代の名曲が綺麗に吹けるようになるんですよ。少し続ければヘンデルやテレマンらが書いた素晴らしい作品をレパートリーにできます。小学生にも教えていますが、たった半年~1年で学校の先生よりもうまくなっちゃうこともあります」

リコーダー奏者の水内謙一さん。藝大時代の同級生・飯田さんの先生となりました。

そう語るのはリコーダー奏者の水内謙一さん。バロック音楽の合奏のコンサートを国内外で展開しており、ヨーロッパの音楽祭にも積極的に参加している。ドイツで長らく学んでから帰国した後、1人、また1人とレッスンをするうちに、気づけば50人ほどの生徒を抱えるようになった。

「社会人の方、大人の方は多いですね。リコーダーの温かみのある音色に惹かれる人もいれば、やはり子どもの頃から慣れ親しんだ楽器だけに、取っ付きやすいのだと思います。生徒さんはどんどん腕を上げていくので、発表会のたびに、こちらがビックリするくらいです」

お財布にもやさしい!

アプローチのしやすさは、楽器そのものにもある。ぶっちゃけ財布に優しいのだ。最初は昔懐かしいプラスチックの楽器からスタートできるので、数千円でマイ楽器を手にできる。

最初は飯田さんも樹脂製のmyリコーダーでレッスンを受ける。

でも、大人として憧れるのは木製リコーダーだ。ぐんと本格的なイメージだが、実は木製でも入門レベルのものなら3万円〜10万円代くらいで手にできるとのこと。プロ仕様の楽器ともなれば、さすがに手が出せない値段なんじゃないか……と思ったらこれまた意外なお話が水内先生の口から飛び出した。

「プロが使用するものでも、20万円くらいからあるんですよ。ピアノやヴァイオリンや他の楽器などと比べると、かなりリーズナブルですよね(笑)。ただし、ヨーロッパにも日本にも優れた職人さんがいるんですが、そういう方々に過去の名器のレプリカなどを依頼すると、最低でも1年ほど待たなければなりません。最近ではアマチュアの方々からの注文も殺到しているそうで、結構待つこともありますね」

まさかのリコーダー大人気!? そんなことになっていたなんて。もたもたしていられない。始めるなら今だ! ということで、さっそく私もゼロベースでリコーダーを水内先生から習ってみることにした。2019年1月開始!

でもリコーダーって、一応は小中学校でピロピロ吹いていたよ? プロの先生のレッスンって、いったいどんなことをするだろう?

水内流メソッドのレッスン、開始!

「リコーダーに定番のメソッドって、実ははないんですよ」

ピアノなら、ひと昔前はバイエルから始めてブルクミュラー、ソナチネ、ソナタ……みたいな定番コースというものがあった。そういう教程のようなものが、リコーダーには確立されていないらしい。

「なので、他のリコーダーの先生たちが、どのように指導なさっておられるのか、僕はまったく知りません。それぞれの方法で教えていらっしゃるのだと思いますが、僕は自分がいろいろと遠回りをしたので、そういうムダな時間を生徒さんたちには過ごしてもらわないように、僕なりのメソッドで指導しています」

ドイツではリコーダー指導が盛んで、まずは音楽の先生になるために音大でリコーダーを専攻する学生がメインなのだとか。そこから演奏家として活動する人たちが育っていくのだそう。

「とはいえ、ドイツでも手取り足取り教えてくれるわけではないんです。ピロロピロロ〜と素晴らしい演奏を聴かせてくれて、『ハイ、今みたいにやって。大丈夫、できるから!』みたいな先生も。それでカンのいい人はすぐパッとできるのかもしれませんが、僕は違ったんです。美しい音色を出したり、軽やかに指が回るようになるには、いったいどうすればいいのか、仕組みからきちんと理解する必要がありました。そこでまずは、体の使い方から研究しました。無駄な力を入れず、無理のない姿勢で吹くと、きれいな音で吹けるようになります。ですから、レッスンの初回は、ラクにリコーダーを構えてもらうところからスタートします」

基礎の基礎は、構え

え? てっきり、運指表とにらめっこしながら、何か曲を吹くのかと思ったら。そう、そうですよね。まずは構えから。基礎が大事。

「まずは下唇ですが、柔らかすぎても硬すぎてもよくないので、力まずに『どうぞ』という感じで歌口を乗せます。そして、右手の親指をリコーダーの下、そうですね、ちょうど中指と薬指で塞ぐ穴の間の下くらいにおいて、唇と親指の2点で支えてみましょう。さらに安定させるために右手の小指をジョイントのところに添えて、3点で支えてみましょう。より安定しましたね」

3点支持は下唇と……
右手の親指&小指。

プロから習う基礎の基礎! ワクワクする。

「では左手です。親指、人差し指、中指、薬指で穴を塞ぎますが、ギュッとリコーダーを握らないようにしてください。ここで力が入ると、最終的に軽やかに指を素早く回すことができなくなってしまいます。指先の感覚で、穴を感じられれば塞がります」

案外、ギュっと握らずとも、穴は塞がるものだ。ふわっとやさしく、でも空気が漏れてはいけないので、正しいポジションに置くことが大切。

「薬指が少し遠いので、遠くから無理に塞がないようにしてください。ポイントは、中指でアーチを作るようにすること。そうすれば薬指が穴に近づいてきます。そして薬指は、指の先よりも腹に近い平なところで塞ぐようにするとうまくいきます」

 うわ〜。全部の指を同じような形にしないのがポイントなのですね。中指アーチ! これ、忘れないようにしよう。

左手の正しいポジション。薬指は穴を深い位置で抑え、人差し指と中指はアーチをつくるように。

身体の仕組みをちゃんと知ろう

さらに水内先生は、ガイコツの絵を持ってきた。

「この絵を見ると、どの骨がどの骨と、どのようにつながっていて、肘でどうクロスしているか、わかりますよね。手首にはこれだけ細かな骨があり、親指は他の指の骨のつき方と違います。親指は、先だけで動かそうとするのではなく、根元から動かす意識をもつとうまく動きますよ」

親指や小指の動かし方を、骨から説明します。

図解・道理で説明してくれる水内先生。骨は実際には見えないけれど、イメージするだけで理屈にあった体の動かし方を、力まずにできる。「そうです、さっきよりよく動くようになりましたよ!」と先生。

左手で作るド、レ、ミ、ファ、ソの音程を吹いてみた。

「息は吹きすぎないよう、ほどよく我慢してください。笛となると、つい息を吹き入れようと思ってしまうかもしれませんが、リコーダーに本当に必要なのは、うまく抑制された息なんです。肺の息を長く細く安定させて、少しずつ出しましょう。子どもの頃は、みんな元気にピーッと吹き入れていたと思いますが、だからああいう、キツい音になってしまっていたんですね」

なるほど、自制を効かせて安定した息を意識すると、音も乱暴には飛び出さない。まろやかな響きが出せる。そのまま、3拍子の簡単な舞曲を吹いてみるが、息の抑制を意識しすぎるあまり、無我の境地のような感じになってしまった。ダンス感、ゼロ。

「バロック時代にはメヌエットなど3拍子の踊りの曲がよくありますね。でも、人間の歩行は2歩ですから、2小節で一つの単位にとらえ、1・2・3、4・5・6までをひとまとまりに感じながら、吹いてみましょう」

先生はダンス・ステップ付きで解説してくれた。そのイメージで吹いてみたら、今度はちょっと躍動感が出せた。それにしても、指の形、骨の意識、息の抑制、拍子感と、やることが多い! とってもシンプルな曲なのに!

脳みそフル回転の飯田さん。

生徒さんに合わせてくれるそうです

さらにタンギングの基礎も習い、ブレスの仕方やタイミングまでも、欲張って一気に教えてもらった初回のレッスン、約1時間ほどだっただろうか、濃密で充実感あるひととき。

「今日は一気にいろいろお伝えしましたが、生徒さんによってはもっとゆっくりなペースにしたり、説明をもっとシンプルにしたり、その人に合ったやりかたを心掛けています。でも飯田さんには、けっこう説明的にどんどん進めました(笑)。次は右手の使い方、左手の親指で穴を開け閉めする方法なども、お伝えしましょうね。基礎はそこまでなので、それができれば、曲に入っていけます」

ぐお〜。先生、がんばります。5月の発表会には、それっぽく何かバロックの作品が吹けるところまで行きたい! 果たして到達できるのだろうか!? がんばれ私。

5月のおさらい会は近江楽堂での発表。それまでにソロ曲が仕上がれば、プロのチェンバロ奏者と共演できるかも!?

水内謙一先生のレッスンで使用したテキスト

フランツ・J・ギースベルト著、花岡和生 監修「ギースベルト アルト・リコーダー教本」(ショット・ミュージック株式会社)

(第1回 おわり)

ツイートする
シェアする

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ