サラ・ブライトマン&YOSHIKIの根底にあるクラシックへのリスペクト
世にDIVA(歌姫)と称えられる歌い手は数多あれど、全世界で3,500万枚以上のトータル・セールスを誇り、Billboardのダンス・チャートとクラシック・チャートで同時に第1位を獲得した唯一のアーティストであるサラ・ブライトマンは別格の存在。3オクターヴの声域をカヴァーし、クラシカル・クロスオーヴァーというジャンルの開祖でもある彼女が、11月9日に待望の最新アルバム『HYMN~永遠(とわ)の讃歌』をリリース。スピリチュアルな歌心に溢れ、原点回帰ともいえるシンプルな美しさに彩られた本作の魅力を、ONTOMOのDIVA担当が総力を挙げて、2回にわたってサラを激推し! 後編は単独インタビューを掲載!
1969年徳島市生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。音楽&映画まわりを中心としたよろずライター。インタビュー仕事が得意で守備範囲も広いが本人は海外エンタメ好き。@ba...
5年ぶりのアルバム『HYMN』(ヒム)制作まで
2012年10月に宇宙旅行の予定について公表し、翌月に来日した際には記者会見で、2015年に国際宇宙ステーションから地球に向けて歌を生中継する壮大な計画などを語ったサラ・ブライトマン。しかし、後にこの旅行は「個人的な家族の事情により」延期になってしまう。失意の中、彼女はフロリダのビーチで自分を見つめながら、宇宙のほうに行ってしまっていた気持ちを、ゆっくりと地上に呼び戻していたのだという。そんなサラを見かねてか、かつて公私ともにパートナーだったプロデューサーのフランク・ピーターソンがニュー・アルバムの制作を提案したのだった。
「フランクに背中を押されて、新作のコンセプトについて考えていたとき、改めてよく周りを見渡すと、現代はすっかりディストピア(反理想郷)な世の中になってしまっていると感じたの。こんな時代だからこそ、皆さんを幸せにするような、光と希望で溢れたアルバムを作りたいって思うようになった。そのうち、私の頭の中で美しい合唱の歌声がずっと響いているような気がして、人間の声をいっぱい使おうって決めたの。そうやって2年がかりで欧米のたくさんのスタジオを渡り歩き、入念なレコーディングを積み重ねて完成させたのが本作『HYMN』というわけ」(サラ)
ドイツでは有名なUK出身のプログレ・ロックバンド、バークレイ・ジェイムス・ハ-ヴェストの楽曲カヴァーである表題曲〈ヒム〉を始め、フランスのテノール歌手ヴァンサン・ニクロとのデュエットによるビゼーのオペラ《真珠採り》のナンバー〈夢〉、ポジティヴな歌詞のテクノ・ポップ〈スカイ・アンド・サンド〉、米国のエリック・ウィテカー合唱団との共作曲〈フライ・トゥ・パラダイス〉などなど、聴きどころが盛りだくさんな本アルバムだが、最大の注目曲はX JAPANのリーダーでピアニストでもあるYOSHIKIの書いた〈Miracle〉のカヴァーだろう。
サラとYOSHIKIの“MIRACLE”なコラボが実現
「YOSHIKIとは、彼が音楽監督を務めたアメリカ映画『REPO! レポ』(2009年日本公開)の主題歌を歌って以来、親交を結んでいた。当時からなんて素晴らしい才能の持ち主なの、って思っていたの。フランクからYOSHIKI、知っているよね? 何かアイデアがあるかどうか聞いてみてくれない、と言われて、喜んで彼のスタジオを訪ねたの」(サラ)
〈Miracle〉はX JAPANのワールド・ツアーのオープニング曲としてファンにはお馴染みのナンバー。11月12日に東京国際フォーラムにて行われたYOSHIKIのクラシック・コンサート「YOSHIKI CLASSICAL 2018 ~紫に染まった夜~YOSHIKI with Philharmonic Orchestra」ではスペシャル・ゲストとして出演したサラとこの曲をステージで共演して日本初披露。圧巻のパフォーマンスで会場を興奮の渦に巻き込んだ。なお、公演に先立ち同日の午後には2人がそろって登壇し、共同記者会見も行なわれた。
「彼女の新作アルバムに誘われて、最初は書き下ろし楽曲の提供も検討されたけれど、考えれば考えるほど、この〈Miracle〉こそが彼女に書きたかった曲なのかもって思うようになった」とYOSHIKI。
「歌い手にとってはとてもチャレンジングな楽曲。彼が書いた声のパートは力強さと繊細さの両方が必要とされるの。それで時間をかけて入念にレコーディング作業を行なったわ。その結果、ミラクル(奇跡)が起きた!」(サラ)
既にYouTubeでもミュージック・ビデオが公開され人気を呼んでいるこの曲。
11月16日からはデジタル・シングル版の配信もスタート。アルバム収録バージョンに加えて、リミックスとインストゥルメンタルも収められている。また、来年2月から始まるサラ・ブライトマンのワールド・ツアーの一部(ニューヨーク、トロント、アナハイム、ラスベガス、サンフランシスコ、ロサンゼルス)に、YOSHIKIがスペシャル・ゲストとして参加することも決定。そして4月からのジャパン・ツアーでは、23日と24日の横浜アリーナ2デイズのステージで2人の共演が実現する。
「私たちって最高の組み合わせだと思うの。お互いが持っている音楽に対する姿勢やライヴに対する考え方、シアトリカルなアプローチなど共感できる点が多すぎる。そんな2人のコラボからすごいものが生まれないわけがないわ」(サラ)
「僕はロックミュージシャンだけど、4歳からピアノを始めて、今でもクラシックに対するリスペクトを持ち続けている。そんな自分が共演したかった相手としてサラ・ブライトマン以上の人は考えられない。彼女はロックやポップスの世界とクラシックの両面で等しく人々の心を打つ唯一無二の存在。そんな彼女に認められたなんて、作曲家としても自信が持てた」(YOSHIKI)
後日、行なわれたONTOMO単独インタビューでもサラは好きなコンポーザーとして、ドヴォルザークやラフマニノフとともに、アルヴォ・ペルトやフィリップ・グラスら現代作曲家の名前をあげ、特に作曲家YOSHIKIへの讃辞を惜しまなかった。
「彼の楽曲には、クワイア・ミュージックに対する深い造詣が現れていると思うし、クラシックの魅力のすべてが含まれているの。加えて映画音楽のコンポーザーとしても可能性を感じるし、ピアニストとしても超一流。クラシックは決してただ古い時代の音楽ではなく、現在進行系のもの。YOSHIKIと一緒に私も、その流れの一部でありたいと思う」(サラ)
4/15(月)【名古屋】詳細は近日正式発表
4/17(水)【福 岡】サンパレス ホテル&ホール
4/19(金)【広 島】広島文化学園HBGホール
4/22(月)【大 阪】大阪城ホール
4/23(火)【横 浜】横浜アリーナ
4/24(水)【横 浜】横浜アリーナ
4/26(金)【盛 岡】アピオ 岩手産業文化センター
※4/23(火)、4/24(水)横浜アリーナ公演にYOSHI
https://udo.jp/concert/SarahBr
お問い合わせ先:ウドー音楽事務所 https://udo.jp/
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