ツィメルマンが世界文化賞受賞!懇談会で芸術家の矜持とシマノフスキへの愛を語る
世界の優れた芸術家に贈られる「高松宮殿下記念世界文化賞」の受賞者が発表され、音楽部門受賞者のピアニストのクリスチャン・ツィメルマンが来日、10月18日に他の分野の受賞者との合同記者会見の後、個別懇親会に出席した。ちなみに他部門での受賞者はジュリオ・パオリー二(絵画)、アイ・ウェイウェイ(彫刻)、妹島和世、西沢立衛(にしざわ・りゅうえ)/SANAA(建築)、ヴィム・ヴェンダース(演劇・映像部門)。また、今回国際顧問のヒラリー・ロダム・クリントンも来日し、合同記者会見に登壇したのも大きな話題となった。
クリスチャン・ツィメルマン(1956年ポーランド生まれ)は、1975年の第9回ショパン国際ピアノコンクールで優勝して脚光を浴びて以来、各国でリサイタルを開催するほか、カラヤン、バーンスタイン、小澤征爾など世界的演奏家たちとの共演・レコーディングを行なうなどピアニストとしての功績は高い。日本にもしばしば来日し、知情意のバランスのとれた演奏は多くのファンを魅了し続けている。
アーティストとは“アルチザン”(職人)である
懇談会の席でツィメルマンは、受賞の喜びを述べた後、2020年のベートーヴェン生誕250年を記念して予定されていた、サイモン・ラトル指揮ロンドン交響楽団とのピアノ協奏曲全曲録音がコロナ禍でのロックダウンなど様々な困難にもかかわらず完遂できたこと、そして自身の演奏の姿勢として「アーティストとは“アルチザン”(職人)であって、美しい音を出すことが重要ではなく、作曲家の声を追求することが大切」と述べた。ツィメルマンは「ピアニストは楽器に興味を持つべきだ」という持論を持つが、このベートーヴェンでも「第4番」は作曲者が当時使用していたヴァルター製の楽器を研究し、モダンピアノで弾く際に参考にしたという。
シマノフスキはショパン・コンクールの前から弾いています
またツィメルマンはこの9月に日本でもカロル・シマノフスキの作品集をリリースしたばかりだが、この母国の作曲家の魅力について、「シマノフスキは自分が子どもの頃から大好きで、ショパン・コンクールの前から弾いています。あるリサイタルでシマノフスキを弾いていたら、ひとりの青年が『この素晴らしい曲は誰の作品ですか?』と尋ねてきた。それは学生だったサイモン・ラトルだったのですが(笑)、その後毎週のように電話が来るようになったんです。『交響曲第4番はいつ録音するのか?』と。この曲は実質ピアノ協奏曲なんですが、私の次の人生のためにとっておきます」と述べた。
そして、「とくに10代の『前奏曲』Op.1や『変奏曲』Op.3は若者が人生において最初に直面するドラマを見事に描いています。33歳の時の《メトープ》Op.29もまるで50代の人間が書いた曲のようです」と、作品の持つ深い世界観と作曲者がいかに早熟の芸術家であったかを語った。
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