連載
2026.02.25
海外レポート・ロシア【音楽の友3月号】/Worldwide classical music report, " Russia "

サンクトペテルブルクにおけるクリスマスの定番 リムスキー=コルサコフのオペラ上演

ロシアの1月、クリスマスのサンクトペテルブルクにおける音楽シーンをレポートします。

浅松啓介
浅松啓介

ロシア国立サンクト・ペテルブルク音楽院正規学部卒業。2008年からサンクトペテルブルク在住。サンクトペテルブルク、モスクワなど現地での演奏活動や取材を通じ、ロシア音楽...

音楽の友 編集部
音楽の友 編集部 月刊誌

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

マリインスキー劇場で上演された、ロシアでのクリスマスの定番オペラ《クリスマス・イヴ》から ©Mariinsky theatre

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

ロシアでは、1月6日はクリスマス・イヴ。大晦日、新年と大きなイヴェントが続くなか、そのピークともいえるのが1月7日のクリスマスである。さらにそこから1月14日の旧正月まで祝日気分が続く。

この期間は、店などは営業しているが、企業などは通常よりもかなり仕事のスピードが落ちる。いっぽうで学校などはテスト期間に当たっているところが多く、年末年始返上で稼働しているということも珍しくない。そうした状況があるものの、祝日気分はかなり長く続く。挨拶も祝日を祝うものが多く、日本のように三が日だけでなく旧正月くらいまではその挨拶が交わされるのが普通なのである。

さて、そんなクリスマス・イヴにぴったりのオペラがある。リムスキー=コルサコフ作曲の《クリスマス・イヴ》である。年間を通じてほとんどこの時期にしか演奏されない。ロシア語で書かれたオペラであること、季節感とマッチすることなどから、人々の生活になじんでいるといってよい。この作品がまさにクリスマス・イヴに上演されたので、それについてレポートしたい。

マリインスキー劇場の《クリスマス・イヴ》から©Mariinsky theatre
マリインスキー劇場で上演された《クリスマス・イヴ》から©Mariinsky theatre

こうしたオペラが根づいているのは、ロシアならではの文化習慣があることが大きいと見ている。年末になるとドラマ『運命の皮肉』をはじめ、『オフィス・ロマン』や『女を探せ』などの数あるソ連時代のドラマが放映されるのは、毎年のこと。それが季節感を作っている。昔の日本なら『忠臣蔵』が放映されるようなものだろうか。

ロシアでは同じものを何度も聴いたり、見たりすることが普通で、そこに楽しみを見出している人が少なくない。だから、毎年同じように繰り返されるプログラムを、多くの人が期待しているところがある。飽きるほど見たものでも、それを見なければその季節を感じられないとでもいうかのように。

そのようなこともあり、劇場界隈でも同じような文化習慣が根づいている。《クリスマス・イヴ》などはその代表的存在であろう(この時期にはセルゲイ・バネヴィチ作曲のオペラ《カイとゲルダの物語》も上演されている)

1月6日、マリインスキー劇場第1ステージ(歴史的建造物の劇場)にて朝、昼、晩と3回公演。しかも3回とも音楽監督のヴァレリー・ゲルギエフみずからの指揮で上演された。隣接の第2ステージ(現代のオペラハウス)では、バレエ《くるみ割り人形》が同様に3回公演で、オペラ派とバレエ派で行き先を分ける形となった。

3公演それぞれの配役で、ボリショイ劇場のキャストも混ざっての公演だった。3公演のうち2回目の15時30分からの回を聴いた。そこでは、鍛冶屋のヴァクーラ役にボリショイ劇場のイリヤ・レガトフ(テノール)、ソローハ役にボリショイ劇場のオリガ・グレボヴァ(メゾソプラノ)、オクサーナ役にマリインスキー劇場のクリスティーナ・カピツィナ(ソプラノ)、チュブ役にボリショイ劇場のデミアン・オヌフラク(バス)、村長役にマリインスキー劇場のアレクサンドル・ニキチン(バリトン)、悪魔役にマリインスキー劇場のアンドレイ・ポポフ(テノール)が登場した。

幻想的な序奏とともに幕が開き、辺りは雪景色のおとぎ話の世界が姿を表す。典型的なロシア的田舎の村といった装いで美しい。鍛冶屋のヴァクーラとオクサーナが結ばれる過程のドラマを描いたもので、結婚の条件としてオクサーナから出された「サンクトペテルブルクにいる女帝の靴をクリスマスにプレゼントとして贈る」という難題をヴァクーラが悪魔の力を借りて、村からサンクトペテルブルクまで飛んで冒険し解決するという内容だ。最終的には贈りものとは関係なく、オクサーナとヴァクーラは結ばれるので、ちょっとしたどんでん返しが待っているが、ハッピーエンドとなる。

舞台の一部がサンクトペテルブルクでもあることから、聴衆にとってとても親近感があった。舞台背景にもサンクトペテルブルクの名所が描かれており、ほかのオペラでは味わえない「いまこの場所」という不思議なご当地感とでもいう感覚があった。ロシア語での台詞であり、聴きやすく聴衆もよく理解していたのが印象的だった。ヴァクーラ役の若きレガトフの好演もこの演奏の成功を後押ししていた。

浅松啓介
浅松啓介

ロシア国立サンクト・ペテルブルク音楽院正規学部卒業。2008年からサンクトペテルブルク在住。サンクトペテルブルク、モスクワなど現地での演奏活動や取材を通じ、ロシア音楽...

音楽の友 編集部
音楽の友 編集部 月刊誌

1941年12月創刊。音楽之友社の看板雑誌「音楽の友」を毎月刊行しています。“音楽の深層を知り、音楽家の本音を聞く”がモットー。今月号のコンテンツはこちらバックナンバ...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ