チェリスト・伊藤悠貴による『ラフマニノフ考 -チェロ奏者から見たその音楽像-』
「生まれ変わったらラフマニノフの『チェロ・ソナタ』になりたい」——以前にONTOMOのインタビューでもラフマニノフへの想いをそう語ったチェリストの伊藤悠貴による初めての著作『ラフマニノフ考 -チェロ奏者から見たその音楽像-』がラフマニノフ生誕150周年を記念して発売された。
小学生でラフマニノフ作品に魅せられて以来ずっとラフマニノフへの想いを高め、演奏と研究の両方からアプローチを続けてきた伊藤。演奏家の視点によるラフマニノフ研究として、作品ごとに多角的に掘り下げていく。「はじめに」には本書について、「これまで私が演奏を通して研究を深めてきた作品を中心に、多岐にわたるラフマニノフ作品を器楽で演奏する上での可能性を最大限追求し、彼が最も信頼した音楽家たちによって伝えられたラフマニノフ自身の言葉と音楽観の記録、そして学際的アプローチを以て、チェロ奏者の視点からラフマニノフの芸術、所謂甘いロマンスとは無縁の音楽精神を考察します」と綴られている。
15歳で渡英。18歳で初のリサイタル・ツアー(クロアチア)を行う。2010年ブラームス国際コンクール第1位、2011年ウィンザー祝祭国際弦楽コンクール第1位。同年、フィルハーモニア管弦楽団との共演でメジャー・デビュー。2018年ウィグモア・ホールにリサイタル・デビュー。幅広いレパートリーの中核にラフマニノフ研究を据え、その先駆けとして確固たる実績を築いている。2019年齋藤秀雄メモリアル基金賞受賞。
本書ではラフマニノフの作品を歌曲、合唱曲、歌劇、室内楽に分類し、ラフマニノフ自身が最高傑作と位置付けた合唱交響曲《鐘》や「チェロ・ソナタ」をはじめとする多岐にわたる作品が扱われている。また、主要作品の解説と併せ、「器楽演奏のための編曲の手引き」も収録されている。目次は以下の通り。
はじめに ─ラフマニノフ生誕150年に寄せて
第1章 歌曲 ─ラフマニノフ作品の特徴と象徴主義
作品解説と「編曲の手引き」
コラム『交響曲第1番』
第2章 合唱曲 ─ラフマニノフ芸術の“頂点”
作品解説と「編曲の手引き」
コラム『交響曲第2番』
第3章 歌劇 ─器楽的抒情と後の作品への影響
作品解説と「編曲の手引き」
コラム『交響曲第3番』
第4章 室内楽 ─『チェロとピアノのためのソナタ』へ
作品解説と「編曲の手引き」
コラム『交響的舞曲』
編曲に適したピアノ作品
おわりに ─チェロ奏者から見たラフマニノフの音楽像
ラフマニノフ関連略年表
第一線の演奏活動と20年に及ぶ研究に基づきラフマニノフの新しい音楽像を描出し、彼がもっとも信頼した音楽家たちによって伝えられたラフマニノフ自身の言葉と音楽観の記録と共に、その本質を解き明かす『ラフマニノフ考 -チェロ奏者から見たその音楽像-』。生誕150周年の今、ぜひ手に取ってラフマニノフへの理解を深めたい。
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