ザラストロ ★☆☆☆☆

ストーリー上は「実は善玉だった」ということになっているのだが、教祖然としたふるまいに共感を覚えるのは難しい。男たちに与える試練もあまり意味のあるものとは思えないし、女たちをあからさまに蔑視している点でも現代人には抵抗がある。タミーノとパパゲーノはまんまと教団の策略に乗ってしまっただけなのかもしれない。

善と悪、昼と夜、光と影、親と子、勇者と怠け者。《魔笛》はいろいろな二元論で組み立てられている。一方、物事は善と悪では割り切れないもの。ザラストロをどう見るかで、《魔笛》はまったくちがった物語に見えてくる。

ザラストロによる合唱つきアリア「おお、イシスとオシリスの神よ」

飯尾洋一
飯尾洋一 音楽ライター・編集者

音楽ジャーナリスト。都内在住。著書に『はじめてのクラシック マンガで教養』[監修・執筆](朝日新聞出版)、『クラシック音楽のトリセツ』(SB新書)、『R40のクラシッ...